©Joāo Rabelo/王子ホールディングス

森を守るマーク 森林認証制度FSC®について

この記事のポイント
FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)は、責任ある森林管理を世界に普及させることを目的に設立された国際的な非営利団体です。自然資源の持続可能な利用に取り組むWWFは、FSCの設立当初よりその普及に力を入れています。環境保全の点から見て適切で、社会的な利益に適い、経済も継続可能な、責任ある管理をされた森林や、林産物の責任ある調達に対して与えられるFSC。消費者は、このFSCのマークが入った製品を買うことで世界の森林保全を応援できる仕組みです。

世界の森林資源の今

世界の森林面積は約40億6,000万ヘクタール、これは地球の陸地の面積の31%の広さを占めています。

しかし、5年ごとに発表される国連食糧農業機関(FAO)の報告書、「森林資源評価報告書2020」によれば、1990年以降、世界では4億2000万ヘクタールもの森林が、農地や植林地として利用するため、大規模に転換され、失われてきました。これは日本の11倍にも相当する広さです。直近の2015年から2020年の5年間の減少も、年間約1000万ヘクタール。これは日本の約1/4の面積に相当し、東京都と比較すれば45倍の大きさです。

このような森林の改変により、造成される農地や植林地などのプランテーションでは、木材や製紙用パルプ、天然ゴム、パーム油や大豆、牛肉などさまざまな物が生産されています。

そして、これらの産品が、日々の暮らしやビジネスに不可欠なものである反面、もとあった自然の森林生態系を大きく損なっているケースが多くあることも報告されています。

熱帯林に生息するオランウータン。森には、これまで発見されている野生生物種の半分以上が生息している。そのうち、絶滅の恐れが高いとされる種は1万5,000種以上にのぼる。
© Shutterstock / Natalia Schuchardt / WWF-Sweden

熱帯林に生息するオランウータン。森には、これまで発見されている野生生物種の半分以上が生息している。そのうち、絶滅の恐れが高いとされる種は1万5,000種以上にのぼる。

FSC森林認証制度とWWF

このように森林は、野生生物のすみかとして、気候変動を抑制する二酸化炭素の吸収源として、また暮らしやビジネスに必要なもの生み出す場所として重要な環境であるにも関わらず、今も深刻なスピードで減少し続けています。

その状況の中でWWFは、守るべき自然の森の減少を食い止める一方、生産のために必要な森林が、持続可能なかたちで適切に管理していくことが必要と考えます。

国際的な森林認証制度を運営するFSCは、このような保全と持続可能な利用に対する考えや市民の環境意識の高まりを背景に、1994年に正式に発足しました。

このFSCの森林認証制度は、世界中から参加する環境保全団体、先住民族や労働者の権利に取り組む団体、生産者や利用の立場にある民間企業など、環境・社会・経済の各分野のステークホルダー(利害関係者)の議論と合意によって運営され、また責任ある森林管理のための10の原則と70の基準を定めています。

WWFはこのFSCの発足を支援し、長年その取り組みの普及に努めてきましたが、現在では、FSCはWWFとは異なる完全に独立した組織として運営され、WWFは数多くのステークホルダーの1つ(国際会員)としてFSCに参加しています。

FSC認証マーク:森の生きものや自然を壊さないよう管理された木材や、その他適切な森林資源の使用につながる原材料でつくられたティッシュやノートなどの紙製品に付けられる
環境・社会・経済のバランスが重視されるFSCの10 の原則。この10の原則と70の基準に基づき森林が適切に管理されているかが審査される。 ©FSC

環境・社会・経済のバランスが重視されるFSCの10 の原則。この10の原則と70の基準に基づき森林が適切に管理されているかが審査される。 ©FSC

FSC認証を受けたインドネシアの森で見つかったオランウータンの巣。
©WWF Indonesia / Victor Fidelis Sentosa

FSC認証を受けたインドネシアの森で見つかったオランウータンの巣

FSC認証林の中にある中学校。働く人やその家族が安心して暮らせるよう地域に学校や病院がない場合、認証を受ける森を管理する企業がこれらを整備することがある。
©WWF Japan

FSC認証林の中にある中学校。働く人やその家族が安心して暮らせるよう地域に学校や病院がない場合、認証を受ける森を管理する企業がこれらを整備することがある。

3年に一度開催されるFSCの総会は最も高い意思決定の場。FSCの今後の方向性に関わる多くの動議が会員によって審議・採決される。
©FSC

3年に一度開催されるFSCの総会は最も高い意思決定の場。FSCの今後の方向性に関わる多くの動議が会員によって審議・採決される。

FSC認証は、森林の管理を認証するFM(Forest Management)認証と、加工・流通過程の管理を認証するCoC(Chain of Custody)認証のつながりで成り立っています。<br>FSC認証製品が消費者の手に届くまでには、最終製品になるまでの生産、加工、流通に関わるすべての組織が認証を受けなくてはなりません。<br>また、FSC認証の審査・発行は、FSCではなくASI(Assurance Services International)という認証機関に対する第三者認定(監督)を行なう機関の認定を受けた、独立した第三者の認証機関が行ないます。

