ブリ・スギ類の持続可能な養殖に向けて ASC基準が完成


2015年2月12日、ASC(水産養殖管理協議会)による、世界の持続可能な養殖のための、新しい基準が完成したことが発表されました。これは、日本でも多く消費されているブリ類と、スギの2つの魚種の養殖についての基準で、海の自然に配慮して養殖・生産が行なわれているかを審査するためのものです。これは、年々増加の一途をたどる養殖水産物を、持続可能なものにし、海洋環境を保全してゆく上で、重要な一歩であり、養殖ブリの生産で世界をリードする日本にとっても、大きな意義を持つものです。

新たな認証基準が完成

2015年2月12日、ASC(水産養殖管理協議会)は、ブリ・スギ類の認証基準が、「ブリ・スギ類水産養殖管理検討会(円卓会議)」での策定作業を終えて、ASCに移管されことを発表しました。

ASC認証は、持続可能な養殖業を第三者の立場から証明するものです。すでに、ASCでは認証の対象としている、ティラピア、パンガシウス、サケ、エビ、マス、二枚貝、アワビの基準を策定、管理してきましたが、今回はこれに、ブリ・スギ類が加わることになりました。

ブリ

世界の養殖産業は、年々拡大傾向にありますが、その一方で養殖による自然環境と社会への負荷が懸念されています。例えば、飼料や薬剤の過剰な利用による養殖場周辺の水質悪化や、天然資源に頼ったエサの過剰な利用といった、環境や生物多様性への悪影響。さらに、貧困問題にもつながる、労働環境や地域社会に及ぶ課題です。

そのため、WWFは、養殖による影響を最小限にするため解決策の一つとして、ASC認証制度の設立と普及に取り組んできました。

今回、ブリ・スギ類のASC認証基準が完成したことは、その取り組みが大きく前進したことの証であり、同時に養殖ブリの生産で世界をリードする日本にとっても、大きな意義があるものです。

実際に、ASCの認証制度が、歴史ある日本のブリ類養殖にも適用されることは、海洋環境の保全に欠かせない、持続可能な養殖業の発展と、漁業を支える市場での付加価値の創出にもつながる、大事な一歩であるといえるでしょう。

責任あるブリ養殖へ大きな一歩

日本が世界のブリ類の生産に占める割合は、実に9割。

今回のブリ・スギ類の基準の策定には、その重要なステークホルダーである、日本の養殖関係者も参加・協力してきました。

今回の基準の完成について、WWFジャパン水産養殖担当の前川聡は次のように述べています。

ASCマーク

「これからの国際市場では、自然環境と社会に対する養殖業の責任のあり方が、より強く問われることになるでしょう。そうした中で、日本の関係者の参加を得て、世界に通用する養殖の基準が完成したことは、素晴らしいことです。日本にはこれを基にした、さらなる養殖行程の改善が期待されることになると思います」

また、ASC基準管理部長のバス・キアーツ氏は「この基準が完成したことを嬉しく思います。責任あるブリ・スギ類養殖のための基準を作り上げるために、この数年間、100名近くにおよぶ多様な利害関係者が円卓会議に参加し、貴重な意見や情報提供いただいたことに感謝いたします」と述べています。

自然環境と社会的影響を最小限にするために

ASCでは今後、認証に必要な監査のためのマニュアルの策定作業をすすめると同時に、養殖現場でのパイロット監査を行なう予定です。これは、完成したブリ・スギ類の基準を一通り検証し、養殖の現場と基準との間に、齟齬や課題が無いかを確かめる機会にもなります。

その結果を受けて最終版が策定される監査マニュアルは、ASCが認定する世界の認証機関と、養殖場の現場において、ガイドとして活用されます。この監査マニュアルとパイロット監査には、日本の養殖場からも関心が寄せられています。

現在、ASC認証を取得した養殖場は世界に125件、認証製品は1855点(ASC発表データ、2015年2月)と着実に広がっています。今回完成した基準に基づき、スギ・ブリ類養殖のASC認証を受けた養殖場が、日本でも誕生するように、WWFは生産者や流通に携わる関係者と協力してゆきます。

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