国連気候変動ボン会議(ADP2.6)報告:本格化した交渉


2014年10月20日~25日、ドイツ・ボンで、この年3回目の国連気候変動会議が開催されました。2015年12月に予定されている新しい国際枠組み成立へ向けた交渉を加速できるかが課題となった今回の会議は、12月に予定されているペルー・リマでのCOP20・COP/MOP10(国連気候変動枠組条約第20回締約国会議・ 京都議定書第10回締約国会議)の準備会合に当たります。行なわれた交渉自体は、従来通りの厳しい対立を繰り返しながらも、各国の意見が違うポイントが明確になって争点が浮き彫りになったという意味では進展が見える内容でした。

国連気候サミットの開催を受けて

2014年9月に国連気候サミットが開催された際には、40万を超える人々がサミット会場のあったニューヨークの市街を行進し、2015年合意へ向けた気運が大きく盛り上がりました。

サミット自体も、政府・企業・自治体等からのイニシアティブの発表があり、対立に彩られがちな気候変動に関する国際交渉に新しい雰囲気をもたらしました。

2014年10月20日~25日、ドイツ・ボンで開催された2014年で3回目の国連気候変動会議は、この国連気候サミットで作り出されたポジティブな雰囲気を引き継ぎ、2015年12月に予定されている新しい国際枠組み成立へ向けた交渉を加速できるかが課題でした。

今回の会議は、12月に予定されているペルー・リマでのCOP20・COP/MOP10(国連気候変動枠組条約第20回締約国会議・京都議定書第10回締約国会議)の準備会合に当たります。

結果としてみると、10月の会議は、国連気候サミットでのポジティブな雰囲気は必ずしも反映されず、従来通りの難しい交渉が淡々と進められたという印象でした。

ただし、行なわれた交渉自体は、従来通りの厳しい対立を繰り返しながらも、各国の意見が違うポイントが明確になって争点が浮き彫りになったという意味では進展が見える内容でした。

今回は3つ大きな論点がありました。3つの論点とは、

  1. 2020年から始まる新しい国際枠組みの要素・骨格作り
  2. その新しい枠組みの中で各国が掲げる目標の形
  3. 新しい枠組みが始まる2020年までの各国の温暖化対策の底上げ

というものでした。それぞれについて、共同議長から事前に提示されていた文書をベースにして議論が行なわれ、後2者については終盤に新しい草案が示され、1つ目についても、会合後、新しい案が共同議長から提示されています。

WWFの視点からは、今回の会合の成果については2つ、今後の交渉で改善が期待される点があります。

1つは、各国が2015年3月までに提出することになっている国別目標案のその後の扱いです。

各国が期限通りに提出した後には、事前レビューという形で、それらが全体として「2℃未満」にとって十分なのか、国々の間の衡平性を考えた際に適切なのかを検討するプロセスが期待されています。WWFは、このプロセスを重要なものとして見ています。しかし、今回の会合では、その事前レビューがしっかりとした形で行なわれるかがやや不透明になってきてしまいました。

2つ目は、「2020年まで」の各国の削減努力底上げの具体策です。

現在の交渉は、2020年以降の国際枠組みに焦点が当たっていますが、その新しい国際枠組みを意味あるものとするためにも、2020年までの削減が今各国によって目指されている以上に行なわれる必要があります。2014年は、専門家会合(TEMs; Technical Expert Meetings)と呼ばれる会合の下でこの議題が議論され、議論自体は建設的でありましたが、今後は、それを具体的な削減の取り組みへと結実させて行く努力が必要です。

COP20・COP/MOP10(ペルー・リマ開催)では、これらも含め、先に挙げた3つの論点について成果を挙げることが期待されます。

ADP2.6の主要論点

今現在行なわれている交渉は、全体としては、来年2015年12月に、気候変動(温暖化)対策に関する2020年以降の新しい国際枠組みに合意することを目指して進められています。2011年のCOP17・COP/MOP7で採択されたいわゆる「ダーバン合意」において、2015年までに、2020年から始まる新しい国際枠組みに合意することが決められました。そのための交渉舞台として、ADP(ダーバン・プラットフォーム特別作業部会)が同時に設立されました。今回は、その第2回目第6セッションに当たります。

ADP2.6には、3つ大きな論点がありました。3つの論点とは、

1)2020年から始まる新しい国際枠組みの要素・骨格作り
2)その新しい枠組みの中で各国が掲げる目標の形
3)新しい枠組みが始まる2020年までの各国の温暖化対策の底上げ

