湿地保全関連 情報まとめ(2006年~2010年)


  • 日本の法的な海洋保護区は浅海域のわずか3.7%(2009年12月21日)
  • 要望書:ラムサール登録地の保全について 貴信(近八環第637号)(2009年12月11日)
  • 滋賀県近江八幡市長に要望書 「ラムサール登録地の保全について」を提出(2009年9月4日)
  • 第4回「ふるさとの海」コンクール開催(2009年7月11日)
  • 佐賀地裁が判決 国は諫早湾の水門を開放せよ!(2008年6月27日)
  • 守られたガンの楽園 伊豆沼温泉計画が白紙に(2008年4月18日)
  • 鹿島市参加5周年!シギ・チドリネットワーク記念式典報告(2008年4月30日)
  • 事業が完了しても問題は続く!諫早の海を取り戻そう(2007年11月20日)
  • 諫早湾閉め切りから10年 堤防撤去と干潟再生を求めて(2007年4月14日)
  • 「有明海異変」を問う! 市民版「諫早干拓時のアセス」(2006年6月16日)


日本の法的な海洋保護区は浅海域のわずか3.7%(2009年12月21日)

記者発表資料 2009年12月21日

【東京発】WWFジャパン(財団法人世界自然保護基金ジャパン)は、この度、日本の海洋保護区の設定状況を評価したレポートを発表した。何らかの法的根拠によって保護されている面積はわずかに3.7%にとどまった。漁業者や地域住民による自主的な保全管理を行っている場所や、海洋保護区の定義が明瞭でなかったり、まとまったデータが存在しないため、保護区として集計することが不可能な場所も存在した。既存の保護区の管理手法の見直しを含め、これらの区域をどのように整理し、海洋保護区として位置づけるかが今後必要である。

海洋保護区は、危機的状況にあるといわれる水産資源を持続的に利用していくための有効な手段の一つといわれている。地球規模で見ると、陸上の表面積の12%が保護区となっている一方、海洋で保護区となっているのは1%にも満たない。世界最大の環境国際条約である生物多様性条約の第8回締約国会議(2006年)において、2012年までに海洋沿岸の少なくとも10%が実効的に保全されるべきとの目標が出され、その目標達成が日本を含む締約国に求められている。来年10月には名古屋で開催される第10回締約国会議では、海洋保護区のあり方が主要議題として討議される。

今回評価した保護区は、法的根拠に基づき、土地の改変に規制があり、かつ生物の捕獲規制が周年にわたってかけられている区域を各種資料より抽出した。今回WWFジャパンが独自に定義したのは、鳥獣保護区特別保護地域(鳥獣保護法)、海中公園地区(自然公園法)、海中特別地区(自然環境保全法)、保護水面(水産資源保護法)の汽水湖を含む海水面である。

各保護区の海水面面積は、鳥獣保護区特別保護地区40,752ha、海中公園地区は3,745ha、海中特別地区は128ha、保護水面は2,747ha、合計47,385haだった。日本の海洋保護区は水深10m以浅の浅海域1,290,068haの3.67%に該当し、国際目標である10%には遠く及ばない。さらに領海面積43万km2、排他的経済水域447万km2を分母とすると、それぞれ0.11%、0.01%となる。日本がどのようにして国際目標を達成するかの議論が必要である。

海洋保護区の国際的に使用されている概念として、文化的遺産など必ずしも生物の保全が主眼に無くても良いこと、管理手法が実効的であれば法的な規制は必須ではないこと、海に近接する陸域も含まれることが明言されている。一方、漁業者や地域住民による自主的な保全管理の事例、海岸や海鳥の繁殖する島など、上記の集計に含まれた保護区以外にも海洋保護区に相当する区域は存在する。しかし、日本では現実には公的または広く指示されている定義がまだない。また、まとまった海洋保護区のデータベースが存在しないことから、天然記念物や漁業禁止区域などは、現段階で保護区として集計することが不可能である。早急なデータベースの構築が求められる。

これらの区域をどのように整理し海洋保護区として位置づけるのか、既存の保護区の管理手法の見直しも含めた対策をWWFジャパンは行政などに働きかけて行く。

レポート


要望書:ラムサール登録地の保全について 貴信(近八環第637号)(2009年12月11日)

要望書 2009年12月11日

滋賀県近江八幡市 市長 冨士谷英正殿

WWFジャパン 事務局長 樋口隆昌

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。

当財団が貴職に、西の湖の保全をお願いいたしました2009年9月3日と10月22日の要望書に対する、ご回答(近八環第637号 12月4日付け)を拝領いたしました。ありがとうございました。

丘陵地がなく市域のほとんどが農地であること、平成19年から市内各地において候補地を検討されてきたが適地が確保できなかったというご事情は理解できました。しかし、私どもが抱いております予定施設の西の湖への悪影響に関する懸念(2009年10月22日の要望書。付記Bの2「WWFが考える西の湖の保全」)が払拭された訳ではございません。
西の湖が生物多様性豊かなホットスポットであること、その至近距離に予定地があること、さらに予定地が湧水のある軟弱地盤地帯であることは変わらないためでございます。

自然環境や生態系維持及び景観の保全を重視いただくとのこと、ありがとうございます。いただきました貴信の添付「建設予定地の取組経過」に記されている第二次選定には、物理的条件ばかりが列挙されており、現予定地の自然環境への配慮が欠如している理由が理解できました。西の湖への影響が重大であると思われることは過去2回の要望に記しましたが、予定地の水田への影響も考えていただきたいと存じます。

水田は自然生態系の宝庫であり、昆虫、魚類、両生類などが多く見られる場所です。ことに湖や内湖に近い水田が固有種のビワコオオナマズやニゴロブナの大事な産卵場であることが明らかになってきております。予定地が固有種の産卵場とは断定できませんが、重要な場所にあると思われます。

7ヘクタールもの水田が消えることの損失は重大です。当法人の立場をご理解いただきありがとうございます。私どもの持つ知識や情報をもとに支援をとのご要望ですので、次の2件をアドバイスさせていただきたいと存じます。

  1. 西の湖は、日本政府と地元(近江八幡市と安土町)が世界に対して保全を約束した場所であることを再確認ください。環境省の方針では地元の合意なしに、登録が進められることはありません。今後、保全を進める上で、様々な方策をとられることを期待しております。
  2. 事業アセスメントに入る前に、生物多様性基本法の理念に基づいて、戦略アセスメントあるいは計画アセスメントを実施されることをお薦めいたします。戦略アセスメントに従い、事業実施に入る前に、一般国民や専門家、環境保全機関などの関与を得て、現状(現在の施設や処理方法など)を精査し、改善の余地があるかないかを検討すると共に、今一度、いくつかの候補地を上げ、環境や社会面を考慮し、選択作業を進めることになります。10月22日の要望に記しましたように、生物多様性基本法が求めるもので、総合的に環境への配慮が十分になされます。

2に関して、私どもでは、戦略アセスメントが実施されず、事業アセスメントの結果のみを基に事業が実施された場合は、ラムサール事務局に「モントルーレコード」への記載を求めることになります。事業アセスメントでは不十分と考えておりますし、その不十分なアセスメントでリスクがないと結論が出ましても、安心できません。また、リスクを知りながら、行動を起こさないのは、条約事務局の国際パートナー機関としての責務を放棄することになるためでございます。戦略アセスメント実施についてご高配をお願いいたします。

