持続可能な天然ゴムの生産と利用


「天然ゴムが使われている製品」と聞いたとき、どのようなものが思い浮かぶでしょうか。天然ゴムは、自転車や自動車などの乗り物に使われるタイヤ、輪ゴム、ホース、手袋や長靴、スニーカーの靴底など身近な製品をはじめ、生活のなかでは目にしない工業用にも使用されています。しかし、この天然ゴムの生産が、東南アジアで今、自然の森を減少させる要因の一つになり始めています。このことから2016年、WWFジャパンは、天然ゴムの持続可能な生産と利用を目指すプロジェクトを開始しました。

ゴムの木から生まれる天然ゴム

用途も豊富でビジネスや日常生活のあらゆるところで活躍しているゴム。
そもそもゴムは「天然ゴム」と「合成ゴム」に大きく別けることができます。

天然ゴムは、ゴムの木の表面近くを削ると流れ出す白い樹液を凝固、加工してつくられたもの。一方、合成ゴムは、石油を主原料に化学的に生成されたものです。中には、天然ゴムと合成ゴムを混ぜてつくられる製品もありますが、その世界での生産割合はおよそ4(天然ゴム):6(合成ゴム)となっています。

ゴムの木はもともと、南米のアマゾンが原産の自然の樹種です。
それが今では、世界の熱帯地域で植林され、ゴムの原料が収穫されるようになりました。

特に、天然ゴムの生産地が集中しているのは、タイ、インドネシア、ベトナム、中国などの東南アジアで、この4カ国で世界の総生産量の約4分の3を占めています。

中でもタイとインドネシアは世界の二大天然ゴム生産国で、日本が消費する天然ゴムの大部分もこれらの国から輸入されています。

そして、この天然ゴム生産における特徴の一つは、植えられるゴムの木の多くが大企業によって開発、運営される大規模な農園(プランテーション)ではなく、小規模な農家によって管理されていることがあげられます。

ナイフなどでゴムの木の表面近くを削ると出てくる白い樹液。これを集めて凝固、加工したものが天然ゴム

不純物を取り除いた樹液を固めてシート状に伸ばし、乾燥させるとゴムの色に変化

増加する天然ゴムの消費と、減少する自然の森

世界の天然ゴム生産量、消費量はともに増加傾向にあります。その生産は過去40年間で3倍に拡大し、2014年には約1,200万トンとなりました。

東南アジアを中心に、まだまだ経済的には貧しい地域も多いこれらの地域において、天然ゴム栽培は貴重な収入手段の一つとなっています。

しかし一方で、これらの地域には、ゾウやトラなどの絶滅の危機に瀕する希少な大型の野生生物が生息する豊かな自然の森が残り、新種の野生生物が発見されることも珍しくありません。

特にミャンマーやカンボジア、ラオスなどメコン川流域のインドシナ半島では、これまで、長く続いた内戦や、軍事政権による統治などの理由で、大規模な調査が行なわれてきませんでした。これらの地域には今も、未知の生き物が生息している可能性があると考えられています。

ところが近年、そうした手付かずの自然の森が、減少しています。

その原因は、道路やダムなどのインフラ開発。食糧生産のための農地拡大。紙を含む木材製品や、植物油の一種のパーム油を生産するためのプランテーションの造成。そして、この天然ゴムの栽培の拡大などがあります。

 

ミャンマーとタイ国境付近の自然林

道路などのインフラ開発が進むことによって自然への影響が懸念される

持続可能な生産と利用を目指して

日々の暮らしやビジネスに欠かせないさまざまな自然資源。たとえば木材や紙パルプ、パームオイルといった森林資源に関連する産品に関しては、FSC®やRSPOといった第三者認証を用いながら持続可能な利用を目指す取り組みも、既に世界各地で実践されています。

WWFを含む数々のNGO(民間団体)も、さらなる森林の減少を食い止め自然環境を守るだけでなく、地域住民や労働者の権利などにも配慮した「持続可能な生産」と、そうした方法で生産された持続可能な製品を意図的に選択しようとする「持続可能な市場」の拡大に取り組んできました。

天然ゴムについても2015年に発表されたWWFフランスと世界的なタイヤメーカーのミシュラン社、そして2016年のWWFジャパンとトヨタ自動車株式会社との協働もスタートし、その由来や持続可能性について確認しようとする動きが進んでいます。

生産量の7割超がタイヤの生産に使われるともいわれる天然ゴム。

このことから世界的にも天然ゴムのサプライチェーンに関わる企業が多い日本は、天然ゴムの持続可能な利用と、生産地の自然環境の保全、そして持続可能な発展に、市場という側面から大きな貢献ができる可能性があるといえます。

ミャンマー、農村の人々

FSCマーク(左)とRSPOマーク(右)

もちろん、こうした取り組みを推進するためには、天然ゴムの生産に関わる現地の農家や地域コミュニテイ、生産団体、政府、NGO、そして調達を行なう企業など多様なステークホルダーの協働が必要です。

WWFは、地球環境への負荷を極力軽減し、生物多様性を守りながら、経済的に豊かになろうとするニーズの大きな地域の持続可能な発展に貢献することを目指し、天然ゴムの持続可能な生産と調達に取り組みます。

(出典:国際ゴム研究会(IRSG)統計2017)

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