というものです。現在の交渉のスケジュール感は、COP18決定を受け、表1のようになっていますが、COP20の開催国であるペルーは、このスケジュールをやや早めて、COP20の段階で、「要素」を議論するだけでなく(後述)、交渉テキストの土台には合意しようとしています。

表1:2015年合意までの予定

時期 予定されていること
2014年12月 COP20・COP/MOP10:2015年合意の「要素」の議論
2015年3月 「その準備のある国は」国別目標案を提示
2015年5月 「交渉テキスト」が準備される
2015年12月 新しい国際枠組みの合意

(出所)筆者作成。

これらそれぞれについて、共同議長から事前に提示されていた文書をベースにして議論が行なわれました。後2者については終盤に新しい草案が示され、1つ目についても会合の後に共同議長から新しい案が提示されました(図1)。

次回のCOP20・COP/MOP10では、引き続き、これらの文書をベースに交渉が行なわれます。
以下では、上述した3つの論点における議論を紹介します。

国別目標案(INDCs)に関する議論

2013年のCOP19決定において、各国はCOP21の「十分前に」、それぞれの国別目標案(INDCs; Intended Nationally Determined Contributions)を提出することが奨励されました。特に、「準備のある国」は、「2015年3月までに」という表現がつき、事実上、この期限を1つの目安として、各国が国別目標案を出すことへの期待が高まっています。

COP19決定は同時に、この国別目標案を各国が提出する際に、どのような情報を盛り込むべきかをCOP20において決めることに合意しました。どのような情報を盛り込むかという問題は、事実上、次期枠組みにおける目標の要件を決めるという作業であり、必然的に重要な論点となります。

また、COP19において積み残された課題として、2015年3月までに各国が国別目標案を提出した場合、その後どうするのかという課題がありました。

そもそも、2015年3月という期限を設けるアイディアが出てきた背景には、提出からCOP21の合意までの間に、各国がお互いの目標に関する不明点を解消したり、「2℃未満」目標に必要な削減量に足りているのかを確認したりする機会になることが想定されていました。

そのような機会を想定する理由としては、過去の京都議定書やコペンハーゲン会議の時に、各国が、お互いが持ち寄った目標の意味を十分に理解できないままに交渉に臨まざるを得なかったことに対する反省があります。

COP21での最終的な合意の「前」に、各国が目標を議論するという意味で、この作業を「事前レビュー(exante review)」もしくは「事前協議(exante consultation)」と呼ばれますが、この具体的な中身については合意できていませんでした。

また、COP19の決定は、正確には「貢献("contributions")」という言葉を使い、先進国と途上国の区別なく、全ての国々がそれを提示するとしました。「先進国と途上国(附属書I国と非附属書I国)」という伝統的な区分がされなかったという意味では、極めて重要な決定でありましたが、それは、先進国と途上国の間で責任に差があるという差異化の議論が終わったわけではありませんでした。INDCsという言葉を共通で使いつつも、その中でどのように差異化されるべきかという議論がCOP19以降も続いています。

これら「情報要件」、「事前レビュー」、そして「差異化」という3つの論点が今回の国別目標案に関する主要論点でした。

情報要件

情報要件について、最も意見が分かれたのは、国別目標案に緩和(排出量削減)以外の分野を含めるべきか否かという点でした。先進国は基本的に、国別目標案は緩和を中心とするべきと主張していますが、一部の途上国は、緩和だけでなく、気候変動の影響に対する適応、資金、技術、キャパシティ・ビルディングといった分野についても、国別目標案を持つべきだと主張しました。一部の途上国とは、具体的にはLMDC、BASIC、AILAC、メキシコ、アフリカ等です。逆に、途上国の中でも、適応について目標が設定されることに懸念を示しているのがAOSISとLDCでした。

適応とその他(資金、技術、キャパシティ・ビルディング)では少し議論の性格が違いました。適応については、それを国別目標案にと主張している国には、緩和と比較して各国における取り組みや国際的な制度の整備も遅れている状況を改善したいという意図があります。資金/技術・キャパシティ/ビルディングの3分野については、特に資金の分野において、先進国から支援に確実性や予測可能性を持たせたいという意図があります。

事前レビュー(exante review)の是非・あり方について

事前レビューについては、より根本的なところで意見の相違が見られました。LMDCは、COP19の決定ではそもそも、各国が国別目標案を提示した後のことについては何も書かれておらず、書いてあるのは国別目標案にどのような情報を盛り込むべきかという点のみであり、COP20で決めるべき事項ではないと主張しました。LMDCのCOP19決定に関する説明は事実としては正しく、COP19決定そのものには事前レビューについて決めるべしとは書いてはありません(もっとも、LMDCが反対したからこそ書かれなかった面もありますが)。