蛇足ではございますが、私どもは廃棄物の処理施設整備に反対している訳ではございません。あくまでも、生物多様性保全の観点から、西の湖の重要性と予定地の位置、施設の持つリスクの西の湖への悪影響を懸念しております。ご理解いただきますようお願い申し上げます。

敬具


滋賀県近江八幡市長に要望書 「ラムサール登録地の保全について」を提出(2009年9月4日)

記者発表資料 2009年9月4日

WWFジャパンは、2009年9月3日、滋賀県近江八幡市の冨士谷英正市長に対し、市内のラムサール登録地の保全について要望書を送った。同市内の西の湖と長命寺川は昨年10月、韓国の昌原(チャンウォン)で開催されたラムサール締約国会議で、ラムサール登録地に編入されている。現在、同市は市内の浅小井町地先にごみ

処理施設「新エネルギーパーク」の建設を計画している。しかし、予定地は西の湖から至近距離にあり、また、脇を長命寺川に注ぎ込む蛇砂川が流れている。地盤の弱い場所での大型施設の建設は、ラムサール登録地に悪影響を及ぼすおそれがあり、予定地を変更するようWWFは求めている。

また、WWFジャパンは、「WWFがラムサール条約発効当時より、条約の国際パートナー機関であり、計画が変更されない場合、モントルーレコードに記載されるよう事務局に通報する必要が生じる」とも述べている。モントルーレコードは、1993年の第5回締約国会議(スイスのモントルーで開催)での決議に基づく仕組み。生態学的特徴を損なうような変化が起きてしまった、起きつつある、または起こるおそれのある登録湿地に焦点を当て、優先的な保全措置を与える。世界遺産条約の危機遺産リストと同様の仕組みである。通常は締約国が記載を求めるが、国際パートナー機関、他の国際または国内NGO、または関心を持つ他の組織も事務局に通報できる。


意見書 2009年9月3日

主題:ラムサール登録地の保全について

滋賀県近江八幡市 市長 冨士谷英正殿

WWFジャパン 事務局長 樋口隆昌

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。

私どもWWFジャパンは、1971年のラムサール条約発効当時より条約事務局の国際パートナー機関として、全世界の湿地保全に尽力いたしてまいりました。

さて、この度、近江八幡市が浅小井町地先の農地に「新エネルギーパーク」の建設を計画されていると聞き及びました。この場所は、ラムサール登録地である西之湖と長命寺川から至近距離にあり、同計画が実行された場合、悪影響が及ぶおそれがあると考えます。ご案内の通り、西之湖は様々な報告で、貴重植物が集中して生育する地域(ホットスポット)と確認されており、昨年10月ラムサール登録地に組み込まれました。この建設は日本が世界に対し保全を公約した場所を破壊、劣化させる危険性を伴い、また、近江八幡市の美しい自然景観を損なうものと考えます。条約の国際パートナー機関として、私どもはこのような登録地への脅威を見過ごすことはできません。速やかに建設地を変更いただきますようご高配お願い申し上げます。

なお、ご参考までに、ラムサール条約には1993年にスイスのモントルーで開催された第5回締約国会議での決議に基づく「モントルーレコード」という仕組みがございます。これは、生態学的特徴を損なうような変化がすでに起きてしまった、起きつつある、または起こるおそれがある登録湿地に焦点を当て、優先的な保全措置を与えようとするものです。潜在的または実際に生態学的特徴に負の変化が見られる場合、条約締約国が対応措置や支援の必要性に対する注意を喚起するために記載を求めることになります。また、別の方法として国際パートナー機関、他の国際又は国内NGO、または関心を持っている他の組織から同様の情報が、事務局に通報された場合、事務局は締約国に対し確認を行い、記載が検討されます。


第4回「ふるさとの海」コンクール開催(2009年7月11日)

WWFジャパンと佐賀県鹿島市の市民団体「水の会」は、鹿島市で、「ふるさとの海」メッセージを募集。市内の小学校5年生か ら中学校3年生まで500通を超える応募がありました。この中から最優秀賞 に選ばれた10名は、この夏、WWFジャパンの白保サンゴセンターのある沖縄県石垣島で地元の子供たちとの交流を行ないます。

佐賀県鹿島市でのコンクール

2009年7月11日、九州・有明海に面した佐賀県鹿島市において、第4回有明海ふるさとの海作品コンクールの優秀作品40点の授賞式が鹿島市生涯学習センターにて執り行われました。
選ばれたのは、最優秀賞10名、優秀賞10名、WWF賞及び水の会賞がそれぞれ10名の計40名です。

このコンクールはガタリンピックという干潟を活かした地域振興と、シギ・チドリネットワーク参加を核とした干潟保全を実施している鹿島市において、環境保全と地域の活性化のさらなる融合と発展を目指して2004年に設立された「多良岳~有明海・水環境保護団体 水の会」の活動として行なわれているもので、WWFジャパンも第1回目から支援と協力をしています。
コンクールは市内の小中学校を通じて小学生5年以上を対象として募集され、今年は絵画、作文、詩、短歌、俳句あわせて延べ512点の応募がありました。

授賞式は桑原允彦鹿島市長からのご挨拶と迎昭典審査委員長よりご講評をいただいた後、WWFジャパン海洋プログラムの東梅貞義オフィサーより賞状と記念品の授与が行われました。受賞した子どもたちは、緊張や恥ずかしさの表情を浮かべながらもうれしそうに賞状と記念品を受け取りました。

短歌の部最優秀賞:倉崎愛梨
潟の上 都会の子らの歓声が ほほえましくも わがふるさとよ

俳句の部最優秀賞:山下晃平
ありあけかい はくいき白く のりをつむ

宝の海、有明海

有明海は「宝の海」と言われ、今も豊かな生物多様性をとどめていますが、アゲマキやタイラギ等の二枚貝の激減や、主要産業であるノリ養殖の不振など、現在はさまざまな問題にさらされています。
原因としては、有明海における潮流の減少、赤潮や貧酸素水塊(*)の発生、冬季海水温の上昇等があげられていますが、対策にはいずれも、長期的かつ広域的な取組が必要です。

WWFジャパンは自然環境の保全だけではなく、地域の海とつながりを持つ人の暮らしを同時に守っていくことが望ましいと考えます。そのためには、有明海と関わりを持ってきた人たちが、自然環境の現状をよく知り、そしてどう行動したいかを考え、実施するための支援をしていきたいと考えています。

また、有明海の再生は鹿島市だけでなせるものではありません。鹿島市の活動を広く伝えて展開し、また他地域の優れた活動を取り込む支援もしていきたいと考えています。

2009年で4回目を迎えた作品コンクールと実施主体である水の会の知名度は徐々に向上しています。作品コンクールを通じてふるさとの環境に思いをはせた子どもたちが、今できることを考え、行動に移し、その環が広がっていくことで、よりよい自然と元気な街づくりにつながるのではないでしょうか。
WWFジャパンはこれからも海と人の暮らしを守るための活動を展開していきます。

  • (*)貧酸素水塊:海水中に含まれる酸素濃度がきわめて低い海域のこと。大発生したプランクトン等の生物の死骸が分解される際に大量の酸素が消費されることによって生じ、そのような海域では生物の生息が困難となる。

佐賀地裁が判決 国は諫早湾の水門を開放せよ!(2008年6月27日)

長崎、佐賀、福岡、熊本の4県の漁業者らが、有明海の漁業被害の最大の原因とされる、諫早湾の潮受け堤防の撤去や排水門の開放などを求めていた訴訟について、佐賀地方裁判所は6月27日、その訴えを大きく認める判決を下しました。今回、地裁が命じた水門の開放が実現すれば、有明海と諫早湾の環境回復は大きく前進することになります。

諫早湾裁判に判決! 国は水門を解放せよ!

