環境に配慮した養殖シーフードの「ASC」ラベルが決定


自然環境に配慮して養殖されたシーフードに付けられる「ASC」のロゴマークが2012年4月17日、公表されました。ASCは、「海のエコラベル」として知られる「MSC」の養殖版にあたるものです。養殖水産物が世界の水産物の約半分を占め、海の環境と資源に与える影響が大きくなりつつある現在、ASCの取り組みは、これを持続可能なものに切り替えてゆく上で、大きな力になることが期待されています。

増大する養殖水産物へのニーズと問題

魚などの水産資源(シーフード)の消費量が今、世界的に増加しています。
水産資源は大きく「天然」「養殖」の二つに分けられますが、このうち「天然」の水産資源については減少傾向にあり、FAO(国連食料農業機関)の評価でも、人の食べる魚の3割が、過剰な利用により危機的状況にあるとされています。

また一方の「養殖」は、市場のニーズや消費者の好みに合わせた水産物を生産できるため、期待と需要はますます高まっており、近年、世界の水産物の約半分を占めるほどになっています。

しかし、こうした養殖産業は、一方で環境に害を及ぼすさまざまなトラブルの原因にもなることがります。

  • 養殖場建設による自然環境の破壊
  • 水質や海洋環境の汚染
  • 薬物の過剰投与
  • エサとなる生物(天然資源の魚などを含む)の過剰利用
  • 養殖された魚が病害虫を自然界に持ち込む
  • 養殖場から逃げ出した個体が外来生物として生態系に影響を及ぼす

さらには劣悪な労働環境のもとでこうした養殖業が行なわれているケースも指摘されており、社会的な問題にもなっています。

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「養殖」の環境配慮を促すASC認証制度

そうした問題に対する取り組みを行なうため設立されたのが、ASC(Aquaculture stewardship Council:水産養殖管理協議会)です。

ASCは環境と社会の両面において責任ある養殖水産物であることを判定する認証基準の管理機関で、天然水産物についての認証を行なっている「海のエコラベル」MSC(海洋管理協議会)の養殖版に相当します。

2000人を超える多様なステークホルダーの参加のもと、「環境と社会の両面において責任ある養殖水産業」の国際基準を作り、その管理を行なう非営利組織として、WWFと農林水産物等の持続可能な流通を推進するオランダの団体IDHが、2009年に共同で設立しました。

その後、実際の認証基準の策定が開始され、現在のところ、世界の12品目(サケ類、淡水性マス、エビ類、ホタテ、カキ、アサリ、ムール貝、アワビ、ティラピア、パンガシウス、ブリ類、スギ類)の養殖水産物について、ASCの認証基準の策定作業が進められています。

そして、この認証作業と平行して、ASC認証を受けた製品であることを示すロゴマークが、2012年4月17日に発表されました。

ASCのこれからの展開

このラベルのロゴは、世界中の認証マークから得た教訓を活かし、養殖業が海と陸との両方で行なわれるという特性を考慮したカラーを採用しました。

ASC事務局長のクリス・ニンネスは「消費者がロゴを一目で認識し、選択できるようにすることが重要です。魚の横にある大きなチェックマークは、水産物の購入がポジティブな選択であることを明確に示し、さらに、Responsible=責任のある、とCertified=認証された、がビジュアルを強調しているのも特徴です」と語っています。

ASCラベルが、世界で最初に付与されるのは、淡水魚のティラピアの予定で、現在インドネシアとホンジュラスの養殖場において、認証審査が行なわれており、2012年の夏には、カナダ、ドイツ、オランダ、フランス、スウェーデン、デンマーク、イギリスのスーパーマーケットで、ASCラベルを添付したティラピア製品が買えるようになるとのことです。

消費者に持続可能な養殖シーフードを教えてくれる、「ASC」のラベル。
「MSC」と共に、環境と社会に配慮した、責任ある水産物を広く流通させるための、先駆的で国際的なスタンダードの牽引役として、今後の拡大が期待されます。

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