これに対しアメリカ、オーストラリア、EUなどの先進国は、2015年3月という期限を区切ることにはそれなりに意味があったはずで、何もしなくてよいということはあり得ないのではないかと主張しました。この事前レビューの必要性については、明確に反対しているのは途上国の中でもLMDCのみで、他の途上国は、AOSISやAILACなどを中心として、むしろやること自体については積極的です。

こうした対立を反映して、共同議長が会議終盤で示した案では、この事前レビューに関連する記述が曖昧となり、しっかりとした形でできない懸念も出てきました。

差異化

国々の間での責任や能力の差に基づいて、削減目標の厳しさや資金支援への拠出の義務などを「差異化(differentiation)」するという議論は、この国連気候変動交渉全体に通底する最も重要かつ難しい論点の1つです。その対立は、やはりこの国別目標案をどのように差異化すべきかという点において最も顕著に現れます。ここでいう差異化とは、具体的には、先進国が総量削減目標を持つ一方で、途上国は原単位目標でもよい、というような、目標の「形式」に関するものから、目標が義務であるかないかといった目標の「法的性質」に関するものまで、さまざまです。

一方で、現在、多くの先進国は自己差異化(self-differentiation)という考え方をとっています。これは、ダーバン合意、そして2013年のワルシャワでのCOP19決定が「先進国 vs 途上国」という区分をしていないことを基に、国々は、何らかの基準に基づいて差異化がされるというよりは、自国のおかれている状況をかんがみて自らの果たすべき貢献を自己判断するべきという考え方です。

他方で、LMDCを中心とする途上国は、従来からの附属書I国・非附属書I国というカテゴリーに基づいた先進国と途上国という区分は今でも有効であると主張しています。

こうした対立の間をとる形で、差異化については、新しい考え方も出始めました。特に今回注目を集めたのは、ブラジルによる「同心円的差異化(concentric differentiation)」という考え方でした。これは、現在の先進国の義務のあり方を中心としつつも、その他の国々も徐々にこれに近づいていく、というイメージを示したものでした。ブラジルは、会期中にはこれを口頭で説明しただけでしたが、会議後に改めて意見として文書で提出しています。

こうした意見がどれほど、COP20の段階で国別目標案の議論に反映できるかは未知数ですが、この交渉全般に拘わる重要テーマであるだけに、こうした新しい考え方が出てきて、しかも一定の関心を集めたこと自体、注目に値します。

 

2015年合意の骨格作り・要素(Elements)に関する議論

COP18の決定によって定められた現在の交渉スケジュールでは、2015年12月の合意へ向けて、合意の下書きにあたる「交渉テキスト」という文書を2015年5月までに準備することになっています。交渉テキストでは、合意がない論点については複数の選択肢を列挙することもできますが、そうするとしても、どのような内容が含まれるのかについてはおおよその合意がなければ作れません。このため、少なくともCOP20・COP/MOP10において、骨格たる「要素(elements)」とおおよその中身については合意しようというのが現在の交渉の流れです。

あえて単純化すれば、先進国の多くは「緩和(排出量削減)」志向の新枠組みを構想し、途上国の多くは他の分野(適応、資金、技術、キャパシティ・ビルディング)も諸々含んだ総合的・包括的な新枠組み合意を構想しています。
ただし、争点となっているのは、核心部分である法的文書にどこまでいれ、どこからを(一段下の法的性質となる)COP決定にいれるのかということです。全体のパッケージとしての2015年合意の中にいれるべき中身については、大きな違いは、現在までのところ見られていません。

こうした考え方の違いの背景には、前節で説明した国別目標案に何が含まれるべきかという点についての考え方があります。
要素に関する議論では、この他にも、緩和・適応・資金などについては、違った「サイクル」が存在するのではないか(国際的な目標設定や対策などについて、違う時間的枠組で運用していくべきではないか)など、細かい議論としては興味深い点もありました。
ADPの共同議長が、それらの議論を反映した文書案を、ADP2.6会議後に提示しています。

2020年までの各国の削減努力の底上げについて

TEMsの今後

2020年までの各国の削減努力の底上げについては、ADPのワークストリーム2の下で議論されてきました。
特に、このためにCOP19で設立され、2014年に入ってからの3回の会合で毎回開催されてきたTEMs(Technical Expert Meetings;専門家会合)は、参加国の間でもおおむね好評でした。