日本で最も豊かな干潟といわれた、九州有明海の諫早(いさはや)湾干潟。この干潟は1997年、国営諫早湾干拓事業(長崎県)による湾の閉切りによって失われました。
この直後、諫早湾周辺の有明海では海の環境が急激に変化。「有明海異変」と呼ばれる、大規模な漁業被害が発生ました。

この被害が発生したのは、諫早湾干拓事業が原因だとして、長崎、佐賀、福岡、熊本の4県の漁業者ら約2500人が 国を相手取って、堤防の撤去や排水門の開放などを求めた訴訟を行なっていましたが、6月27日にその判決が佐賀地方裁判所で下されました。

判決は、「中・長期開門調査に必要とされる5年間の水門の開放」を国に命じるもの(ただし、防災機能を代替させるため判決から実施まで3年間猶予する)というもので、原告側の訴えを容れたものとなりました。

佐賀地裁による判決の骨子は次のとおりです。

  • 国は潮受け堤防の南北排水門を5年間常時開放せよ
  • 防災機能代替工事のため、判決確定から3年間は開放を猶予する
  • 堤防閉め切りと有明海全体の環境変化の因果関係は認められないが、諫早湾内については相当程度立証されている
  • 国が中・長期の開門調査に協力しないのは漁業者らへの立証妨害である
  • 開放で農業生産に支障が生じたとしても、漁業行使権侵害に優越する公共性、公益上の必要があるとは言い難い

WWFジャパンはこの判決を、諫早湾をはじめとする有明海の環境回復に向けた大きな一歩につながるものとして歓迎、声明を発表しました。


WWFジャパン公式声明 2008年6月27日

佐賀地裁の「諫早干拓潮受堤防水門の開放を命じる判決」を歓迎します

WWFジャパンは、6月27日に、佐賀地方裁判所が、諫早干拓潮受堤防水門の開放を命じる判決を出したことを高く評価し、歓迎します。

  1. 裁判所が、漁民や科学者たちの証言をもとに、諫早湾内の漁業被害が農水省の諫早湾干拓事業によって引き起こされたという因果関係を認定し、潮受け堤防の排水門の開放を命じたことは、今後、諫早湾および有明海の自然環境の再生、漁場の回復を目指す上で、とても重要なことであり、高く評価されます。
  2. 潮受け堤防の閉め切りによって、諫早湾、有明海の潮流・潮汐が変化し、一方では、調整池から汚染水が排出されつづけ、赤潮や貧酸素水発生の原因となり、漁業に悪影響を与えていることは、多くの研究者が指摘しているところです。
  3. 今回の判決は、水門を開放し、海水を導入して調整池内の水質を改善し、諫早湾、有明海の漁場を再生するにはいい機会であると言えます。干拓農地の農業用水については、悪化して環境基準を満たさない調整池水を使うよりは、実際にある代替農業用水を使うほうが合理的だと考えられます.また、将来にわたって調整池の水質改善のために巨額の税金を使うべきではありません。
  4. 諫早湾干拓事業および「有明海異変」と呼ばれる漁業不振と自然環境の悪化は、現場での自然環境保全の担い手である漁業者の生活を脅かすだけでなく、農業と漁業の間、因果関係を巡る研究者の間、市民と行政、政党間の政治的な対立など、大きな社会的不協和音へと続いています。このような負の連鎖を断ち切るための大きな決断として、今回の佐賀地裁の判決は、重要な意味を持っていると考えられます。
  5. 農水省は、今回の判決を重く受け止め、判決に従って水門開放の準備を進めるべきであり、控訴すべきではありません。水門の開放によって、諫早湾、有明海の自然環境を、その再生に向かって大きく前進させるとともに、漁場環境の改善と漁業の振興、安全な農業用水の確保を図り、漁業と農業の両立を目指すという政治的な判断が求められます。

WWFジャパン 要望書 2008年7月1日

佐賀地裁判決に対して控訴せず、中長期開門調査を実施することを要望します

農林水産大臣 若林正俊 様 

(財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) 事務局長 樋口隆昌

WWF ジャパンは、6月27日に、佐賀地方裁判所が、諫早干拓潮受堤防水門の開放を命じる判決を出したことを高く評価しており、農林水産大臣におかれましては、 諫早湾および有明海の自然環境の再生、漁業と農業の両立と振興の観点から政治的判断を行い、控訴されないように要望いたします。

  1. 裁判所が、漁民や科学者たちの証言をもとに、諫早湾およびその近傍の漁業被害が諫早湾干拓事業によって引き起こされたという因果関係を認定し、潮受け堤防の 排水門の開放を命じたことは、諫早湾および有明海の自然環境の再生、漁場の回復、漁業の振興を目指す上で、極めて重要なことであり、高く評価されます。
  2. 潮受け堤防の閉め切りによって、諫早湾および有明海の潮流、潮汐が変化し、一方では、調整池から富栄養化した汚染水が排出されつづけ、赤潮や貧酸素水発生の 原因となり、自然環境および漁業に悪影響を与えていることは、多くの研究者が指摘しているところです。今後は、中長期開門調査の実施によりデータを収集 し、海況と水質の改善を図ることに注力すべきです。
  3. 今回の判決は、水門を開放し、海水を導入して調整池内の水質を改善 し、諫早湾、有明海の漁場を再生するにはいい機会であると言えます。干拓農地の農業用水については、悪化して環境基準を満たさない調整池水を使うよりは、 実際にある代替農業用水を使うほうが合理的だと考えられます。また、将来にわたって調整池の水質改善のために巨額の税金を使うべきではありません。
  4. 諫早湾干拓事業および「有明海異変」と呼ばれる漁業不振と自然環境の悪化は、現場での自然環境保全の担い手である漁業者の生活を脅かすだけでなく、農業と漁 業の間、因果関係を巡る研究者の間、市民と行政、政党間の政治的な対立など、大きな社会的不協和音へと続いています。このような負の連鎖を断ち切るための 大きな決断として、今回の佐賀地裁の判決は、重要な意味を持っていると考えられます。
  5. 農林水産大臣におかれましては、今 回の判決を重く受け止め、判決に従って水門開放の準備を進めていただき、控訴しないように要望します。水門の開放によって、諫早湾、有明海の自然環境を、 その再生に向かって大きく前進させるとともに、漁場環境の改善と漁業の振興、安全な農業用水の確保を図り、漁業と農業の両立を目指すという政治的な判断を 要望いたします。

守られたガンの楽園 伊豆沼温泉計画が白紙に(2008年4月18日)

2005年春、ラムサール条約登録地であり、日本最大級のガン類の越冬地である宮城県伊豆沼で、温泉掘削計画が持ち上がりました。多くの自然保護団体がこれに反発。全国的にも反対の声が高まりました。その後、県から掘削許可を得た土地の所有者は、最終的に計画を断念。許認可の失効期限が過ぎたことで、正式に温泉掘削計画は白紙に戻り、伊豆沼の自然は守られることになりました。

渡り鳥の飛来地に温泉?