FSC認証は、森林の管理を認証するFM(Forest Management)認証と、加工・流通過程の管理を認証するCoC(Chain of Custody)認証のつながりで成り立っています。
FSC認証製品が消費者の手に届くまでには、最終製品になるまでの生産、加工、流通に関わるすべての組織が認証を受けなくてはなりません。
また、FSC認証の審査・発行は、FSCではなくASI(Assurance Services International)という認証機関に対する第三者認定(監督)を行なう機関の認定を受けた、独立した第三者の認証機関が行ないます。

消費者として持続可能な利用を

国土の約2/3が森林に覆われる日本ですが、日本は多くの木材や紙を輸入、消費しており、人々の暮らしやビジネスは、海外の森林資源に大きく依存しています。

例えば、紙の生産量は、中国・米国についで世界第3位。国民一人当たりの消費量も年間201kgと世界平均56kgを大きく上回ります。

世界的な法規制の強化や製紙関連業界の取り組みにより、持続可能性に配慮した森林管理が推進される動きもある一方で、依然として、紙の原料となる植林木のプランテーション造成のために、大規模な自然林の植林地への転換が問題視される地域もあります。

自然林を大規模に伐採した後につくられた製紙原料用植林地(手前)。奥に広がる濃い緑色の部分が自然の森。製紙原料用の広葉樹は5~7年で収穫されるアカシアなどの早生樹で、このような植林地は自然の森の環境とは大きく異なる。
©WWF Indonesia

自然林を大規模に伐採した後につくられた製紙原料用植林地(手前)。奥に広がる濃い緑色の部分が自然の森。製紙原料用の広葉樹は5~7年で収穫されるアカシアなどの早生樹で、このような植林地は自然の森の環境とは大きく異なる。

木材利用については近年、国産材の利用が増え、自給率は約20年前に比べ36%と2倍近くなっています。

一方で、コンクリート型枠用合板のように、熱帯の国々から輸入された南洋材が、依然として大きなシェアを占める製品も少なくありません。

これらが原産地で、持続可能な形で生産されているかを確認することはとても大切です。

そうした手段の一つとして、人と自然が共生する社会の実現を目指すWWFは、FSCを普及する活動に力を入れています。

これまでに、世界でFSCの森林認証を得た森の面積は2億1000万ヘクタール、CoCの件数は4万2000件を超えるまでなりました。

また、日本国内の認証面積は 約41万ヘクタール、CoC件数は1500件を超え、国ごとのCoC件数では、アジアでは最多の中国の約9100件に次ぐ件数となっています(いずれも2020年5月時点)。

さらに近年は、深刻さを増す気候変動、持続可能性(サステナビリティ)、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境-Environment、社会-Social、企業統治-Governance)といった言葉が、以前にも増して大きな注目を集めるようになりました。

こうしたなかで、自然資源の適切な利用に関する生産者の意識、消費者の持続可能な製品を求める声は、かつてない高まりをみせ、2021年に開催予定の大規模な国際イベント、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の調達に向けてもその機運が高まっています。

それでも、実際にそうした製品の供給に大きく貢献し得るFSCに対する認知は、日本の消費者の間では、まだ十分に高いとは言えません。
特にFSCのような第三者認証制度の普及が早かった英国やドイツなどと比べれば、普及の余地が大きくあるといえます。

WWFは今後も、企業や行政などのステークホルダーと協働し、FSCの普及に努めてゆきます。

日本で最も大きなFSC認証林を管理している山梨県。国内認証面積の3分の1(14万3千ヘクタール)にもなる県有林から生産された木材はFSC認証林として販売される。国産のFSC認証材を原料にしたストローも誕生した。
©NPO法人マイプラ対策室

日本で最も大きなFSC認証林を管理している山梨県。国内認証面積の3分の1(14万3千ヘクタール)にもなる県有林から生産された木材はFSC認証林として販売される。国産のFSC認証材を原料にしたストローも誕生した。

浜松市は、有明体操競技場の外装に、天竜材(FSC認証材)を供給。静岡県浜松市にある天竜の彩り豊かな森は「天竜美林」と呼ばれ、日本でも有数のFSC認証材の産地。
©浜松市

浜松市は、有明体操競技場の外装に、天竜材(FSC認証材)を供給。静岡県浜松市にある天竜の彩り豊かな森は「天竜美林」と呼ばれ、日本でも有数のFSC認証材の産地。

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