2013年 WCPFC報告:メバチの効果的な漁業管理の将来に懸念


2013年12月6日、オーストラリアで開かれていたWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の第10回年次総会が閉幕しました。今回の会議では、特に期待されていたメバチの資源管理について十分な合意と採択が、またもや実現せず、中西部太平洋のマグロ資源の未来について、深刻な懸念をのこす結果となりました。

メバチの資源管理は採択されず

日本をはじめとする32のWCPFCの加盟国には、今回の会合で、マグロの一種メバチの資源保護を実現するため、漁業管理のための措置を採択することが期待されていました。

メバチは現在、特に過剰漁獲による資源崩壊の危機が指摘されています。

その主因として、WCPFCの科学者が指摘してきた理由の一つが、無秩序な集魚装置(FADs)の利用です。

メバチの稚魚は、大型まき網船がしばしばカツオを対象に使用するFADsのような浮遊物に寄りつく性質があるため、その過程で多くのメバチが混獲されています。

会議ではそれぞれ2008年と2012年に、このFADsの使用を制限する措置を導入しましたが、各国が行なったこれらの措置は不十分で、過剰漁獲が止まらないのみならず、状況は悪化しているとみられています。

今回の会議でも新たな措置が採択されましたが、内容は不十分で、問題の根本解決にはほとんど貢献しないとみられています。

危機が深刻化する中で、対策を先延ばしにするための時間稼ぎにしかならないこの採択は、科学者による指摘や、漁業管理のための良好なツールがあっても、それを導入しようとしない政治的な姿勢の問題の表れといえます。

日本で多く消費されているマグロの一種、メバチ。
 
 

世界のマグロ資源管理にかかわる国際機関。
海域や魚種によって管轄が異なる。くわしく見る

各国の姿勢に見られる差と海の生態系への懸念

一週間にわたり、一連の議論が進捗を見ないまま続く中、パプアニューギニアの漁業局ディレクターであるシルベスター・ポカジャン氏は次のようなコメントを発表しました。

「ナウル協定(PNA)の調印国や南太平洋フォーラム漁業機関(FFA)のメンバー国は、アジア諸国が我々と共に協働する準備ができていると認識しています。これに対し、EUや米国がメバチの管理措置において歩み寄ることを拒否しました。最終日の結果に我々は非常に失望し、来年も同じ提案と戦い続ける決意をしました」。

また、WWFの持続可能な漁業プログラムのマネージャー(マグロ類)であるババ・クックも、「資源状況が悪化し続ければ、対策のための決断をすることが、より難しくなっていく」と会議の進展に懸念を表明。

また、中西部太平洋のメバチ資源が、複雑な海の生態系の大事な一部であることを強調し、「もし適切な管理がすぐにでも実行されなければ、メバチだけの問題ではなく、この海域の生態系そのものに影響が及ぶ」と訴え、崖っぷちまでマグロを追いつめてしまう前に、対策を実行することが必要であることを、あらためて指摘しました。

今回の会議では他にも、主にビンナガを漁獲対象とする「小型はえ縄船」の数を制限する管理措置についての採択が実現しないなど、将来を見越した意味のある漁業管理措置につながる進展は見られませんでした。

この漁船数の問題は、WCPFCの科学委員会が、「資源の乱獲につながる」と、過去に幾度も削減を勧告してきたにもかかわらず、近年過去最大の数にまで増加し続けています。

問われるWCPFCの意義と役割

今回の会議が終了するにあたり、WWFのババ・クックは、
「多くの加盟国が、漁業の悲惨な状況について発言するにも関わらず、目の前の経済事情や長期的視野の欠如によって、問題を解決するために必要なステップが、この会議ではほとんど踏めなかった」と心痛のコメントを述べました。

WCPFCでは、何らかの提案を採択する際には、参加しているすべての国による全会一致の合意がルールになっています。

1カ国でも管理措置の前進を妨げる国があれば、合意は進まないため、全ての国が協力、一致して、マグロ資源の持続可能な利用を進める意思を持ち、示してゆかねばなりません。

オーストラリアのケアンズで開かれた2013年のWCPFC会議の会場

しかしこのため、いくつかの国が自国の利益にこだわった発言や、合意への不参加を表明すると、会議全体が停滞し、合意が容易にならない事態がしばしば生じます。

各国の代表団がしばしば、他国との意見の調整に身を削って交渉に臨んでも、今回の会議のような実りない結果に終わる例が続く場合は、WCPFCはその会議の進め方、合意の方法についても、新しい方法を検討しなくてはならないのかもしれません。

今回の会議に出席していた、WWFジャパン水産プロジェクトリーダーの山内愛子は、総括として次のように述べます。

「2013年のWCPFC会合では、太平洋クロマグロ(本まぐろ)については、韓国が留保を取り下げるとの動きがあったものの、資源の急激な悪化に対処するための根本的な解決策は、何も定まっていません。

WWFは2014年のWCPFC会議で、今後10年で確実に資源の回復が見込まれるような、実効性ある資源回復計画の採択を求めます。これが実現しなければ、太平洋クロマグロの漁業は、一時禁漁という厳しい選択をとらざるをえなくなるでしょう」。

WWFは今後も、マグロ資源を含めた海の生態系の保全と、その恵みを受けて生きる人々の暮らしを支えるために、WCPFCが長期的視野に立った、実効性のあるマグロの保全管理を採択するよう、働きかけてゆきます。

 

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