2015年合意へ向けた第1歩 国連気候変動ジュネーブ会議(ADP2.8)はじまる


2015年2月8~13日、スイス・ジュネーブにおいて、2015年最初の国連の気候変動に関する会議が開催されます。これは、2015年12月にフランス・パリで開催されるCOP21・COP/MOP11(国連気候変動枠組条約締約国会議第21回会合・京都議定書締約国会議第11回会合)での合意を目指して進められている、地球温暖化に関する2020年以降の新しい国際枠組みをめぐる国際交渉の一環として開かれる会議です。2014年12月にペルー・リマで開催されたCOP20・COP/MOP10の結果を受け、いよいよ、新しい国際枠組みの具体的な中身についての交渉が始まります。地球温暖化への国際的な対応の命運を握る12月の会議へ向けて、交渉を加速化できるかが注目されます。

現在の国連気候変動交渉の流れ

2015年2月8~13日、スイス・ジュネーブにおいて、2015年最初の国連気候変動会議が開催されます。

現在、国連では、気候変動(温暖化)に関する、2020年以降の新規かつ包括的な国際枠組みを作るための国際交渉が続けられています。

その枠組みとは、国際的な地球温暖化対策のルール、目標、支援の仕組み等全体を指しており、2015年12月にフランス・パリで開催されるCOP21・COP/MOP11(国連気候変動枠組条約締約国会議第21回会合・京都議定書締約国会議第11回会合)で合意されることになっているため、2015年合意と呼ばれています。

これまでの国際社会の気候変動に対する取り組みを振り返ると、まず、2008年~2012年を対象とした京都議定書の第1約束期間がありました。

その後、それに続く国際枠組みを作ろうとしましたが、国々の間での対立が激しくうまくいかなかったため、2013年~2020年までは、各国による自主的な温室効果ガスの削減目標を基礎とした体制が中心となってきました(EU等一部の国は2013~2020年も京都議定書の第2約束期間を継続しています)。

そして現在の交渉は、2020年以降の国際的な取り組みを議論の対象としています。その交渉の場として、2011年に南アフリカのダーバンで開催されたCOP17・COP/MOP7での合意に基づき、ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(以降ADPと呼ぶ)が設けられ、その場で交渉が行なわれています。

今回の会議も、そのADPの会合の第2回第8セッションとして開催されるので、ADP2.8と呼ばれます。

ワークストリーム1 2015年までに、2020年から始まる新しい国際枠組みに合意する
ワークストリーム2 2020年までの各国の取り組みの底上げする具体策を検討する

ADPの2つの「ワークストリーム」

ADPには、2つの大きな論点分野があり、それぞれ「ワークストリーム」と呼ばれています。

ワークストリーム1は、2015年12月までに合意する新しい国際枠組みの中身を詰めていく交渉を、ワークストリーム2は、2020年までの各国の取り組みの「底上げ」を議論しています。

ワークストリーム1では、今年の5月に、「交渉テキスト」と呼ばれる、2015年合意の下書きに当たる文書を作成することになっており、今回の会合はその前の最後の公式会合ということになります。

交渉テキストは、名前の通り、その後の交渉の土台となるために作られる文書ですので、そこで中身が決まるわけではありませんが、徐々に中身の議論が本格化していくことは間違いありません。

他方、ワークストリーム2において、なぜ「底上げ」が必要になるかといえば、現在各国が自主的に約束している取り組みでは、あきらかに、「地球温暖化による平均気温上昇を2度未満に抑える」という世界の目標に足りないためです。

2度未満に抑えるために必要な削減量と、約束されている削減量との差(ギャップ)は、2020年時点で80~120億トンにも上ると試算されており、これは、現在のアメリカ1国分の排出量より大きい数字で、国際的な課題として取り組まれています。

ジュネーブ会議の主要論点

今回の会議には、主要な論点として3つがあります。

  • 2015年合意(新しい国際枠組み)の中身
  • 2020年までの取り組みの底上げ
  • 各国が提示する国別目標案への対応

以下では、それぞれの論点について簡単に解説をします。

2015年合意の中身

前述の通り、今回からいよいよ、2015年合意の中身に関する議論が始まります。論点としては、以下のようなことが議論されています
 

  • 国際社会全体で、長期(~2050年/2100年)の目標を掲げるのか?
  • 削減目標などにおいて、「先進国」や「途上国」という区分は残すのか、残さないのか?それに変わる区分/グループ分けのようなことをするのか?
  • 途上国への資金や技術支援は、引き続き先進国だけの義務なのか?それとも、途上国から途上国への支援も奨励していくのか?
  • 新しい国際枠組みで各国が掲げる目標は、5年ごとに見直すのか、それとも10年ごとに見直すのか?それぞれの手続きはどうするのか?
  • 新しい国際枠組みの下で各国が掲げる目標は、守れなかった時の罰則を伴うような厳しいものになるのか、それともより自主的なものに近い性質になるのか?
  • どこまで細かい内容を、議定書などの法的文書に書き、どこまでを少し法的地位の下がるCOP決定に委ねるのか?