その理由は、このTEMsという場が、交渉ではなく、解決策について自由に議論ができる場であったからだと推察できます。

国連気候変動交渉は、基本的にルール形成の場としては機能してきましたが、具体的な解決策について、国々の代表が直接、専門家、国際機関、自治体、研究機関、企業、NGOと議論する場というのは、サイドイベントを別とすれば稀な機会であり、かつ、議論も交渉とは違って創造的かつ建設的であったことが幸いしているようです。

しかし同時に、TEMsでの議論を通じて盛り上がった解決策に向けての気運を、具体的にどのように実際の取り組みへと結実させて行くかが課題となってきています。

ADP2.6での各国の発言を聞いていると、少なくとも、TEMsを継続し、改善していくこと自体に反対している国は皆無といってよいようです。TEMsというプロセスの設立をそもそも提案したAOSISは、TEMsの継続についてもいくつか提案を行なっています。

AOSISの提案の中には、かなり実務的なものも含まれます。たとえば、これまでTEMsは、議論のプログラムの案内が比較的直前になることが多かったのですが、それを、早期に議題や論点をアナウンスし、各国が議論に合わせてきちんと準備をできるようにする、などの提案です。

また、TEMsにおいて確認された削減ポテンシャルの高い政策イニシアティブを「政策メニュー」として整理し、オンライン上のプラットフォームを通じて、それを実施する国が登録することをできるようにすることや、登録をした国が今度は、資金や技術支援が受けやすくなることなども提案に含まれます。

こうしたTEMsの今後については、明確な結論は出ていませんが、COP20でより具体的になるかが注目されます。

LMDC提案

他方で、より直接的に、削減目標を引き上げるべきだという主張も引き続きあります。この点について、LMDCは、新しく、「条約上の義務の実施を加速化させるための仕組み」として、「実施加速メカニズム(AIM; Accelerated Implementation Mechanism)」というコンセプトを提案しました。この提案は、一部、修正された共同議長提案に反映されています。

WWFの視点から

WWFの視点からは、今回の会合の成果については2つ、今後の交渉で改善が期待される点があります。

1つ目は、各国が2015年3月までに提出することになっている国別目標案のその後の扱いです。各国が期限通りに提出した後には、事前レビューという形で、それらが全体として「2℃未満」にとって十分なのか、国々の間の衡平性を考えた際に適切なのかを検討するプロセスが期待されています。WWFは、このプロセスを重要なものとして見ています。しかし、今回の会合では、その事前レビューがしっかりとした形で行われるかがやや不透明になってきてしまいました。

2つ目は、「2020年まで」の各国の削減努力底上げの具体策です。現在の交渉は、2020年以降の国際枠組みに焦点が当たっていますが、その新しい国際枠組みを意味あるものとするためにも、2020年までの削減が今各国によって目指されている以上に行われる必要があります。

2014年は、専門家会合(TEMs; Technical Expert Meetings)と呼ばれる会合の下でこの議題が議論され、議論自体は建設的でありましたが、今後は、それを具体的な削減の取り組みへと結実させて行く努力が必要です。

日本にとって

上述の通り、これから、2015年合意へ向けての交渉は本格化してゆくと考えられます。

その中では、「どのような国際枠組みが作られるべきなのか」という全体像に対する考え方と、日本自身が「その中でどのような貢献をしていくのか」、特にどのような削減目標で貢献していくのかが問われていくことになります。

日本にとって何より重要なのは、2015年12月での合意へ向けてこうして本格化していく交渉の中できちんと貢献していくために、自国の国別目標案の準備を着実に進めることです。

会期中に、EUは、既に2030年に向けての目標を採択しました。「少なくとも40%削減」というその目標は、極めて不十分なものではありますが、既に議論を始め、そして結論を出しているということがポイントです。

奇しくも、日本は、そのほぼ同じ時期に、ようやく目標に関する議論を開始しました。そして、会議後には、ついに米中が目標を先行して発表しました。その中身についてはまだまだ改善の余地はありますが、少なくとも、米中欧が、2015年合意成立へ向けての意志を明確化してきたことは注目に値します。

たとえ困難であっても、「地球の平均気温上昇を2℃未満に抑える」という長期の目標はもはや所与のものとして国際交渉では語られており、それにむけて、それぞれの国々がどのように貢献するのかを問われる日は近づいています。

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