脱原発と大幅な省エネ・節電で、再生可能エネルギー100%の安全な未来を!


東京電力福島原子力発電所の事故は、改めて原発の問題の大きさを内外に知らしめるものとなりました。原発に頼らず、再生可能エネルギー100%で、世界全体が快適な生活ができる未来に向けて、今こそ歩みを進めるときです。WWFは2011年2月3日に「再生可能エネルギー100%」を全世界で達成することができる、という報告書を発表しました。これを日本でも実現していくには何が必要なのか、WWFジャパンは検討に着手しており、その過程を順次ご紹介していきます。検討プロセスには、専門家や事業者、NGOなどさまざまなステークホルダーに参画していただきたいと考えています。

福島第一原発の事故がもたらしたエネルギー政策の見直し

2011年3月に東日本を襲った大震災と、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故は、地震や津波の影響を受けたエネルギー・インフラの課題や、原子力発電所のリスクを、これまでにない形で明確にする結果をもたらしました。

もちろん、これまでにも、地球温暖化対策という視点も踏まえて、日本のエネルギーのあり方の見直しは行なわれてきましたが、今回の震災は、その見直しの必要性をより強めることになりました。

また、「電力供給が不足する」との予測から実施されるようになった「計画停電」や節電は、私たちにとって「必要なエネルギーとは一体何なのか」、過剰ともいわれる電気消費に「無駄はなかったのか?」を改めて考え直させることにも、つながっています。

再生可能な自然エネルギーを未来のために

これから日本が選ぶべきエネルギーの将来として、持続可能で、地球温暖化の防止にも貢献し、原発のような放射性物質のリスクもなく、利便性も損なわれないような「再生可能エネルギー100%」を達成するためには、一体何が必要なのか? 今そのことを、多くの人たちが考え始めています。

日本で再生可能エネルギー100%を目指してゆくために

WWFジャパンは、今後、以下の3点を前提にエネルギーの将来を達成するとしたら、何が必要になるのかを、既存の研究も参考にしながら、さまざまな専門家・事業者・NGOの意見を聞いて検討し、その過程をこのウェブサイトで随時ご紹介してゆきたいと考えています。

風力、太陽光、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーが、全てのエネルギー需要をまかなう
大幅な省エネ(節電を含む)を通じて、エネルギーの消費量(需要)そのものを、その利便性を損なわずに、大きく減らす
原子力発電所の新規増設は行なわない。現在運用されているものは、原則として、一般的な寿命と言われている30年がきたら順番に運転を停止・廃炉にする

WWFのグローバルなエネルギー・ビジョンと日本

WWFは、2011年2月3日に『エネルギー・レポート』を発表し、その中で、2050年までに世界の全てのエネルギーを風力、太陽光・熱、バイオマス、地熱といった再生可能エネルギーでまかなうことが可能であることを示しました。

持続可能で、地球温暖化も抑止し、そしてなおかつ全ての人々に必要なエネルギーを供給することが可能な、未来に向けた一つのビジョンとシナリオを示したのです。

その「全世界で再生可能エネルギー100%」というビジョンの達成には、世界各地でその未来を掴み取るための取り組みや政策が必要です。

もちろん、日本でそれを達成していくことは、容易ではありません。時間もかかるでしょう。

現状では水力発電を除くと、再生可能エネルギーがエネルギー全体に占める割合は1%強(水力を含めても5%弱)しかありません。風力や太陽光などの再生可能エネルギーについては、それぞれの特性に由来する課題も指摘されています。また、原子力は現状で日本の電力供給の3割以上をまかなっています。

ですが、その原子力発電も、40年50年前から今ほどの割合で電力を供給していたわけではありません。
今、必要なのは、先を見据えて、これからどういう政策を立てて、エネルギーを変えていくか、ということです。

CO2排出量の削減

こうした新しいエネルギー社会は、同時に、刻一刻と深刻化する地球温暖化問題の抑制にもつながる、つまり、大幅なCO2排出量削減にもつながるものでなくてはなりません。

再生可能エネルギー100%の未来は、CO2排出量削減の観点からも必要なのです。

過渡期には、石炭のように排出量の大きい化石燃料から、天然ガスのように比較的排出量が少ない化石燃料へのシフトを行うことも必要でしょう。しかし、最終的には全てを再生可能エネルギーでまかなえる未来を目指すべきです。

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どのようなエネルギーに頼り、どのようなエネルギーの使い方をするのか、という問題は、私たち自身の「選択」の問題でもあるはずです。

私たちが「選ぶ」エネルギーの未来

これまでにも日本では、想定される期間や形はさまざまながら、国内のエネルギーのあり方についての検討が重ねられてきました。

しかし、その多くが、石炭・石油・天然ガスを燃やす火力発電所や原子力発電所に対する依存を相当程度継続することを前提としたものでした。

また、これまでに政府などが出した最も野心的なシナリオでも、再生可能エネルギーの供給量は、(2050年時点では)40%~60%に留まっています。

そうした視点から、WWFが示した「再生可能エネルギー100%」を実現することなど不可能だ、と結論づけるのは容易なことです。

しかし、今やらねばならないことは、「いかにそれが不可能か」を追求することではなく、「どうしたらそれが達成できるのか」を考えることです。

そのための検討をさらに重ねて、私たち自身のエネルギーの将来を掴み取ることにつなげていきたい、そうWWFは考えます。


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【エネルギー・ワーキング・ペーパー 01】

再生可能エネルギー100%/原発の段階的廃止/大規模省エネの3つを同時達成していくには?(PDF形式)

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