地中海のクロマグロ資源、ついに好転の兆し


大西洋マグロ類保存委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)は、2012年10月の会合で、東部大西洋および地中海のクロマグロ資源が、回復の兆しを見せているという、科学的評価を発表しました。WWFはこれを朗報と受け止めると共に、回復の傾向を確実なものとするために、現行の資源管理の取り組みを、数年の間は続ける必要があることを、求めていきます。

危機に瀕する地中海のクロマグロ資源

大西洋マグロ類保存委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)は、2012年10月の会合で、東部大西洋および地中海のクロマグロ(本まぐろ)の資源状況について、回復の兆しを見せているという、最近の科学的評価を発表しました。

何千年も続いてきた地中海のクロマグロ漁業は、20世紀の最後の10年間に、急激な変化を見せました。以前は行なわれていなかった、天然マグロの畜養(天然の若いマグロを獲り、いけすで飼育して太らせる養殖の手法)が、新たに行なわれるようになったのです。

これが規制されることなく急速に広がったため、地中海ではクロマグロ資源の過剰な漁獲のサイクルが生じることになりました。

大型マグロ類に対する需要の増大も追い風となり、大規模な巻き網漁船団がマグロ漁を展開。クロマグロが繁殖のために集まる地中海のほとんどすべての海域で、この巻き網漁船団による操業が広がったのです。

この結果、地中海のクロマグロは資源枯渇の危機に陥りました。

同海域でのマグロ資源の管理に取り組む国際機関のICCAT(大西洋マグロ類保存委員会)では、その漁獲量の制限や、資源管理の在り方を議論してきましたが、各国による合意はなかなか実現せず、交渉も難航していました。

ICCATの諮問委員会である科学委員会が、繰り返し行なってきた警告の通り、資源の減少は年々深刻になっていました。そして、総漁獲可能量(TAC)など現在の管理措置が、2010年の特別会合で合意されたのです。

クロマグロ(Thunnus orientalis)「本まぐろ」の名で知られる。最高級のマグロとして人気がある。

世界の海のマグロ類の資源管理にかかわる国際機関。海域や魚種によって管轄が異なる。
くわしく見る

依然必要とされる管理努力

現在、ICCATでは、加盟各国に対し、クロマグロ資源の管理計画を実施するよう求めており、若齢魚(身体のサイズの小さい若い個体)を獲らないことや、巻き網漁船の漁期を年間で1カ月間だけとすること、TAC(総漁獲可能量)を12,900トンとすることなどを、管理措置として導入しています。

漁業管理の改善によって、クロマグロ資源に回復の兆しが初めて、見られたことは、疑いのない事実です。しかし、回復の傾向が、時間とともにどのように進むのかは、今後も見守る必要があります。
地中海では、過剰漁獲や規制の抜け穴による、違法なクロマグロ漁への懸念が、依然として存在しており、国際取引に基づくいくつかの研究も、実際の漁獲量が報告された漁獲量の2倍以上ある可能性を示しています。

長年、成功を見てこなかった地中海でのクロマグロの漁業管理が、短期間の改善で成功すると考えるのは、楽観にすぎます。管理努力を維持し、回復の傾向を、さらに確かなものとしてゆかねばなりません。

この朗報を呈した、ICCATの科学者たちも、最近のクロマグロの資源評価が、高い不確実性を伴っていることを警告しており、今回確認された回復傾向の速度や程度についても、十分な知見がないことを認めています。

科学者たちは、ICCATに対して、今後数年は、年間の総漁獲可能量(TAC)を12,900トンとすることを含む、現行の管理規則を継続するよう求めています。

大きな転機が訪れた

 それでも、今回初めて資源状況に回復の兆しが見られたことは、地中海のクロマグロにとって大きな転機が訪れたといってよいでしょう。

WWF地中海プログラムオフィス水産プログラム代表のセルジ・トゥデラは、次のように言っています。

「私たちは、最初にクロマグロの資源問題について警告し、2001年以来、クロマグロ個体群を崩壊させないように、持続可能な漁業活動を実現するため、国際的な取り組みを続けてきました。

12年にわたりクロマグロの問題に取り組み、キャンペーンを展開してきたWWFにとって、ついに回復の兆しがみられたことは朗報といえます。これは、ほんの数年前には思いもよらなかったことです」

WWFは、モロッコのアガーディールで2012年11月12~19日に開催される、2012年のICCAT年次総会に出席する各国の政府代表に対し、科学的勧告に厳密に従うこと、すなわち少なくとも今後3年間は、現在の管理措置と漁獲の割当量を維持することを、強く求めることにしています。

これは、科学委員会が指摘している通り、地中海のクロマグロの資源量を今後数年のうちに、持続可能なレベルに十分に回復させる上で、必須の取り組みといえます。

大きな成果が得られるまでには長い時間がかかりますが、失うのはほんの一瞬です。

WWFはこれからも、海の生態系、地域の漁業、そして消費者のために、東部大西洋と地中海のクロマグロ漁業が、持続可能な管理のもとに行なわれることを目指しています。

 

関連情報

 

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは世界約100か国で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP