どうする?増えすぎたマグロ漁船:2013年 WCPFC会合


2013年12月2日~6日、オーストラリアのケアンズで、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の年次会合が開催されます。主な議題は、日本が世界で最も多く消費している太平洋クロマグロや、資源の減少が著しいメバチなどの資源管理。とりわけ、過去に例を見ないほど増加してしまった、各国のマグロ漁船の数をどうするかが、焦点となります。枯渇が懸念される太平洋のマグロ資源。その未来を決めるといっても過言ではない、会議の行方が注目されます。

増加の一途をたどる中西部太平洋のマグロ漁船

アジアからオーストラリア地域の沿岸を含む、中西部太平洋海域では今、クロマグロ(本まぐろ)やメバチといった、マグロ類の危機が指摘されています。

各国による過剰なマグロ漁業が、資源の枯渇を招くと同時に、マグロを含めた海の生物多様性と、その恵みに依存して生きる人々の暮らしを脅かしているのです。

WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)は、この海域でマグロ漁業にかかわる国々が加盟している国際機関で、資源問題や、漁業管理の在り方を話し合うための場として、毎年会合を開いてきました。

その第10回目の年次会合が、2013年12月2日~6日、オーストラリアのケアンズで開催されています。

今回の会合で、最も注目されるのは、中西部太平洋海域で操業中と建造中をあわせて、過去最大の数にまで増えたマグロ漁船の増加です。

WCPFCでは、過去に幾度も漁船の数を適正な数に削減するよう、加盟各国に対し幾度も呼びかけてきましたが、その数は増加の一途をたどってきました。

このままでは、マグロ類の過剰な漁獲はさらにひどい状態になり、資源崩壊が急速に進むおそれがあります。

世界の海のマグロ類の資源管理にかかわる国際機関。海域や魚種によって管轄が異なる。
くわしく見る

中西部太平洋の「持続可能な漁業」を確立するために

WCPFCは、マグロ類の「持続可能な漁業」、つまり、資源を守りながら継続してゆくための漁業を実現するための国際機関であり、各国が集まる会合は、その具体的な手段を話し合うための貴重な場です。

実際、WCPFCは適切なマグロ類の資源管理を担う機会として、大きな期待がかけられていました。

しかし、現在のところ、目先の経済的な利益を優先し、先を考えないマグロ類の漁獲を許すような決定がつづき、中西部太平洋のマグロ資源と漁業は、危機にさらされています。

WCPFCの科学委員会や順守委員会などが、加盟各国に勧告してきた、持続可能なマグロ漁を実現する上で必要な、漁獲枠の設定や、漁業管理の在り方は、まだ十分な形を成していないのが現状です。

また、こうした非持続可能な漁業は、中西部太平洋において、メバチなどのマグロ類のみならず、ヨゴレ、クロトガリザメのようなサメ類をはじめ、いくつかの漁業資源も、危険な状態に追いやっています。

WCPFCは、この海域での持続可能な漁業の牽引役としても、マグロ資源の維持回復と、そのための確実な管理方針、調査、そして、南太平洋を含めた沿岸の社会への支援に取り組む必要があります。

日本をはじめとするWCPFCの加盟各国は、実効性のある資源管理の措置を採択し、それを導入できるのか。今回の会合のゆくえは、太平洋の海の恵みの未来にも大きくかかわっています。


WWFが今回のWCPFC会合で求めている要点

管理基準値

  • WCPFCが管理するすべての魚種について、適切な管理が行なわれるよう、限界/目標管理基準値を設定すること
  • WCPFCが管理するすべての魚種について、親魚資源量に基づく、予防的な限界管理基準値を採択すること
  • WCPFCが管理するすべての魚種について、資源の漁獲率をコントロールするための試みとして、漁獲圧に基づく、補助・予防的な限界管理基準値を採択すること
  • 予防的措置として、限界管理基準値に達するリスクを10%以下となるようにすること

熱帯マグロ(メバチ・キハダ・カツオ)

  • 人工集魚装置(FADs)についての追加の調査・モニタリングを実施すること
  • 有意義なメバチマグロ保全達成のため、科学に基づく・透明性の高い・開かれた議論を行なうことによって、メバチマグロの漁獲量削減レベルを決定すること

太平洋クロマグロ

  • 太平洋クロマグロの長期的な回復計画、限界/目標管理基準値および漁獲管理方策を採用すること。これらは、明確かつ事前に合意されている必要があり、採用には資源状態を表す指標(管理基準値に基づいて算出されたもの)の変化に応じて、管理行動で規定された一連の行動を行なう義務が伴います。
  • 現行のCMM-2012-06からすべての適用除外を削除すること。

サメ

  • サメに関する包括的な保全管理措置を策定、採択すること
  • ヨシキリザメ、クロトガリザメを含めた非漁業対象種の管理基準値の策定の推進
  • ヨゴレに対して導入された措置と同様に、クロトガリザメについても、資源状態を改善させるため、現行の措置に加えて追加的な影響緩和措置を課すこと

地域監視プログラム(ROP)

  • 拘束力と一貫性のある、強固なROP基準の更なる実施
  • さまざまな資金調達モデルの分析を含めた、適切な管理という観点での監視プログラムの費用対効果分析の展開
  • APO(Association for Professional Observes:専門監視員協会)が推奨するOBR(Observer Bill of Rights:監視員の権利に関する宣言)と関連する文書の保証もしくは採用を評価し検討すること

漁獲証明制度(CDS)