宮城県栗原・登米市の伊豆沼および内沼は、毎年10万羽ものガン類が訪れる国内最大級の水鳥の越冬地。湿地を保全する国際条約「ラムサール条約」にも登録されている、世界的にも重要な湿地保護区です。

ところが2005年、伊豆沼の北岸で温泉の掘削計画が持ち上がりました。地元在住の男性が、宿泊施設付の温泉建設計画の許可を県に申請したのです。
現行の法制度のもとでは、この温泉掘削計画に違法性はありませんでしたが、この開発が実現すると、塩分を含んだ温水が1日50トンあまり排出され、伊豆沼に流入するおそれがあったため、その生態系が深刻なダメージを受けることが予想されました。

計画に対し、自然保護団体は一斉に抗議。2006年には地元で、ガン類の保護活動に取り組む人たちが「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」を発足。県知事に対し、許可を出さないように求めると同時に、抗議のハガキを宮城県に送る、全国運動が呼びかけられました。
しかし県側は、伊豆沼の自然環境に配慮する必要性を認めながらも、違法性がないことなどを理由に、2006年3月24日、最終的には掘削許可の判断を下しました。

白紙になった温泉掘削計画

これに対し、2006年4月25日、WWFジャパンは宮城県知事に対し要請書を提出。近年、伊豆沼の水質汚染が進んでいることを指摘した上で、温泉から排水が継続して流入する事態になれば環境は更に悪化するとして、掘削許可の撤回と、伊豆沼の環境保全への配慮を求めました。

全国から県知事宛に届いた抗議のハガキやファックス、e-mail は4,000通を超え、「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」が中心となった反対活動も続けられました。

そんな中、掘削予定地に「売地」の看板が立てられたのは2007年9月頃のことでした。温泉法の規定により、予定地が第三者に売却されると許可は失効します。また、掘削許可には期限があり、許可から2年以内に事業を完了しなくてはなりません。

その後、特に計画の実施に向けた動きがないまま、2008年3月24日、今回の温泉掘削計画は期限切れを迎えました。理由は、申請者である男性の個人的な都合によるものとされていますが、地元から起きた反対運動の輪が全国に広がり、あらためて伊豆沼の自然の重要性が認識されたことは、今回の結果と、今後の伊豆沼の環境保全にも、よい展望をもたらす一つのきっかけになったといえます。

国際的な湿地保護区として継続的な保全を!

環境省の調査結果によると、伊豆沼では近年、水質の汚染が次第に進んでいることが明らかになっており、また今後も、周辺地域で新たな開発計画が持ち上がらないとは限りません。

ラムサール条約では、条約に登録された湿地の生態系が、汚染や人為的干渉により危機にさらされている場合、「モントルー・レコード」という登録湿地の特別なリストに記載して、問題の解決を図ることが推奨されています。WWFは日本政府に対し、伊豆沼の現状をラムサール条約事務局に報告し、モントルー・レコードに記載することで、水質汚染の改善を含めた環境の保全をさらに進めるよう要請しています。

伊豆沼の保全を求めるアクションにご賛同をありがとうございました

「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」 では、今回の温泉の掘削事業について、認可の取り消しを求めるハガキを、宮城県知事に対して送るアクションを広く呼びかけました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。


【関連資料】記者発表資料 2006年4月25日 

伊豆沼の保全にご協力ください!宮城県知事に、ラムサール条約湿地「伊豆沼・内沼」の環境保全を要請 温泉掘削許可の見直しとモントルー・レコードへの記載提案を!

WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、宮城県・伊豆沼北岸における温泉掘削が許可されたことに関連し、本日、宮城県知事に対して、ラムサール条約湿地「伊豆沼・内沼」の環境保全について、添付の通り要請書を送付しました。

この中でWWFジャパンは、以下の2点について要請しています。

  1. 温泉掘削許可を見直すとともに、今後の温泉関連装置の設置に対する許可を出さないこと

  2. 政府に対し、ラムサール条約の「モントルー・レコード」に記載し、水質汚染の防止と回復、自然再生など「伊豆沼・内沼」の環境保全政策を緊急に採用するよう提案すること

詳細は、添付別紙の要請書をご参照ください。

なお「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」(http://www.jgoose.jp/izunuma/)では、現在、宮城 県知事に対して、温泉掘削許可の見直しを求めるハガキを送るよう全国に呼びかけています。WWFジャパンではホームページでこの取り組みを紹介し、協力を呼びかけています。(こちらの取り組みは終了しました)


【関連資料】要請書 2006年4月25日 

宮城県知事
村井 嘉浩 様

(財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
事務局長代行 清野比咲子

ラムサール条約湿地「伊豆沼・内沼」の環境保全について(要請)

拝啓、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃より環境行政にご尽力いただき、厚くお礼申し上げます。

さて、本会は「ラムサール条約にもとづく湿地の保全と利用」を重要なテーマのひとつとして活動しています。そのため、宮城県内にある国内有数のガン・カモ・ハクチョウ類渡来地、水生生物の生育地・生息地であるラムサール条約湿地「伊豆沼・内沼」について、その環境保全に大きな関心を持っています。

そのひとつは、伊豆沼北岸における温泉掘削問題です。近い将来、温泉が掘削され、その排水が伊豆沼に排出された場合、ある程度の浄化処理をしたとしても、継続して排出される温泉排水の成分(塩泉)や温度による累積的な汚染、生態系への悪影響が心配されます。すでに温泉掘削に対する許可が出されていますが、温泉排水が伊豆沼に汚染をもたらす可能性が高いとすれば、それは、伊豆沼が「国際条約で重要性が認められている湿地である」という自然環境保全上の「公 益」を害することになると考えられます。これは、平成13年の温泉法の改正により「公益」が温泉源保護に限定されず、自然環境も考慮されるとの指摘がある ことによります。ラムサール条約湿地「伊豆沼・内沼」の環境悪化を事前に予測し、防止する対策をとるという予防原則の観点から、温泉掘削許可を見直すとともに、今後の温泉関連装置の設置に対しては許可されないように要請いたします。

もうひとつの問題は、伊豆沼の水質汚染です。環境省による 公共用水域水質測定結果の「湖沼のCOD高濃度水域(ワースト5)」では、伊豆沼は、平成12年度以前はワースト5位に入っていませんでしたが、その後、5位(13年度)、6位(14年度)、2位(平成15年度および16年度)というよう にワースト記録を更新しています。関係機関の努力にも関わらず、このような状況が続くことは、ラムサール条約湿地として、また、世界に誇る郷土の自然財産としてふさわしいものではありません。この点でも、温泉排水による更なる汚染は避けるべきです。

ラムサール条約では、条約湿地の生態的特 徴が、汚染や人為的干渉により、変化しつつある、または、変化するおそれがある場合には、条約事務局に報告し「モントルー・レコード」に記載して問題の解決を図ることが奨励されています(勧告Ⅳ-8、決議Ⅴ-4、決議Ⅷ-8など)。「モントルー・レコード」とは、保全の優先順位・行動を決めるための基本的ツールで、悪影響を及ぼす変化を解決するという意思表示をする、特に深刻な問題に焦点を当てる、国お よび国際的に保全上の注目を集める、財政上の資金配分をうながす必要がある、などの場合には有効な方法であると認められています。また、ラムサール諮問調査団を要請して国際的な見知から適切な助言を得ることが可能です。

