止まらない森林破壊に、FSC がAPRIL社との関係終了を発表


2013年8月7日、世界的な森林認証制度で知られるFSCは、製紙メーカーAPRIL社とその関連企業に対し、今後の認証取得、および普及等を目的として使用する場合に取得するトレードマークライセンスを一切許可しないことを発表しました。APRIL社は、1993年の操業以来、主にインドネシアのスマトラ島において、大規模な自然林破壊をともなう製紙原料の調達と植林地の開発を行なってきました。また、原料調達における問題だけでなく、現地の地域住民との社会的な紛争や、大量の温室効果ガス排出など、多くの問題を引き起こし、WWFをはじめとする環境団体などから抗議を受け続けています。

適用されたFSC「アソシエーション・ポリシー」

FSC(Forest Stewardship Council)は、森林の持続的な利用を目指す国際的な森林認証制度です。

適切に管理された森林とそこから切り出された木材や加工のプロセスを認証することにより、森林を環境とに配慮しながら、地域社会の利益にもかない、経済的にも持続的なよう管理、利用していくための厳しい原則と基準を設けていることから、世界的にも広く認識されています。

また、認証が申請された森林区画や工場などの「部分的な操業」のみを審査するのではなく、企業活動全体においてFSCの最も重視する「責任ある森林管理」が遵守されているかどうかを評価する「アソシエーション・ポリシー」という制度も導入しています。

これは、例えば違法な伐採や木材製品の取引を行っていないかどうか、「保護価値の高い森林」の破壊や森林の大規模な転換に関与していないかどうかといったことが項目として定められ、企業全体で評価すれば、自然林の大規模な破壊や社会紛争などの問題に関わる事業者が、ごく一部の森林区画や工場で認証を取得したり、もしくは普及啓発目的でFSCのトレードマークを使用したりすることで、まるで企業全体が環境や社会に配慮しているかのように見えてしまうことを防ぐものです。

また同時に、最も信頼できる認証制度としての信頼性を守ることを目的としています。

環境や社会への配慮が欠けていることが確認され、「アソシエーション・ポリシー」が適用された場合には、その事業者は、一切のFSC認証の取得が許可されなくなると同時に、普及啓発目的でFSCトレードマークを使用するために取得するライセンスさえも許可されないことになります。

FSCの迅速な決断を評価

スマトラ島中部リアウ州で伐採された森の跡

2013年8月7日、FSCはAPRIL社に対し、この「アソシエーション・ポリシー」の適用を発表しました。

このFSCの判断に先立つ2013年5月、WWFはグリーンピースと熱帯林行動ネットワークと共同で、APRIL社が「アソシエーション・ポリシー」に抵触する企業活動を行なっていることを、正式に申立てる資料をFSCに提出していました。

これによりFSCは、APRIL社が本当に「アソシエーション・ポリシー」の適用になるかどうかを、当該企業を含め、ステークホルダーとともに、独立した立場で審議を開始しましたが、翌月の2013年6月、審議の結論を待たずに、APRIL社は、取得していた全てのFSC認証を急遽「返上」する、という異例の挙に出ました。

この前代未聞の事態に、FSCがどのような決断を下すのか注目されましたが、2013年8月8日、正式にAPRIL社とその関連企業が「アソシエーション・ポリシー」に反していることを発表するに至りました。

自然林破壊に関与しないために

FSCのこの方針が適用される企業は、製紙業界では、2007年に同じく主にインドネシアのスマトラ島での原料調達が指摘されているアジア・パルプ・アンド・ペーパー社(以下、APP社)に続き2例目となります。

WWFは、長期にわたってAPP社とAPRIL社に操業の改善を求めつつ、地域の行政などの関連機関に対しても、働きかけを行なってきましたが、この問題は現在も多くの課題を抱えたままの状態が続いています。

このためWWFは、これらの企業が生産する製品の購入については、十分に慎重になるべきと考えます。

現在、スマトラなどでは、紙の原料になる植林木を育てる土地を確保するために、自然林が大規模に伐採されるなどの問題が起きています。たとえ、購入している製品に自然林原料が含まれていなかったとしても、それだけでは「環境にやさしい」とはいいきれません。

そのような企業に生産された紙を使うことは、間接的には、その背景にある自然林の破壊に加担することでもあるのです。

 

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