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GPSNR第2回総会 持続可能な天然ゴムへ向け前進

この記事のポイント
2020年10月23日、「GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber):持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム」の第2回総会がオンラインで開催されました。GPSNRは、世界の天然ゴム生産が、自然環境の保全や労働者、地域住民などの人権に配慮され、持続可能に生産、また利用することを目指す組織です。GPSNRのなかで最も高い意思決定の場である総会にて、持続可能な天然ゴムを目指す取り組みを前進させる大きな決定がなされました。

暮らしを支える天然ゴム そのサステナビリティ

自転車や自動車、飛行機、さまざまな乗り物に欠かせないタイヤ。他にも靴底やラバーブーツ、医療用のゴム手袋など、天然ゴムを使用する製品は日々の暮らしに欠かせないものとなっています。いわゆる「ゴムの木」から採取される白い液体が主原料となっている天然ゴム。今、この天然ゴムの木を植えるための自然の森の減少、そして労働者や地域住民の人権に関わる問題に注目が集まっています。

©︎Hkun Lat / WWF-Myanmar

ゴムの木の表面近くを削ると出てくる白い樹液。これを集めて凝固、加工したものが天然ゴム。

WWFは、天然ゴムの生産と利用を、環境破壊や人権問題に関わらない、持続可能で責任あるものへと変革するため、生産現場では地域の政府や生産者組合などのステークホルダーと、また市場ではタイヤや自動車関連企業との対話に取り組んでいます。

2018年には、その生産量の70%以上を使用するタイヤ業界の主導により、持続可能な天然ゴムを推進するための新たなプラットフォーム、GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber):持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォームがシンガポールにて設立されました。

©WWF international

第一回総会の様子

インドネシアやタイといった天然ゴム生産地から、またアメリカや日本、フランスなどのサプライチェーンの下流にある国から、39の企業・団体の参加を得て、2019年3月には初となる総会が開催。WWFはその創設メンバーの一員として参加するとともに、総会に次ぐ意思決定グループとなるエグゼクティブ・コミッティー(運営委員会)のメンバーとなることも決定しました。

第2回総会での主な決定事項

そして2020年10月の第2回総会までに、参加メンバーは64社・団体にまで増加。これは、天然ゴムに限らず、世界的に高まる持続可能性への関心の高さを表しているといえるでしょう。

この第2回総会での大きな決定事項として、以下の2点があります。

① 小規模農家の参加と小規模農家カテゴリーの新設

天然ゴムは、その生産量の85%が、企業などが所有する大規模な農園(プランテーション)ではなく、小規模に生産を行う農家によって支えられています。その数は、タイ、インドネシア、ベトナムなどの主要な生産地である東南アジアを中心に、約600万にのぼるとされています。

にも関わらず、この持続可能な天然ゴムを目指すプラットフォームには、そうした小規模農家の参加が遅れていました。そのため第1回目の総会以降、世界各地の小規模農家にGPSNRを紹介し、参加を呼びかけるワーキンググループが組織。小規模農家の定義付けや生産地でのワークショップ開催などを行なってきました。

この結果、今回の総会にて、インドネシア、ガーナ、コートジボワール、タイ、ブラジル、ベトナム、ミャンマーの7カ国から計29名の参加が承認されました。またこれまで、参加社・団体は、①生産・加工企業、②タイヤメーカー、③自動車メーカー・エンドユーザー、④NGOの4つのカテゴリーに分けられ、意思決定のバランスがとられていましたが、新たに5つ目のカテゴリーとして小規模農家カテゴリーが新設。小規模農家もGPSNRでの意思決定に大きな力を持つこととなりました。

WWFジャパン作成

GPSNRの構成カテゴリー。総会での意思決定(可決)には各カテゴリー内での過半数による可決と、さらに参加者数の多いカテゴリーが有利にならないよう、カテゴリーごとの重み付けを調整のうえ、全体で66.6%の賛成が必要。

今後、GPSNRで行なわれるさまざまな議論や取り組みは、小規模農家の現状や課題をより理解しながら、進められることになります。これにより、持続可能な天然ゴムを目指す取り組みが、まだ経済的には苦しい状況にある小規模農家の生計向上にも貢献することが期待されます。

② 参加企業に求められる方針の概要が決定

天然ゴムに限らず、木材や紙製品などの林産物、パーム油や大豆などの農産物にについて、そのトレーサビリティを確保し、持続可能性を確認しようという動きは世界的に拡大しています。このなかで、企業ごとに調達に対する基本的な考え方を明文化し、例えば「保護すべき高い価値」や「高炭素蓄積地」の保全といったような定義や実施手順のある言葉を用いて、社として具体的に何を確認したいのか明確に示すことが、企業にとって重要な一歩といえます。

GPSNRでも、その立ち上げ以前より、参加企業に求める持続可能な天然ゴムの生産や調達に対する考え方の表明のあり方が、長く議論されてきました。今回、参加企業への要件となる方針の概要が可決されたことで、このプラットフォームが、相当に高いレベルの天然ゴムの持続可能性の実現を目指すものだという意志がより明確になりました。

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方針に含まれる要素

  1. 法令遵守
  2. 健全で機能する生態系の維持
  3. 先住民や地域住民、労働等に関する全ての人権の尊重
  4. コミュニティの生計支援
  5. 生産効率の改善
  6. 方針の効率的な実施のためのプロセスとシステムの構築
  7. サプライチェーン評価、トレーサビリティ確保とその管理
  8. 方針への適合、進捗報告とモニタリング

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詳細はこちらをご覧ください(GPSNRのウェブサイトへ)
https://www.gpsnr.org/news-publications/highlights-from-general-assembly-2020

理想と現実 スピード感を持った行動を

GPSNRに参加する一組織として、WWFは今回の総会で得られた前進を歓迎します。

©︎ Minzayar Oo / WWF-US

ミャンマーでは農地開拓のための森の減少が課題となっている。ほとんど人の手の入っていない自然の森には、多くの野生生物が生息する。

しかし、小規模農家のGPSNRへの参加を得たからといって、生産効率の向上や生計の改善、周辺の生態系保全など、生産現場に具体的な好影響を与えるまでには至っていません。また時には数多くの事業者を介して取引される天然ゴムのサプライチェーンは複雑で、その完璧な追跡手段もまだ確立されていないのが現状です。

とはいえ、GPSNRをはじめとする天然ゴムのトレーサビリティとその先にある環境・社会的な負荷を確認しようとする動きにより、すでにいくつかの生産現場で、トレーサビリティツールの開発や先駆的な運用、経験の共有が始まっています。

インドネシアやタイ、ミャンマーなどの生産国で、森林保全と持続可能な天然ゴムの生産を目指すプロジェクトを実施するWWFとしても、天然ゴムの生産に関わる農家や地域コミュニテイ、生産者団体、政府、そして市場国側で調達を行なう企業など、多様なステークホルダーと連携し、今後も活動を継続してゆきます。

©︎ Stephen Kelly / WWF-Myanmar

天然ゴム農園。まだ経済的には貧しい地域で、天然ゴムは貴重な収入手段となっている。こうした地域では生産効率や品質が低いこともあり、改善の余地が大きい。

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