伊豆沼・内沼の環境保全について、特に、水質汚染問題に関しては「モン トルー・レコード」に記載し、国際的にはラムサール条約事務局の協力を得て、国内的には、自治体、地域住民、環境団体の協力を得て、水質汚染の防止と回復、自然再生など「伊豆沼・内沼」の環境を保全するための政策を緊急に採用するよう、日本政府・環境省へ提案されることを要請します。

ご高配の程、よろしくお願いいたします。


鹿島市参加5周年!シギ・チドリネットワーク記念式典報告(2008年4月30日)

2008年3月1日と2日、有明海に面した佐賀県の鹿島市で、「シギ・チドリネットワーク」への参加5周年を記念した式典が開催されました。鹿島市の関係者の皆さんは、身近な自然の代表である干潟、そしてその干潟を育む山や川を、一つのつながった自然として保全し、未来の子どもたちに安心して手渡してゆける、ふるさとづくりを目指しています。

国際ネットワークへの参加から5年

2008年3月1日と2日の両日、有明海に面した佐賀県鹿島市で、「シギ・チドリネットワーク」への参加5周年を記念した式典が開催されました。

これは、「北鹿島ふれあいまつり特別企画」の一環として行われたものです。鹿島市が参加する「シギ・チドリネットワーク」とは、正式名称を、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ/東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワークといい、日本をはじめ、オーストラリアやインドネシア、韓国、ロシアなど、東アジア地域からオーストラリアまでの地域を含めた、シギ・チドリ類の渡り鳥の飛来地が参加する、国際的な保護活動のネットワークです。

WWFジャパンと、豊かな干潟の海を持つ佐賀県鹿島市のつながりができたのは、この通称シギ・チドリネットワークへの鹿島市の参加がきっかけでした。

シギやチドリなどの渡り鳥が、毎年たくさんやってくる干潟を擁した、鹿島市の新籠(しんごもり)海岸が、シギ・チドリネットワークの5番目の登録地となったのは、今から6年前のこと。WWFが、日本沿岸の重要な湿地の保全を推進するため、各地域に呼びかけていたこの国際的な保護区のネットワークへの参加に、鹿島市が応えたのです。

現職の桑原鹿島市長をはじめとする鹿島市の関係者の皆さんは、身近な自然の代表である干潟、そしてその干潟を育む山や川を、一つのつながった自然として保全し、未来の子どもたちに安心して手渡してゆける、ふるさとづくりを目指しています。
そして、市としての政策を進めると同時に、環境教育などの普及活動にも力を入れ、その代表的な景観として、国際的にも重要なシギ・チドリ類の生息地である、新籠海岸の干潟を保全し、また活用しています。

延期になった式典をもう一度!

今回の鹿島市で行なわれた記念式典は、本来の5周年目にあたる、2007年に企画されたもので、翌日に海の日をひかえた、2007年7月15日に執り行なわれる予定でした。
この時には、記念シンポジウム「鹿島の海の生きものたち」や、WWFジャパンが支援する地元の多良岳~有明海の水環境保護団体「水の会」が主催する第2回「ふるさとの海メッセージコンクール」の授賞式も同時に開催する予定でしたが、残念ながら大型台風の直撃により、延期が決定。

そこで鹿島市では、せっかくなら新籠海岸のある北鹿島地区に、シギ・チドリが飛来する季節を選んで、自然観察会をしながら式典をやり直そうと、新たに企画が練り直され、今回、2008年3月にあらためて、北鹿島ふれあい祭りの特別企画として開催することになりました。

参加5周年記念式典が行なわれたのは、北鹿島小学校の体育館。当日、3月1日の土曜日夕刻に、桑原市長による主催者挨拶で幕をあけました。
市長は、1万キロもの距離を旅する渡り鳥の「民宿」として、新籠の干潟が非常に高い価値を持っていることを、あらためて紹介。「民宿」という言葉に、ホテルのような見た目のいいねぐらではなく、気さくにおいしい食事が楽しめる逗留場所として、鳥たちに繰り返し訪れてほしい、という希望をこめられました。
また市長は、このことが、干潟を残そうとする鹿島の人たちの心の温かさにも通じるものであり、海と末永く共存していく鍵にもなるとして、挨拶を締めくくられました。

続いて、シギ・チドリネットワークの日本事務局であるWWFジャパンから、ネットワークの歴史や、参加の意義、新籠の海岸がもつ、国際的な価値について紹介しました。また近年は、欧米の自然保護の中でも、「使いながら守る」という日本人が昔から実践してきた持続可能な自然資源の利用が注目を集めていること、鹿島市の事例もWWFネットワークから"Ecosystem Service Sustainable Community"(生態系貢献型生業活動)のモデルとして取り上げられたことを報告しました。この報告には、多く出席されていた、漁業関係者の方々に、賛同していただけたようでした。

記念講演「『干潟の海の生きものたち』~干潟の保全と持続的漁業を願って~」

その後、市長から感謝状が贈られた後、記念講演会が始まりました。
講師は長崎大学名誉教授の田北徹博士。タイトルは「『干潟の海の生きものたち』~干潟の保全と持続的漁業を願って~」です。
この講演会には地元の、特に漁業に携わる中高年の方を中心に、30名ほどが参加されました。

1時間半ほどのお話の中で、田北博士は、鹿島の干潟でムツゴロウの研究を始められたこと、そして、ムツゴロウが干潟にどんな影響を与えているか、という生態系のつながりを解明していったこと、また、昔は漁業などの人間活動も、このつながりの一部として機能していたことを、豊富な写真と丁寧な説明で、わかりやすくお話ししてくださいました。

最後には、諫早湾の締め切り問題に触れ、「有明異変」との因果関係ははっきりしており、すぐさま開門すべきであること、「再生事業」と称して、湾のそこここで小手先の手当てをしても、本当の自然のバランスが回復するとは思われず、むしろ長期的には更なる悪影響を及ぼす可能性すらあることを、厳しい調子で指摘されました。

ふれあい祭りでの観察会

翌日の3月2日には、同じ北鹿島小学校で「ふれあい祭り」が開催され、地域の皆さんによるさまざまな出展でにぎわいました。

このイベントの一環として、鹿島市はシギ・チドリのバードウォッチングを含めた、自然観察会を企画。北鹿島小学校の2・3年生の生徒たちが、仕立てたバスで10分ほどの場所にある、新籠海岸へ出かけました。

子どもたちには、WWFジャパンがPanasonicの支援を受けて製作したシギ・チドリ観察用の下敷きと、鹿島市が準備した双眼鏡が配られ、また海岸の堤防にはずらりと望遠鏡がセットされて、準備は万端。この日は天候にも恵まれ、そろそろ北へ旅立ち始めたチュウシャクシギやズグロカモメなどの渡り鳥を、観察することができました。

最初は名前を知らない鳥や、広がる干潟を前に戸惑っていた子どもたちも、すぐに手にあまるような双眼鏡をぶら下げたまま、堤防を自由に動き回り、あちこちに置かれた望遠鏡をのぞき比べては、識別用の鳥の絵が描かれた下敷きとにらめっこ。

さらに、干潟にすむエビや魚などの動物を観察するため、これらの動物を入れて準備していた水槽を前に、子どもたちは、夢中で生きものたちを手づかみに。やがて、指導員の方の説明もそこそこに、干潟のそばにある、3m×2mに切られたこの潮だまりを、棒でかき回し始め、何かを見つけ出しては歓声を上げていました。

