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WCPFC北小委員会会合閉幕 太平洋クロマグロの漁獲量増加は時期尚早

この記事のポイント
福岡で開催されていた、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の北小委員会閉幕が2018年9月7日、閉幕しました。この会合と同時に開催されたIATTC(全米熱帯まぐろ類委員会)と、中西部太平洋の漁業を管理するWCPFCの北小委員会の太平洋クロマグロ合同作業部会会合では、昨年合意した太平洋のクロマグロ資源回復計画の達成率が大幅に向上した、という調査結果を受け、漁獲可能な量(漁獲枠)の引き上げが日本、韓国から提案されました。WWFは今回の評価結果の不確実性があること、さらに資源状況が安心できる水準に無く、また他の漁業管理措置についても遵守されていない状況で、漁獲枠の引き上げを行なうべきではないことを訴えました。

早くも増枠?太平洋クロマグロの漁獲枠をめぐって

太平洋の海洋生態系の頂点に立つ太平洋クロマグロ。
2018年9月4日から7日まで、その資源管理について話し合う国際会議「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」第14回北小委員会、および太平洋クロマグロ合同作業部会の会合が、福岡市で開催されました。

この合同作業部会は、太平洋を広く回遊するクロマグロの資源保全を、組織を超えてはかるため、東部太平洋のマグロ漁業を管理するIATTC(全米熱帯まぐろ類委員会)と、中西部太平洋の漁業を管理するWCPFCの北小委員会が、共同で開催しているものです。

その第4回目の会合となった今回の合同作業部会では、日本や韓国といった沿岸漁業国から、現状で設定されている漁獲レベルの増枠を求める、管理措置の改定が提案されました。

これは、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)が示した新たな資料が、太平洋クロマグロ(本まぐろ)の2016年の加入量の好調から、資源回復計画の達成率が大幅に向上したことを受け、2017年に合意した漁獲戦略に基づいて行なわれたものです。

しかし、現在も太平洋海域では、乱獲に起因するクロマグロ資源の深刻な枯渇が続いており、楽観が許される状況ではありません。

ISCの報告では、ここ数年で多少の資源状況の改善が見られたとはいえ、資源量は初期資源(漁業が開始される以前の推定資源量)の3.3%と、依然として深刻な「枯渇状態」にあり、かつ「過剰な漁獲が続いている」と指摘されています。

その太平洋クロマグロの最大の生産(漁獲)国であり、消費国なのが日本。今回の会合でも、これまで太平洋クロマグロの資源回復に向け、リーダーシップを果たしてきた日本代表団の動向が注目されていました。

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東と西、そろわない足並み

© Brian J. Skerry / National Geographic Stock / WWF

2018年8月24日から30日にかけて開催されたIATTCの年次会合では、前年のWCPFC会合での決定に続く形で、資源の長期回復目標が採択され、かつ「次の2年間は漁獲枠を維持すること」を決定。太平洋を広く回遊するクロマグロの保全に向けた前進として、期待が寄せられました。

しかし、2018年9月に福岡で開かれたWCPFC北小委員会の会合で、早くも漁獲枠の増加(上限値の引き上げ)を求める声が上がり、太平洋の東部と中西部で、資源保護に対する姿勢の差が示される形となりました。

この結果、2年間の漁獲枠の現状維持を採択したばかりの東側(IATTC)の漁業国と、沿岸漁業者の厳しい状況の改善を理由に漁獲枠の増枠を求める西側(WCPFC)の漁業国の主張が対立。きわめて激しい議論となりました。

さらに、太平洋クロマグロを直接漁獲していない双方の加盟国も、枯渇が深刻な太平洋クロマグロ資源の責任ある資源回復を実現するため、「漁獲上限の引き上げは時期尚早だ」とする意見を強く主張。

一連の議論の結果、合同作業部会では、漁獲上限の提案に関する合意には至りませんでしたが、次のステップとして、ISCに対して追加の将来予測のためのシナリオを提出することなどが合意されました。

しかし、合同作業部会による勧告を受けて再開した北小委員会では、日本が一転して、北小員会での合意に関する留保を表明。12月に開催されるWCPFC年次会合まで、国内で内容を再検討するとしました。

そのため、12月にホノルルで開催されるWCPFC第15回年次総会に、最終決定は持ち越される形となりました。

求められる「予防原則」に基づいた漁業管理の在り方

WWFはこの問題について、2017年来、「2024年までに歴史的中間値まで回復させるという目標を達成する前に、漁獲上限を増大させることは、科学的な議論が十分されていないという観点から、資源回復措置としては受け入れられない」と主張してきました。

また、直近のISCによる評価結果の発表は、確かにわずかながら資源状況がよくなっていることを示す内容ですが、将来的な予測については、不確実性が高いとされる2016年のクロマグロの回復データに大きく影響されていると指摘されており、これを根拠に漁獲枠の上限の引き上げを認めることは、時期尚早といわねばなりません。

2020年には、新たな太平洋クロマグロの資源評価が行なわれることが計画されていることからも、早くともこの結果を待つべきであると考えます。

WWFジャパン海洋水産グループ長の山内愛子は今回の結果について、次のように述べています。

「現在WCPFCとIATTCで導入されている管理措置についても、過去2年間に漁業を行なう4つの加盟国が、漁獲上限を超えるなど、遵守されていない状況が報告されています。そうした状況の中で、漁獲の増加を議論するためには、遵守を徹底させるような監視管理体制の確立が必要です。

今回の結果はその意味で、合同作業部会会合の議論を通じて、太平洋クロマグロ資源の回復に向けたWCPFCとIATTCの強いコミットメントが確認されたと捉えています」

「一方で、最大の漁業国であるとともに、最大の消費国である日本が今回留保を表明したことは残念です。WCPFC年次会合までには、国内でしっかり足並みをそろえ、これまで通り、太平洋クロマグロ資源の保全に対する日本の強い意思を国際社会に示すことを強く求めます。」

WWFは、漁獲上限の引き上げといった重要な意思決定は、あくまでより確かな資源評価結果に基づくべきであり、回復の見込みが薄い危機的な状況に陥る前に、各国は予防原則に基づいた決定を尊重すべきであると考え、その実現に向けた各国政府への提言を続けてゆきます。

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