津波の被災地・松川浦で地形調査を実施


WWFジャパンの「暮らしと自然の復興プロジェクト」では、津波の被災地、福島県相馬市で、自然と基盤産業である漁業の調査・復元活動を進めています。2011年11月14~15日、その活動の一環として、相馬市内沿岸の松川浦を中心で、海岸線の地形調査を実施しました。これは、津波を受けた松川浦の地形変化を調べ、今後の自然復元に役立てることを目的とした調査です。

海と海岸線の地形を調べる

WWFジャパンでは現在、希少な動植物の宝庫であり、漁業、観光業の基盤でもある、福島県相馬市の松川浦で、地域の関係者からの聞き取り調査と、専門家に依頼した、漁業経済、底生生物、鳥類、藻場、汚染物質の各種調査を、順次進めています。

2011年11月14~15日まで、この調査の一環として、国士舘大学の長谷川均教授らに協力いただき、松川浦の海岸線の地形調査を実施しました。

今回の震災と津波により、松川浦は、地盤沈下や底質(海底の砂など)の移動、砂州の決壊、周辺植生の破壊などが起き、環境が一瞬にして大きく変化しました。

しかし、長い目で見ると、松川浦の環境は震災以前より、少しずつですが変化をしていました。科学的な調査データが十分ではないため、変化の原因の特定にはいたりませんが、松川浦の底質(海底の土砂の質)は、前は砂が多かったのが、泥っぽくなったと、地元の漁業関係者も言います。

そのためか、以前は漁獲されていたハマグリも、今ではほとんど見ることが出来なくなってきました。松川浦の名産の一つアサリでさえ、近年では漁獲量が減っています。これらの二枚貝が好むのは、泥質ではなく、砂質の海底です。

こうした事情からも、なんらかの原因により、松川浦では自然環境が悪化してきていたと考えられます。WWFでは、こうした震災以前から起きていた可能性のある問題も見据えながら、自然の復元や、アサリなどの漁業の復興を進めて行く必要があると考えています。

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多くの木々が倒された中州

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案内してくれた相馬双葉漁協松川支所の
太田さん(左)と国士舘大学長谷川教授

どのような変化が起きてきたのか?

今回の調査は、このような課題を解決するために、過去の地形図や衛星画像から、松川浦に起こった変化を推測することを目的に行なったものです。長谷川教授らには、現地入りして被災状況を見ていただくとともに、地形変化の解析にあたり、どのような情報が必要になるかを把握していただきました。

松川浦のような半閉鎖的な環境は、流入する河川などの、周辺環境の変化に大きく影響されます。

長谷川教授の研究によると、WWFジャパンが長く保全に取り組んできた、石垣島白保のサンゴ礁においても、同様の変化が認められるといいます。白保では、陸上の河川の流域の土地利用のあり方が変化にともない、海域の環境が変化し、海草の生育範囲が変化したことが明らかになったのです。

調査の1日目は松川浦の周囲を移動し、地理学的観点から視察を行ないました。
2日目は相馬双葉漁協松川浦支所の太田雄彦さんに協力して頂き、船を出してもらい、松川浦内の小島、通称「中州」に上陸し、地形の変化、植生の変化を確認してきました。

この中州はサギ類のコロニー(集団繁殖地)があり、また周辺は松川浦名産のひとつ、青ノリの種(殻胞子)が栽培用の網に付着する採苗場にもなっています。
いわば、松川浦の中でも、生物多様性がとりわけ豊かな、ホットスポットのひとつになっている場所なのです。

しかし、これに程近く、海と松川浦を隔てていた砂州が、津波で決壊したため、「中州」は大きな影響を受けました。こうした場所は、水産資源の母体になる環境でもあることから、今後の漁業復興のポイントにもなる可能性が高い場所です。

調査中、中州では、相馬の漁業者の皆さんが、がれきを撤去する作業の現場にも、立ち会うことができました。

現在、福島県の漁協は自主休業中で漁業再開のめどはたっていません。漁業者の方々は一日も早い漁再開を目指し、がれき撤去による魚場の復元に取り組んでいます。

こうした復興に取り組む地域の住民の方々や、関係機関・団体との協力は、欠かせない重要な視点です。
WWFジャパンも科学的調査を続け、松川浦の抱えている復興、再生に向けた課題を明らかにしつつ、具体的なその解決手段を考え、復興を支援して行く予定です。

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網についたノリの幼体。今年は例年より成長が遅いと言います。

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中州の東側にわずかに残ったアマモ。津波で多くのアマモ場が消失しました。

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中州のがれき・流木を撤去する漁業者

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