やがて、おそろいの制服に、なかなか落ちない干潟の泥を、点々つけた子たちが続出。予想される保護者の方々のぼやきをよそに、実際に手で触れることで生きものの存在を実感していました。

鹿島市では、このような一連の活動の中で、さまざまな行事や企画に取り組んでいます。
WWFジャパンとも協力しながら実施している、「ふるさとの海」子ども交流隊では、「ふるさとの海メッセージコンクール」の最優秀賞に選ばれた子供たちが、沖縄県石垣島の「しらほ子どもクラブ」と相互に訪問しあう交流活動を実施。2008年にも、3月28日から31日にかけて、鹿島の10名の子どもたちが石垣島の白保を訪れました。
WWFジャパンは、この鹿島や白保で、今後も地域の人たちが主体となった、身近な海の環境保全活動を支援していきます。


事業が完了しても問題は続く!諫早の海を取り戻そう(2007年11月20日)

2007年11月20日、国営諫早湾土地改良事業完工記念式典が開催されました。1997年の潮受け堤防による浅海域の閉め切に対し、WWFジャパンや国内の多くの自然保護団体が、この事業に疑問を呈し、見直しを訴え続けてきました。この度の完工式典にあたり、WWFジャパン、日本野鳥の会、日本自然保護協会の3団体は共同声明を発表。事業によって深刻な影響を受けている、諫早湾と有明海の自然を取り戻す政策の実現を訴えました。

失われた日本一の海

かつて、九州・有明海の諫早湾は、「有明海の子宮」とまで称された、豊かな漁場であると同時に、国内最大の渡り鳥の飛来地として、その名を知られていました。
しかし、1986年に国営諫早湾土地改良事業が開始されて以来、その環境は変化を余儀なくされ、1997年には、海は建設された潮受け堤防によって、諫早湾の最奥部に位置する約3,500ヘクタールが、閉め切られました。

この結果、日本最大の規模と豊かさを誇った諫早干潟の生態系は消滅。豊かな水産資源でもあった貝類などの底生動物は死に絶え、万を数えた渡り鳥たちは姿を消しました。
さらに、潮受け堤防周辺では、赤潮などの発生頻度が増加、規模も拡大するなど被害が多発。干拓事業によって引き起こされた、有明海全体の潮流変化も、自然環境や漁業に深刻な影響を及ぼしています。

諫早干潟と有明海の再生を目指して

未来に引き継ぐべき、計り知れない価値をもった豊かな海を、数千億円もの税金をつぎ込んでつぶし、得たものは何だったのか。国も、県も、農水省も、明確といえる答えを出してはいません。

この諫早湾の問題を解決し、豊かな自然を取り戻せるかどうかは、今の日本の環境行政、自然保護政策の真価を問う、大きな試金石に他なりません。

WWFジャパンなど国内の多くの自然保護団体は、1990年代からこの事業に疑問を呈し、潮受け堤防の水門開放と撤去を長年訴え続けてきました。
今回、潮受け堤防の完工式典を区切りに、国による事業は終了したことになりますが、諫早湾と有明海の自然と漁場が受けたダメージは今後も続きます。
WWFを含めた自然保護団体は、11月20日、諫早湾の豊かな自然を取り戻す政策の実現を求め、共同声明を発表しました。


共同声明 2007年11月20日

有明海および諫早湾の自然と漁場の再生を求める:土地改良事業完工式典に際して

WWFジャパン・(財)日本野鳥の会・(財)日本自然保護協会

2007年11月20日に、国営諫早湾土地改良事業完工記念式典が行われる。
この干拓事業は1986年に事業着手され、1997年には潮受け堤防によって、3,550ヘクタールの浅海域が閉め切られた。その結果、日本最大の諫早干 潟と底生動物、渡り鳥など多くの野生生物が姿を消し、有明海の潮流・潮汐が弱まり、赤潮や貧酸素水塊の発生規模が大きくなり頻度も高まった。このような環 境悪化により、有明海の漁業が重大な悪影響を受けている。環境悪化と干拓事業の因果関係は、多くの研究論文等で指摘されているにも関わらず、有明海・八代 海総合評価委員会ではそれを踏まえた検討がなされずにきた。

土地改良事業が終わり、完工式典を催しても、潮受け堤防が海水の導入を阻んでい る限り、富栄養化した調整池からの排水は、諫早湾、有明海を汚し続け、自然環境と漁場に悪影響をおよぼし続ける。今後、水質の悪化した調整池は、長崎県や 諫早市にとって、大きな負の遺産になるであろう。それは、八郎湖や児島湖などの干拓事業の前例に照らしても明らかである。

有明海、諫早湾 は、広大な干潟と多様性に富む生物相を有し、宝の海と呼ばれるほどの豊かな漁場であった。今でも多くの漁業者が苦しみながらも漁を営み生計を立てている。 渡り鳥が群れ飛ぶ干潟や魚湧く豊かな海を取りもどすためには、潮受け堤防の水門を開放し、海水を導入することが不可欠である。海水導入によって調整池の水 質は改善され、潮流・潮汐の回復も見込まれ、干潟の再生も可能となる。

今月末には閣議決定される「第三次生物多様性国家戦略」では、平成24年までに藻場・干潟の保全・再生の整備を5千ha実施することが具体的施策であげられているにも関わらず、干拓事業が見直されないことは国策上も大きな矛盾である。

私たちは、宝の海を取りもどすために、潮受け堤防の水門を開放し、将来には撤去も含め、諫早干潟と有明海を再生するための政策が実現されることを求める。


諫早湾閉め切りから10年 堤防撤去と干潟再生を求めて(2007年4月14日)

4月14日。1997年のこの日、九州有明海の諫早湾では、干拓事業のため建設された潮受け堤防によって、広大な干潟を含む、約3,500ヘクタールの海が閉め切られました。わずか45秒の間に海に落とされた、293枚の鉄板「ギロチン」の映像が全国の人々に衝撃を与えました。以来、日本の自然保護団体は、この日を「干潟・湿地を守る日」とし、諫早湾の再生と全国の湿地保全を強く訴える取り組みを続けています。

1997年4月14日の「ギロチン」

国内最大級の渡り鳥の飛来地であり、豊かな漁場であった、九州・有明海の諫早湾。1997年4月14日、この日、この諫早湾の最奥部約3,500ヘクタールが、長大な潮受け堤防によって閉め切られました。「ギロチン」と呼ばれた鉄板によって、豊かな海だった諫早湾の最奥部は、潮の流れを断ち切られてしまったのです。

事業そのものの必要性に対する疑問や、見直しを求める多くの声があったにもかかわらず、強行された湾の閉め切りによって、潮の満干が途絶えた干潟では、干陸化が進行。湾内の調整池は、淡水化と汚染が進み、多様な命のいとなみを支え、豊富な漁業資源をもたらしてきた、かつての自然は、崩壊に追い込まれることになりました。

かつて、諫早湾をはじめとする有明海沿岸の干潟では、アサリやムツゴロウが獲れ、沖では貝類のタイラギが、漁船を使った漁ではカレイ類やクチゾコ、クルマエビなどが大量に漁獲されてきました。
また、ヤマトオサガニやシオマネキなどのカニ類、カキやハイガイなどの貝類、ムツゴロウやトビハゼなどの魚類、シギ・チドリ類やズグロカモメなどの渡り鳥、そして塩生植物のシチメンソウの国内最大の大群落など、生態系の多様さも、国内屈指の豊かさを誇っていました。

