マダガスカル固有のカメレオンに危機


WWFとIUCN(国際自然保護連合)の共同プログラムで、野生生物の国際取引を監視するトラフィックは、マダガスカルに生息する爬虫類・両生類が、ペットとして違法に取引されている現状を明らかにした、新しいレポートを発表しました。取引にかかわっているのは、タイのペット業者で、取引対象となっている野生生物には、多くの希少種や固有種が含まれています。

タイで行なわれている大規模な取引の実態

タイのペット業者が、マダガスカルに生息する、絶滅のおそれのある爬虫類や両生類を、国内および海外向けに販売していることが、トラフィックの新しいレポート『Trade in Madagascar’s endemic reptiles and amphibians in Thailand(タイでのマダガスカル固有の爬虫類・両生類の取引)』によって明らかになりました。

トラフィックの調査員が、首都バンコクと8つの県で、32のペット業者を対象に、15日間にわたって行なった調査の結果、591頭のマダガスカルの爬虫類・両生類が販売されていることが判明。

このうち、16種233頭はカメレオンで、市場や店舗、インターネットを通じて販売されていました。
調査結果をまとめた新しいレポートは、特に心配な点として「マダガスカル固有のカメレオンの大規模な取引がおこなわれていること」を指摘しています。

さらにそこには、ワシントン条約で国際的な商業取引が禁止されている種も含まれています。

説明のつかない輸出入

トラフィックではレポートの中で、これらの取引されている両生・爬虫類について、輸入の合法性についても、疑問があるとしています。

マダガスカル原産のカメレオンも、合法的に取引されているものがある一方、明らかにその違法性が高いと目されるものも含まれていました。

たとえば、2004年から2005年の間に、タイに輸入されたカメレオンのうち、全体の78%を占める3,738頭については、カザフスタンで「飼育繁殖」されたもの、または、レバノンから「再輸出」されたものと申告されています。

しかし、公式の取引データの分析をみると、カザフスタンがマダガスカルからカメレオンを輸入した記録はありません。

さらに、他の国が、マダガスカル産のカメレオンを、カザフスタンに輸出した報告もありません。

レバノンの場合も同様です。
公式のデータによれば、2005年にレバノンは合法的に32頭のマダガスカル産カメレオンを輸入しました。

しかし、このわずか30頭ほどが、どれほど高い繁殖率と生存率を持っていたとしても、最終的にタイに輸出された、数千頭のカメレオンを産んだ親と見なすのは理論的に不可能です。

「もし本当に、カザフスタンでマダガスカル原産のカメレオンの大規模な飼育繁殖事業が行なわれているのであれば、それらの繁殖個体は、どこから得られたのか。また、輸出の多くがなぜワシントン条約に加盟していないレバノンを経由して行なわれているのか」。

トラフィックサウスイーストアジアの事務局長代理クリス・シェファードは疑念を表して言います。

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マダガスカルに生息するパンサーカメレオン(Furcifer pardalis)。大きくなると50センチを超える大型種で、ペットとしても人気がある。

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レポート『Trade in Madagascar’s endemic reptiles and amphibians in Thailand(タイでのマダガスカル固有の爬虫類・両生類の取引)』

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カメレオンが生息するマダガスカルの森。伐採や耕作地への転換により、多くの地域で森林の生態系が脅かされている。野生生物の密猟や密輸は、こうした自然の危機にさらなる悪影響をもたらす。

希少なリクガメも犠牲に

タイでの調査では、世界でももっとも希少なリクガメとされるホウシャガメが100頭、クモノスガメが数十頭、ヘサキリクガメも3頭が確認されました。

いずれの種もIUCN(国際自然保護連合)の絶滅のおそれのある野生生物のリスト「レッドリスト」で、最も絶滅の高いランクである「CR(近絶滅種)」に分類されており、ワシントン条約でも国際的な商業取引が全て禁止されています。

WWFマダガスカルの代表であるリチャード・ヒューは次のように言います。
「マダガスカルから、主にアジアに向けて、かなりの規模で保護種が違法に取引されていることはわかっています。こうした状況は、現在の政治的な混乱によって悪化し、それが現行の法律や保護区での保全対策を弱めています」。

実際、マダガスカル南西部に生息する野生のホウシャガメの個体群は、近年著しく減少しているとみられています。

取引ネットワークの存在と、求められる対策の強化

トラフィックの調査はまた、業者のネットワークの存在も示唆するものとなりました。
このネットワークを通じ、マダガスカルの爬虫類・両生類はいったんバンコクのチャトチャック市場に集まり、それが地方の町へと広がっていると見られています。また、インターネットでも、国内・海外両方の顧客に対し、盛んに販売されています。

2011年6月上旬にも、バンコクのスワンナブーム空港では、保護種の爬虫類800頭以上がタイ当局によって差し止められました。

過去にはタイから密輸された、爬虫類やスローロリスなどが、日本で摘発された事件も、少なからず起きています。

トラフィックは、タイ当局に対し、国際的な協力を通じて疑わしい出所からの輸入について捜査し、それを止めるよう要請。また違法な爬虫類・両生類を販売する業者に対し、厳格な措置を求めています。

 

関連情報

トラフィックイーストアジアジャパンのサイト

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