【動画あり】中国で撮影に成功!シベリアトラとアムールヒョウの親子


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

中国東北部の森林で、赤外線による自動撮影カメラの調査により、シベリアトラとアムールヒョウの姿がとらえられました。これは、絶滅の危機に瀕しているこうした大型ネコ科動物が、ロシア沿海地方のみならず、中国国内でも確かに繁殖していることを示す貴重な証拠です。今後、中国国内の生息状況をより詳しく把握するための調査の結果が待たれます。

中国で撮影に成功!シベリアトラとアムールヒョウの親子

北東アジアの生態系の頂点に立つ、トラの亜種であるシベリアトラ(アムールトラ)と、ヒョウの亜種であるアムールヒョウは、個体数がそれぞれ500頭と50頭前後と、現在絶滅が危ぶまれています。

その多くは、沿海地方を中心とした極東ロシアの森に生息していることが知られていますが、一部の個体は、中国東北部にも生息しており、両国にまたがる調査・保護活動が行なわれてきました。

その結果、近年、中国側でもその個体数や行動が、少しずつ明らかになってきています。

そうした中、2013年10月初旬に、ロシアと国境を接する中国の国立琿春自然保護区で、自動撮影カメラによりシベリアトラが撮影されました。そして、11月初旬にはシベリアトラの親子を目撃したという情報がありました。

その後、中国国家林業局のネコ科動物研究センターの研究員が、足跡を分析した結果、この親子は同年5月に生まれた幼獣2~3頭とメスの成獣であることが確認されました。

自動撮影カメラがとらえた仔ヒョウ

国立琿春自然保護区の郎建民氏によると、過去に見つかったトラの足跡は基本的に中国とロシアの国境沿いを1頭で歩いているもので、今回のように親子が見られるのは珍しいとのこと。

さらにこの貴重な発見に加えて、琿春からわずか30キロほど離れた国立汪清自然保護区で、WWFとネコ科動物研究センターが設置した自動撮影カメラに、2頭の仔を連れて歩いているアムールヒョウの姿が記録されました。

繁殖の事実が明らかに

中国のネコ科動物研究センター副理事兼東北林業大学教授の姜廣順博士は、この成果について次のように述べています。

「これらの記録は、アムールヒョウが中国国内の森で、実際に繁殖していることを示す今までにない証拠です。このメスのアムールヒョウには、少なくとも双子の5か月の仔がいます。」

また、中国東北部にある吉林省の汪清、琿春、および黒龍江省の綏陽、東寧の4地域をつないでいる「緑の回廊」と保護区のネットワークは、WWFがトラの保護に際して保全の優先地域として定めている場所でもあります。

WWF中国の野生生物プログラム・リーダーの范志勇は「これらの地域は、中国国内における、シベリアトラとアムールヒョウの主な分布域で、大型ネコ科動物が中国内陸部へ移動する重要な道でもあります」と述べています。

事実、今回シベリアトラとアムールヒョウの親子が現れた2カ所の国立公園は、ここから南西数百キロにわたって広がる中国と北朝鮮の国境、長白山の景観に連なっていることから、この広大な長白山一帯の内陸部にも、これらの大型ネコ科動物が移動している可能性があるものと見られます。

野生動物にとって、人間の引いた国境線は関係のないものです。 分断することの出来ない自然のつながりを守ってゆくためには、国境を越えた取り組みが欠かせません。

今回撮影された動画が明らかにした繁殖の事実は、保全活動にも明るい展望をもたらすものとなりました。WWFはこれからも、ロシアと中国および木材の消費国として関係のある日本の事務局で連携しながら、北東アジアの森林と、シベリアトラとアムールヒョウを保全してゆくための取り組みを進めてゆきます。

トラの母子の足跡

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