森林セミナー開催報告 「森林保全と責任ある紙調達~企業が目指すべき姿」


2012年11月、WWFジャパンは、森林セミナー「森林保全と責任ある紙調達~企業が目指すべき姿~」を開催し、製紙関連企業、印刷関連企業、その他にも多種多様な企業から参加がありました。第一部では、WWFのインドネシアと日本より、生産国、消費国それぞれの立場からWWFの森林保全活動とその現状の報告を、続く第二部では紙の利用に関しては、生産者、供給者、消費者という異なる立場の企業の実践を発表。最後のWWFと登壇企業を交えたパネルディスカッションでは、現状の課題やこれからも紙を使い続けていくために企業やNGOがすべきことについて、発表と議論を行ないました。

森林保全と責任ある紙調達

紙は全てのビジネス、そして人々の生活に欠かせないものです。また、紙の原料となる森林は、それが持続的な利用が可能なよう適切に管理されていれば、使い続けることのできる再生可能な資源と言えます。

そのためWWFは、単に紙の利用を否定するのではなく、生産側、供給者、消費側に向けて、信頼できる森林認証制度、FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)の推進を行なうなど、森林の持続的な利用と責任ある調達を呼びかけています。

 

開催概要

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破壊が続くインドネシア・スマトラの森

日時 2012年11月21日
場所 中央大学駿河台記念館(東京都千代田区神田駿河台3丁目11−5)
参加者数 120名
主催 WWFジャパン

第一部 WWFの森林保全活動

深刻化するインドネシア熱帯林破壊と日本の紙利用

発表者:WWFジャパン 生物多様性とビジネス担当 粟野美佳子
WWFインドネシア 森林担当 アディタヤ・バユナンダ(Aditya Bayunanda)
WWFジャパン 責任調達(紙)担当 古澤千明

限りある自然資源とビジネスの持続可能性へ懸念から、関心の高まりを見せる「持続可能な利用」。WWFは、世界のネットワークとも協力し、木材、紙などの林産物、水産物などのコモディティ(産品)が持続的な利用が可能なよう働きかけを行っています。

今も豊かな熱帯の森林資源を持ちながら、その急激な減少・劣化が問題となっているインドネシアのWWFからは、かねてから問題となっているスマトラ島で原料調達、生産を行う大手製紙メーカー、APP社、APRIL社に関する最近の動きを報告しました。

1990年代から始まった製紙原料調達のための熱帯林の破壊は、現在も続き、解決の糸口が見つからないままの状態であること。問題視され続ける貴重な自然林の大規模な皆伐、大量の温室効果ガス排出の原因となる泥炭地での操業、土地利用をめぐる地域住民との紛争、そしてこのような問題から周囲の目をそらすような環境広告・宣言などが、今も継続し、深刻化していることを発表。また、責任ある調達を行なう生産者、供給者からの購入が生産国で生じる問題の改善に貢献できることを訴えました。

また消費国側のWWFジャパンからは、APP社、APRIL社により生産される紙と日本市場との関係について発表しました。生産国の法律では合法とされていても、環境・社会面で問題を抱える紙が依然として、日本にも大量に輸入され、近年その量、シェアともに増加していること。これは、世界、特に先進国で高まる紙への環境配慮とは逆行するもので、世界有数の紙消費国である日本では、紙は森林資源と直結する環境配慮が必要な製品だという認知を高めなければならないと強調しました。

 

グラフ説明:量・シェアともに増え続けている(コピー用紙)
財務省貿易統計、経済産業省より

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セミナー会場の様子

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WWFインドネシアの森林担当アディタヤ・バユナンダ

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WWFジャパン粟野美佳子

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第二部 企業の環境への取組み

森林保全と責任ある紙調達

発表者:富士ゼロックス株式会社 CSR部 企画グループ長 野村浩一
ソニー株式会社 CSR部 統括部長 冨田秀実

第二部では、まずコピー用紙を生産委託し、販売する供給の立場にある富士ゼロックス株式会社より、用紙調達活動の現状と課題について発表。富士ゼロックス株式会社は、2012年6月にそれまでの調達基準を改定し、製品単位だけなく、生物多様性保全や地域住民の権利尊重など、調達先企業の事業全体を評価する新たな取引基準を加え、その基準を満たした企業からのみ調達を行なうことを制度化しました。

先進的な取組みの国内外での実践とその判断に至った経緯、現状の課題なども含めて、持続的に紙を扱うために生産者、販売者、消費者が一体となって取り組むことの重要性を紹介いただきました。

続いて、紙をユーザーとして購入する消費者として、2012年5月、グループが世界で使用する全ての紙製品を対象とした「紙・印刷物の購入方針」を公表したソニー株式会社から、「スマトラ島森林保全に向けた包括的な取組み」と題して、同社のCSRに関する考え方や実践を発表。 パートナーとの協同プログラムの成功事例として、WWFのClimate Savers Programを紹介し、自社の野心的なGHG削減目標の設定と一般へのコミュニケーション、訴求という両面施策の重要性が語られました。