しかし、日本が世界に誇ることの出来た景観は、干拓工事により、これらのすべてが、姿を消してしまうことになったのです。

始まった有明海異変

今も、この干拓事業は、閉め切られた湾内のみならず、有明海全体の自然や漁業に、「有明海異変」と呼ばれる、深刻な悪影響を及ぼし続けています。

これは、堤防の閉め切りが引き起こした有明海全体の潮の流れの弱まりや、湾内の調整池から定期的に輩出されている汚水などが、大規模な赤潮や貧酸素水(青潮)の発生頻度を高めたことが、主な原因と考えられています。

有明海の海面漁獲量(魚類、貝類、海藻類、水産動物)は、潮受け堤防が着工される前は、約6万トンでしたが、工事が開始され、堤防が閉め切られた後は、2万トンにまで減少。2000年度にはノリの大凶作が起こり、社会的な大問題になりました。その後、ノリ養殖は全体としては回復傾向にあるようですが、海域によっては不作で不安定なところも残されています。

何のための事業なのか?

さらに、1986年に事業が開始された当初から問われ続けてきた、事業そのものの採算性や意義についても、明確な答えは出されていません。

事業を推進している農林水産省は、この事業の目的を「防災」としていますが、その効果については疑問の声が絶えません。
そもそも、湾を閉め切った潮受け堤防は、高潮を防ぐことには役立つかもしれませんが、湾周辺の低平地(ゼロメートル地帯)で、過去にもたびたび起きてきた、雨や川の増水による湛水を防ぐことはできません。国土交通省ではなく、なぜ農水省が水害対策のための公共事業を行なっているのかも、不明確なままです。

また、使われている税金の問題もあります。この、国営諫早湾干拓事業では、投入される予算が増え続け、総工費2,533億円の規模にまで膨らみました。しかも、これによって、湾内に造成されたのは816ヘクタールの農地に過ぎず、そこから生産される農作物の生産額も、年額で45億円程度と見込まれています。

戦後、国内で米の増産が必要とされていた時代、有明海沿岸では、拡大される干拓地が、広大な水田として利用されてきました。しかし、減反政策が導入されて以降は、干拓地でも多くの場所が転作を余儀なくされ、場所によっては飛行場や廃棄物処分場に使われているのが現状です。

干拓事業の費用対効果は、農水省の計算では0.83。諫早干潟緊急救済本部などの民間団体が行なった試算では0.19でした。ともに、費用対効果が対等とされる1の数値を下回っています。
もはや、干拓農地が新たに必要とされない時代にあって、巨額の税金を投入して続けられている諫早干拓は、明らかに無駄な公共事業です。

未来への「水門」を開け!

湾が閉め切られてから10年。その間、続けられてきた堤防の補強や、干拓地の整備などにより、干拓工事は今、ほぼ終了間近といわれる段階にきています。

しかし、有明海の環境問題や漁業被害は何も解決していません。事業の見直しと、堤防の水門の開放、そして干潟の再生を求める、暮らしの全てをかけて戦っている地元の漁民の方々や、自然保護団体、有明海異変と諫早湾干拓事業の因果関係を追求してきた研究者の声は、今も途切れることなく発せられています。

農林水産省は、諫早湾干拓事業による悪影響を今も認めようとせず、福岡高裁と公害等調整委員会(原因裁定)は、その見解を支持する形で、漁民の訴えを退けました。
この諫早の問題は、一つの重大な自然破壊であるだけでなく、無駄な事業を止められず、地域の暮らしを崩壊に追い込む、展望を欠いた今の日本の政治の問題でもあるのです。

1990年代の初頭から、諫早湾干潟の保全活動を展開してきたWWFジャパンは、諫早湾干拓事業による、潮受け堤防の閉め切りから10年目にあたるこの日、諫早湾および有明海の豊かな自然環境と漁業資源を取りもどすため、中長期にわたって堤防の水門を開放し、環境への影響を調査すべきこと、そして、堤防撤去と干潟再生を視野に入れた政策の実施を求める声明を発表しました。

諫早の問題は、まだ終わっていません。WWFはこれからも、諫早干潟緊急救済本部・東京事務所、有明海漁民・市民ネットワークなどと共に、諫早干潟の再生と漁業の回復を求め、活動を続けていきます。

4月14日は「干潟・湿地を守る日」

諫早干潟緊急救済本部・東京事務所、を中心とした、日本湿地ネットワーク(JAWAN)、WWFなど国内の自然保護団体は、諫早湾が閉め切られた4月14日を「干潟・湿地を守る日」と定め、毎年全国的な湿地保護キャンペーンを展開してきました。
諫早を忘れず、日本の湿地の保全を考える「干潟・湿地を守る日 2007」。お近くで開催されているイベントがございましたら、ぜひご参加ください。

  • ▼イベントは終了いたしました

記者発表資料 および声明文  2007年4月14日

WWFジャパン、声明を発表 諫早湾干拓潮受け堤防閉め切り10年目にあたって

4月14日。10年前のこの日、国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防閉め切りによって、約3,000ヘクタールの諫早干潟が消滅しました。わずか45秒の間に293枚の鉄板を干潟に打ち込む映像は人々に衝撃を与えました。また、関係団体では、4月14日を「干潟・湿地を守る日」としています。

10年目の4月14日にあたり、WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)は、諫早湾および有明海の豊かな自然環境と漁業資源を取りもどすために、

  1. 中長期水門開放調査を実施し、
  2. 堤防撤去と干潟再生を視野に入れて政策を変更すべきである

と強く主張します。


声明文

諫早湾干拓潮受け堤防閉め切り10年目にあたって

 諫早湾干拓事業の潮受け堤防閉め切りから10年目にあたり、WWFジャパンは、諫早湾および有明海の豊かな自然環境と漁業資源を取りもどすために、中長期水門開放調査を実施し、堤防撤去と干潟再生を視野に入れて政策を変更すべきであると主張する。

10年前の1997年4月14日、国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防閉め切りによって、約3,000ヘクタールの諫早干潟が消滅した。わずか45秒の間に293枚の鉄板を干潟に打ち込む映像は人々に衝撃を与え、自然破壊、生命軽視、無駄な公共事業など多くの批判が寄せられた。現在、干拓工事はやがて終了する段階まできているが、環境問題や漁業被害はむしろ拡大しつつある。干拓事業の悪影響は、諫早湾内のみならず有明海にも広がり「有明海異変」は今も続いている。

諫早干潟はかつて日本最大級の面積で、干潟にはヤマトオサガニやシオマネキなどのカニ類、カキやハイガイなどの貝類、ムツゴロウやトビハゼなどの魚類が無数に生息していた。渡り鳥の数も多く、シギ・チドリ類やズグロカモメの渡来数は日本最大であり、塩生植物のシチメンソウの大群落も国内最大であった。これらは干拓工事によりすべて姿を消した。