ここで列記したのは、議論されている論点のほんの一部で、その他にも多種多様な論点があり、それぞれについて国々の立場が違うため、交渉が大変に複雑化しています。

今回は、2014年12月のCOP20・COP/MOP10までの議論を反映した約40ページの文書を土台に交渉が行われる予定であり、各国の間での立場の違いをどこまで整理していけるが鍵です。

一般的に、先進国としては、途上国側、特に成長著しく排出量の増加も顕著な新興途上国(中国やインドなど)により厳しい温暖化対策をとってもらいたいと考えている一方で、途上国としては、先進国による対策の不十分さを責任転嫁するべきではないと指摘しつつ、より多くの資金的・技術的支援を引き出したいという構図があります。

しかし、最近の交渉は、そうした「先進国対途上国」という2極構造だけではもはや説明できなくなってきており、間を取り持つような国々が徐々に出始めていることが、往々にして膠着状態に陥りがちな交渉において光明となっています。

 

2020年へ向けての削減努力底上げ

2020年に向けた取り組みの底上げについては、2015年も前年に引き続き、COP19の決定を受けて設立された「専門家会合(TEMs)」を中心に議論がされていくものと予想されます。

TEMsは、「ルール」の作成が主である通常の国連での交渉とは違い、具体的な対策のあり方について、各国代表、国際専門機関、専門家、自治体連合・ビジネス団体などからの参加者によって活発な議論が行われる場です。参加者の中でも、政治的な対立で膠着しがちな国連交渉にあって、生産的な議論ができる場として、これまでの会合もおおむね好評でした。

しかし、そこで議論されている議論を、現場での実施に反映させていくことが課題となっており、今年、具体的な成果を生み出すことができるかが注目されます。

この2020年へ向けての削減努力の底上げは、単に、気候変動を抑止するために重要であるだけでなく、途上国の多くが抱えている、「先進国は、これまでの対策の遅れのつけを途上国に押し付けようとしている」という不満を緩和することで、交渉の中で信頼を醸成するという意味でも重要です。

国別目標案への対応

2年前のCOP19において、「準備のある国は」という但し書き付きではあるものの、各国が2015年3月までに国別目標案を提示することを促す決定がされました。この「国別目標案」は、英語では、正式名称の頭文字をとってINDC(Intended Nationally Determined Contributions)と呼ばれます。

これに伴い、いくつかの国々は既に独自に2020年以降の自国の目標を発表し始めています。特に、EU、アメリカ、中国という世界のCO2排出量の約半分を占める国々が2014年の時点で既に目標を発表しており、2015年3月までに正式に国別目標案として国連に提出されることが期待されています。

2014年12月のCOP20では、各国から国別目標案が出された後に、国々の間で、それに対して質問したり、削減目標として充分かつ衡平なものであるかどうかを議論したりする場を設けようという議論がされました。しかし、一部の途上国がこれに強く反発したこともあり、そうした場は公式には設立されませんでした。

しかし、各国が国別目標案を、2015年12月よりずいぶん前に提示する決定がCOP19で合意されたそもそもの理由は、そうした作業をやることが目的であったことを踏まえると、今後、非公式であっても、そうした「国別目標案を議論する場」が出てくる可能性があります。

これは、今回の会議の正式な議題ではありませんが、各国がどのような目標を掲げるかは、言うまでもなく、新しい国際枠組みの中でも中核をなす事項であるため、注目していく必要があります。

WWFの視点:日本がやるべきこと

WWFジャパンは引き続き、世界各国のWWFのオフィスと協力して、新しい国際枠組みが、気候変動による脅威を食い止めるに足る枠組みとなるように、各国政府に働き掛けていきます。

ADPでの交渉は、基本的に、2015年12月までに新しい国際枠組みの合意を目指しつつ、2020年までの取り組みの底上げを図るという流れで来ています。その中で、各国は、いよいよ、新しい枠組みにおいてどのように排出量削減に貢献することができるのかを問われる時期となりました。

2014年10月から11月にかけて、EU、そしてアメリカと中国が、相次いで自国(地域)の排出量削減目標を発表し、国際的な気運が盛り上がりを見せています。まだ、国別目標案の情報要件が定まっていないので、正式な提出にはいたっていませんが、世界のCO2排出量の約半分を占める国々が、すでに2015年合意成立へ向けての強い意志を示していると言えます。

そのような状況下にあって、日本国内ではようやく新しい目標に関する議論が始まったばかりであり、実質的な目標議論が停滞しています。このままでは、これから難しくなっていく国際交渉において、出遅れることは必定です。今回のリマ会議での積極的な貢献とともに、国内での議論の活性化も必要です。

会議報告

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