さらにこれと同じ考えのもと、森林保全に関しても、両面施策が取られ、スマトラ島でのWWFの森林保全活動への資金サポートやデジタルカメラなどの機材提供、CMやイベントを通じた普及啓発活動など、本業やマーケティング力を活かした支援を行なう一方で、事業活動においても紙・印刷物の購入方針の策定に至った経緯などを紹介し、企業が果たすべき役割について講演いただきました。

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富士ゼロックス株式会社 野村浩一氏

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冨田秀実氏によるソニー株式会社の発表

パネルディスカッション

ファシリテーター:株式会社レスポンスアビリティ 代表取締役 足立直樹
パネリスト:王子木材緑化株式会社 取締役/チップ部長 河辺安曇
富士ゼロックス株式会社 CSR部 企画グループ長 野村浩一
ソニー株式会社 CSR部 統括部長 冨田秀実
WWFジャパン 責任調達(紙)担当 古澤千明

パネルディスカッションでは、生産者の立場から王子グループの木材チップ調達を行なっている王子木材緑化株式会社も加わり、責任ある紙調達の今後について、生産、供給、消費、それぞれの立場から議論が繰り広げられました。

ディスカッションの焦点は、紙がビジネスや生活に必要なものであればこそ、持続的な利用が可能なよう、環境・社会に配慮した責任ある生産、調達の必要性が、消費者などを含め社会全体に理解されなければならない、という点に当てられました。

日本の現状をみると、貴重な熱帯林の大規模な皆伐などにより原料調達を行なっている生産者の紙が大量に輸入され、それらが市場で「責任ある調達」に基づいた紙と同等であるかのように比較されています。

持続可能な紙の利用を実現するには、消費側の企業、個人がしっかりとトレーサビリティを意識し、社会全体に広げていく必要があり、これは決して簡単なことではありませんが、一企業だけで取組むだけではなく、複数の企業、NGOが協働し、第一歩を踏み出さなければならないという点が議論されました。

また会場の参加者からも、「生産者や供給側だけでなく、最終消費者の意識を変える必要もある」、「一社の力は限られている。有志の企業やNGOが力を合わせることが必要で、それにより一企業、NGOではなしえない影響力を持つことができる」などの意見も寄せられました。

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株式会社レスポンスアビリティの足立直樹

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パネルディスカッションの様子

寄せられたご意見・質問(一部)

  • 紙を使うこと自体が悪いわけではないはず。木材は、森林資源を適切に管理することにより無限の資源となるのではないか。

    →WWFもFSCのように森林が適切に管理されている場合には、持続的に使い続けことのできる再生可能な資源と考えます。無駄使いは望ましくないでしょうが、紙はビジネス、生活に欠かせないものと考えます。
  • (登壇企業へ)取組みに対する社内/社員の反応、理解度は?

    →富士ゼロックス株式会社:お客様と接する営業部門などでこれらの活動を積極的にお客様に紹介する動きが広がっていますが、まだ認知や理解が少ないのが現状です。現在進めているCSR教育のキーテーマとして盛り込んでおり、多くの社員の理解を進めていきたいと考えています。

    →ソニー株式会社:スマトラ島森林保全については、対外的な施策(CM放映、展示会など)にあわせ、社員宛にメールや社内報などを使って継続的に情報を発信しています。加えて、社員食堂を利用した告知イベントを開催、社員が直接質問や寄付ができる場を作り、より深いコミュニケーションも図っています。社員の反応は概ね良く、イベントではCMで活動を知ったのでもっと深く知りたい、寄付をしたい、他の場所でもイベントをしてほしい、などの声が挙がりました。「紙・印刷物購入方針」は関連する部署に連絡を行い、理解を深めるためのガイドラインもあわせて発行しています。
  • エコラベルや環境配慮用紙と言われるものがたくさんあり、どれを選べばいいのか分からない。

    →それぞれの森林認証制度やエコラベルには、守らなければならない基準や規則がありますが、それらがどの程度、環境に配慮しているかは、認証制度やエコラベルによって差があります。WWFは、FSCの普及・推進に取り組んでいます。
     

紙を使い続けてゆくために

紙の生産者だけでなく、調達する側によって「責任ある紙調達」が検討される傾向は、世界的にはもちろん日本においても確実に強まっています。この背景には、自発的な環境意識の高まりもあれば、十分な意識をせずに購入を続けたために、環境団体から激しい批判を受け思わぬ評判リスクにつながってしまった事例などが世界では報告されています。

現状では、大きな課題を抱えている日本ではありますが、WWFジャパンは、今後も問題のある生産者や供給者に対し改善を求めると共に、責任ある紙調達の流れが拡大、浸透していくよう、企業、関係者との連携を強めてゆきたいと考えます。

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