  • 以下の要素を含む確固としたCDSの検討すること
    • すべての漁獲、水揚げ、積み替え、国内取引、輸出、加工、輸入と再輸出に附帯する書類についての要件(電子情報を含む)
    • CDSの効力を最大化するための補足的な手法
      • 海上での積み替えがCDSの効力を落とすことがないようにする
      • ポートステート対策(入港する外国船に対する立ち入り検査)をCDSと同時に採用すること
      • IUUリストに掲載された漁船を持つ主要国に対し貿易規制措置をとること
    • WCPFCで管理されているマグロ類、カジキ類、サメ類のすべてが対象であること
  • CDSの完全性、信頼性、持続可能性を支える以下の要素の導入を検討すること
    • 電子タグやバイオテクノロジーの利用のような証明システムの利点と実行可能性を調査し、CDSの継続的な実施を約束すること
    • 参加国間での費用分担する仕組みづくりのための基金を創設すること
    • 電子機器を用いてデータにアクセスする仕組み

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記者発表資料 2013年12月2日

中西部太平洋における過剰漁獲に終止符を

【オーストラリア・ケアンズ発】12月2~6日まで、オーストラリアで中西部太平洋マグロ類保存委員会(WCPFC)の年次会合が開催される。まぐろ類の過剰漁獲への対策として、効果的な管理措置の採択が期待されるものの、そうならない可能性も強く懸念される。そこでWWF(世界自然保護基金)は、効果的な対策の導入に確実に結びつく行動をWCPFCに求める声明を発表した。

「目先の経済性にとらわれるあまり、中西部太平洋のマグロ漁業をリスクにさらすべきではない。思い切った管理措置をとらなければ、私たちは近い将来、メバチ資源の崩壊を目の当たりにするだろう。そしてそれは、その他の重要なマグロ資源を対象とする漁業にとっても直接的な影響を与えるだろう。」と、WWFの中西部太平洋マグロプログラム担当 アルフレッド・クックは述べている。

過去数年間、WWFは継続してWCPFCに対し、漁船隻数を制限することや、集魚装置(FADs)への依存を低減させることなど、効果的な漁業管理措置を採択するよう求めてきた。しかし、メバチやキハダ、そしてビンナガ資源の減少が急激にすすみつつあるにもかかわらず、WCPFCにおける管理措置の実施状況は不十分であり、進みが遅すぎる。

「我々は非常に落胆している。ほんの数年前まで、WCPFCは、他の海域の管理機関で起きているような一部の限られたや政治的な混乱を乗り越えて、最も新しく、最も成功する地域漁業管理機関になるだろうと、多くの期待が寄せられていたからだ」とアルフレッド・クックは指摘している。

中西部大西洋地域で過剰な漁獲を引き起こしている主な要因は、漁獲の対象となる魚の資源量に対して、遠洋漁船を中心とする漁船数が急激に増加していることである。中西部太平洋における漁船隻数を適正な数に削減するよう何度も呼びかけられてきたにも関わらず、漁船隻数は増加し続け、アジアでは少なくとも新たに45隻の巻き網船が造船されつつある。これがすでに操業している297隻に加われば、歴史的に最も多くの漁船が操業することとなる。この過剰な漁船隻数が、中西部太平洋の持続可能な漁業問題の新たな火種となることは疑う余地がない。

過剰な漁船隻数の問題は、巻き網に限ったことではない。一部の遠洋漁業国が急速に延縄(はえなわ)漁船の隻数を増やしており、ビンナガ漁業でも同様の問題が起きている。ビンナガの資源状態はメバチほど深刻ではないものの、ビンナガ資源もこの10年で減少しつつあり、太平洋の島嶼国では、ビンナガ漁業の経済性を保つのに困難な状況が出てきている。

フィジーの漁業企業の代表であるグラハム・サウスウイックは、WCPFCが失敗すれば、太平洋島嶼国の沿岸・沖合における延縄漁業にとって深刻な影響が及ぶと指摘する。
「我々は、MSC(海洋管理協議会)の漁業認証を取得するなど、責任を持って持続可能なビンナガ漁業を実現しようと、たゆまぬ努力を続けてきた。しかし、アジアの遠洋漁船のかつてない拡大によって崩壊の危機を迎えている。何年にもわたって、WCPFCと、この地域に関係する各国の政府に対し、延縄漁船の過剰隻数問題に対応するよう求めてきた。しかし我々の訴えは届いていないようだ」。サウスウィックをはじめ、この地域でのビンナガ漁師たちは、アジアからの延縄漁船隻数の削減だけではなく、アジア諸国が漁船を建造するために補助金を払っていることについても、この地域の適切な経済競争を阻むものであると指摘している。

しかし、いくつかの良い兆候も確認できる。WWFは、責任ある調達に取り組む多くの水産物バイヤー、漁業者、加工業者、そして貿易関係者と協働しており、WCPFCに対し、人々の暮らしを維持し、環境への影響を最小限に抑えながら、MSC認証を通じて品質の高いマグロ製品を供給できるよう、計画性・実効性を備えるマグロ漁業への改善と保全のイニシアチブを実現するよう求めている。悲観的な見方もあるものの、WWFや市場関係者は、今年WCPFCが中西部太平洋の重要なマグロ資源の保全のために効果的で確実な措置を導入することを望んでいる。

補足:WCPFCとは

<正式名称>
西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約(中西部太平洋まぐろ類条約

<加盟国> (2013年10月23日現在)
豪州,カナダ,中国,クック諸島,ミクロネシア,フィジー,仏,日本,キリバス,韓国,マーシャル,ナウル,ニュージーランド,ニウエ,パプアニューギニア,フィリピン,サモア,ソロモン,トンガ,ツバル,バヌアツ,パラオ,米,EU,台湾

<条約対象魚種>
びんなが,くろまぐろ,めばち,かつお,きはだ,まかじき,めかじき,海洋性さめ等

<年次会合>
2013年12月2日~6日、オーストラリアのケアンズにて開催

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