堤防閉め切りによって堤防内部の調整池の水質が悪化し、汚水は諫早湾、有明海に排出され続けている。また、干拓工事や湾奥部3,550ヘクタールの閉め切りにより、有明海全体の潮流・潮汐が弱まり、赤潮や貧酸素水の発生規模が大きくなり頻度も高まったと考えられている。このような環境悪化により、有明海の漁業が重大な悪影響を受けている。有明海の海面漁獲量(魚類、貝類、海藻類、水産動物)は、工事前には約6万トンあったが、工事が開始され堤防が閉め切られた後に2万トンにまで減少した。2000年度にはノリの大凶作があり社会的な大問題になった。その後、ノリ栽培は全体としては回復しているように見えるが、海域によっては不作で不安定である。

1986年に開始された干拓事業は、総工費2,533億円である。しかし、これによって造成されたのは816ヘクタールの農地で、農作物の粗生産額はわずか年額45億円の見込みである。潮受け堤防は、高潮には役に立つが低平地の湛水には効果が期待できない。干拓事業の費用対効果は農水省計算では0.83、民間団体では0.19と計算され、ともに1以下である。これでは明らかに無駄な公共事業である。

有明海沿岸では、米の増産が必要だった時代の干拓地は、大部分が転作を余儀なくされ、場所によっては飛行場や競艇場、廃棄物処分場に使われている。もはや干拓農地が必要な時代ではないのである。諫早湾および有明海の沿岸では、干潟でアサリやムツゴロウ、沖でタイラギ、漁船でカレイ類やクチゾコ、クルマエビが大漁に採れ、ノリ養殖が持続的に行われるなど、漁業を盛んにし安定した漁獲高が得られるようにすることが地域振興につながるのである。

農林水産省は、有明海異変と諫早湾干拓事業の因果関係を認めず、福岡高裁および公害等調整委員会(原因裁定)は、因果関係証明のハードルを高くして漁民の訴えを退けた。しかし、真摯な研究者たちによって因果関係は証明されつつある。農水省は、自ら設置したノリ第三者委員会の提言である水門の中長期開門調査を実施し、干拓事業と潮流・潮汐の減少、漁業不振の因果関係を調べ直すべきである。さらに、堤防の撤去と諫早干潟の再生を視野に入れて政策を変更すべきである。

WWFジャパンは、諫早干潟を舞台に1992年に「ラムサールの集い」、1995年に「東アジア渡り鳥ルートツァー」を開催し、1997年には会員の大きな支援を受けて「水門開放キャンペーン」を実施している。諫早湾・有明海の環境問題は本会の重要な活動テーマであり、諫早干潟緊急救済本部・東京事務所、有明海漁民・市民ネットワークなどと共同で活動してきた。今後も、諫早干潟の再生と漁業生産の回復を求めて活動を継続していく方針である。


「有明海異変」を問う! 市民版「諫早干拓時のアセス」(2006年6月16日)

日本で最も豊かな干潟といわれた、九州有明海の諫早(いさはや)湾干潟。ここが、大規模干拓事業によって失われてから9年が経ちます。しかし、今も事業は終わらず、有明海ではその影響による異変が続いています。諫早問題に取り組む市民団体は6月、事業を独自に再評価した、市民版「時のアセス」を発行。閉め切った湾の開放を改めて求めました。

「有明海異変」

九州・有明海の諫早湾。かつて、ここには、日本で最も豊かな干潟が広がっていました。この諫早湾の最奥部およそ3000ヘクタールを干拓する、国営諫早湾干拓事業が開始されてから20年。実際に潮受け堤防が湾を閉め切る瞬間の「ギロチン」の映像から、9年が経ちます。

かつては、豊かな海の恵みをもたらす漁場であり、日本最大の渡り鳥の飛来地でもあった諫早湾干潟は失われ、現在乾陸化が進み、土地の造成が行なわれています。しかし、明らかに価値の低い干拓農地の造成と、効果が不明な防災という干拓事業の目的が、巨額の税金を投じ、海をつぶしてまで得るべきものであったのか、今も答えは出ていません。

その一方で、1997年の諫早湾の閉め切り以降、有明海では、全域におよぶ深刻な漁業被害が起こりました。「干拓工事の影響は諫早湾の近傍に留まる」という、事前の環境アセスメント(環境影響評価)の結論とはまったく異なり、漁船漁業や、潜水器を使った漁業、採貝、ノリ養殖など、多岐にわたる問題が続発。「有明海異変」と呼ばれる、大規模な環境破壊が引き起こされたのです。

国内の漁民団体や、市民団体、環境NGOなどは、干拓事業による有明海全体の潮流の変化と、閉め切った諫早湾内の調整池で富栄養化した淡水を、定期的に有明海に排水していることが、「異変」の大きな原因であることを指摘し続けてきました。しかし現在までのところ、農水省はその見解を認めようとしていません。

6400億円の赤字事業

予定通りに事業が進まず、長い年月が経過しても工事が完成しないことから、諫早湾干拓事業は、農水省の「国営土地改良事業等再評価実施要領」に基づいて、このほど再評価されることになりました。今回の再評価は、2001年に続く2回目の再評価となります。

しかし、農水省による再評価は、「官」による限定的、かつ閉鎖的な再評価であることから、有明海の回復と保全を求める「有明海漁民・市民ネットワーク」および「諫早干潟緊急救済東京事務所」では、市民、漁民、研究者、弁護士による「民」の立場で、事業の再評価を実施。その結果を、『市民による諫早干拓「時のアセス」2006-水門開放を求めて-』にまとめ、6月に発行しました。

この市民版「時のアセス」では、まず諫早湾干拓事業そのものの費用対効果が、0.19にしかならない欠陥公共事業であること(費用対効果は、通常1.0以上でなければ採算が取れない)を指摘。さらに、その結果発生する赤字が、6400億円にのぼることを示しています。

また、汚水を吐き出しつづけている、閉め切った湾内の調整池の水質を改善し、諫早湾および有明海で発生している赤潮と貧酸素水(青潮の原因となる)を抑えるためには、潮受け堤防の水門を開放し、湾内にもう一度、海水を入れることが不可欠であることを示しました。
これは、海水を湾内に入れ、干潟を再生することで、その干潟が持つ浄化能力を使った水質の向上をめざすものです。

干潟を再生し、豊かな海をもう一度!

ゴカイやカニ、貝などの多くの小さな生物が生きる干潟は、富栄養化の原因となる養分を取り込むことで、水を浄化する力を持っています。また、これらの干潟の生きものは、魚や鳥などの食物となるだけでなく、豊富な漁業資源を育む、海の最も重要な基盤でもあります。
閉め切られた湾に海水を入れ、かつて「有明海の子宮」とまでいわれた諫早湾干潟を再生することは、有明海を救う唯一の方法に他なりません。

地元の漁民や市民団体、WWFなどの環境諸団体は、これまでにも、中・長期的に堤防の水門を開き、海水を湾内に入れて、環境の変化を調査すべきである、ということを再三にわたって農水省に求めてきました。
今回の市民版「時のアセス」は、事業に実質的な変更を迫る、法的な力を持つものではありませんが、ここでなされた提言が、諫早干拓の今後を決める農水省の「再評価第三者委員会」によい影響をおよぼし、有明海異変の解決への糸口となること、そして、諫早湾の中・長期開門調査が実施されることが期待されます。

『市民による諫早干拓「時のアセス」2006-水門開放を求めて-』の内容は、こちらのサイトからご覧いただけます。

いさはやひがたネット
諫早干潟緊急救済東京事務所のサイト

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは世界約100か国で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP