アムールヒョウとシベリアトラを守る!新たな法令が成立


ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、2013年11月シベリアトラとアムールヒョウの保護に関する一連の法令に署名しました。この大統領令には、WWFロシアが提案した内容の大部分が反映されています。その生息地の森の保全や調査活動の実施をも含めた今回の新しい法令は、極東ロシア地域における今後の自然保護に、大きな前進をもたらすことが期待されます。

大統領が署名した新たな法令

極東ロシアの森に生息する、トラの亜種シベリアトラ(アムールトラ)と、ヒョウの亜種アムールヒョウは、森林減少や密猟により、個体数がそれぞれ500頭と50頭程度にまで減少。絶滅が心配されています。

そうした中、2013年11月7日に、この2種の野生動物の保護に関する大統領令がロシアで成立しました。

この新たな法令には、WWFをはじめとする、極東ロシアの自然保護に取り組むNGO団体が求め、訴えてきた内容が盛り込まれました。

ここには、森や野生動物に関する調査活動やパトロールの強化、違法行為の取り締まり、新たな国立公園と、保護区周辺の緩衝地帯の設置、さらに人材の育成や、アムールヒョウの人工繁殖と野生への再導入までが含まれています。

WWFはこれまで、密猟の防止や持続可能な森林管理の推進、保護区の設置支援を通して、絶滅の危機にある野生生物と森の保全に取り組んできました。

その一環として、政府に対しても法執行の強化や国立公園の設置を訴えてきましたが、今回の法令の成立は、こうしたロビー活動が実を結んだものです。

今後、この法令に基づいて、実際の保護の現場で必要とされる、さまざまな法律が整備・施行されることになります。

アムールヒョウ

ビキン川流域の国立公園予定地

絶滅危機種の保護が大きく前進

WWFロシア代表のイゴール・チェスティンは次のようにコメントを発表しています。

「今回の法令は、2013年4月に開かれた森林に関する国家評議会幹部会後に出された指示に沿った、次のステップだと考えられます。

今回の大統領令には、希少動物とその生息地の保護を強化するために出したNGOの提案がほぼ全て盛り込まれていることは、注目に値します」

また、WWFロシア アムール支部の生物多様性保全プログラムコーディネーターであるセルゲイ・アラミレフも、この大統領令の意義について次のように述べています。

「この法令は非常に広範な内容をカバーしており、その施行によって、トラとヒョウの保護活動を大幅に前進させることができます。

この法令により、私たち専門家が提案してきた多くのことが実行されることになるでしょう」

極東ロシアでは、こうした希少な野生動物を守る上で、最も重要とされる問題については、何年もの間、決定が行なわれてきませんでした。

しかし、この法例によって、各関係機関が行なうべき取り組みに、全て日程が決められたことで、今後、保護のプロセスが確実に進むことが期待されます。

 

極東ロシアでの森林伐採

森林保護と先住民の権利確保にも大きな後押し

今回の大統領令は、ロシア沿海地方の南西部に生息するシベリアトラやアムールヒョウの保護を主な目的としていますが、多くの項目が、ロシアの自然保護の状況の全般的な改善につながりそうです。

例えば、猟友会のメンバーに捜索権を含む公的権限を与えることで、密猟対策の検査官の数が十分増加すると予想され、ロシア全体の動物保護に良い影響をもたらすことになります。

また、違法伐採された木材を取引から除外できるような木材原産地のモニタリング制度も導入されており、これは今後、ロシア全体の森でも導入されることになるでしょう。

ビキン川流域に、地方政府ではなく、国レベルの保護区である国立公園を、新たに設置する指示が含まれていることも大変重要です。

WWFロシアは長い間、ビキン川流域の保全と、同地域の先住民族であるウデヘ、ナナイの人々が自然資源の伝統的な利用を継続できるよう、取り組みを行なってきました。

そして、今回の大統領令に含まれる項目の1つでは、計画中の国立公園の管理に、地域の先住民の人々が参加できるよう、あらゆる方法を検討することが規定されています。

地域の森や自然を守る上で、そこに住む人々の協力や理解、参加は欠かせません。

さらに、森の伐採権を持つ所有者にも、所有する区画の森林を火災や違法伐採から守ることが定められました。

彼らは、ロシアの森の真の所有者として、未来のため森林保全に責任を持つことになります。

また、こうした極東ロシアの森林保護と日本の消費者も無関係ではありません。

シベリアトラやアムールヒョウのすむ森で違法伐採された木材が日本にも輸出されている可能性があるからです。

WWFは今後も、極東ロシアの希少な野生生物と森林を保全する取り組みを支援すると同時に、日本における持続可能な木材の調達を推進していきます。

関連記事

シベリアトラ(アムールトラ)

雪の中に残った3頭のシベリアトラの足跡


関連資料

ウラジーミル・プーチン大統領署名による、シベリアトラとアムールヒョウの保護に関する大統領令

    1. ロシア連邦政府は、以下の義務を負う:
      a)狩猟規制に関する連邦法の実現に必要な法的措置の採択。(期限は2014年2月15日)
      b)木材原産地モニタリング制度の確立と実施;その実現に必要な資金の金額と資金源の具体化。(期限は2014年2月15日)
    2. ロシア連邦政府は、以下に関する提案を提出する:
      a)連邦保護区域の管理を担う連邦国家予算部門に対する予算割り当ての増加(報告書期限は2013年12月1日)
      b)森林及び狩猟規制機関に対する助成金の割り当て(報告書期限は2013年12月1日)
      c)狩猟監察官に、ハンターの所有物や車内を検査する公的権限を付与(報告書期限は2014年2月1日)
      d)野生動物の保護を責務に含む、公的自然保護査察官の機関の設置(報告書期限は2014年2月1日)
      e)一般の人々や行政職員が、環境関連の法律違反や犯罪に反対する動機を経済的に提供する制度の提供(報告書期限は2014年2月1日)
      f)投資家による優先投資プロジェクト制度の要件実施に関する、森林セクターの優先投資プロジェクト実施に対する管理改善(報告書期限は2014年2月1日)
      g)森林の伐採権所有者が自らの土地を火災や違法伐採から守るための要件の明確化(報告書期限は2014年2月1日)
      h)森林の伐採権所有者に対し、各土地内で個人の書類を確認したり車を検査する権限の付与(報告書期限は2014年2月1日)
    3. ロシア連邦政府は、自然保護や森林、狩猟規制、保護区域に関する法律の管理監督を担う行政職員の立ち会いなしに、当局が人物及びその所有物や車の調査を行い、また所有物や書類を差し押さえる権限を与える可能性を検討する(報告書期限は2014年2月1日)
    4. ロシア連邦政府は、沿海地方及びハバロフスク地方の行政当局とともに、シベリアトラ及びアムールヒョウの完全な個体数調査を行うための行動計画を、その必要な資金の金額や資金源の明記とともに作成し、承認する。(報告書期限は2014年2月1日)
    5. ロシア連邦政府は、沿海地方行政府とともに、ビキン川中流から上流地域に国立公園を設立するための法案を準備、採択し、特に公園管理に先住民が参加できるよう配慮する。(報告書期限は2014年12月25日)
    6. ロシア連邦政府は、沿海地方及びハバロフスク地方の行政当局とともに、両州にある国立公園及び連邦自然保護区周辺に緩衝地帯を設置することを検討する。(報告書期限は2014年2月1日)
    7. ロシア連邦政府は、沿海地方行政府とともに、同州内の森林植生調査を2014~2016年に実施する提案を提出する。特に、シベリアトラ及びアムールヒョウの主要生息地にあたる保護林や特別保護森林管理区域の把握に努め、伐採権を除外する森林や地域のための法体制を整備する。(報告書期限は2014年3月1日)
    8. ロシア連邦天然資源・環境省は、沿海地方行政府とともに、以下をまとめ、承認する:
      a)ロシアのアムールヒョウ保護のための戦略及び行動計画(期限は2014年1月1日)
      b)アムールヒョウ再導入センターの設立及び運営に関する問題点の解決策を含む、アムールヒョウの再導入計画(期限は2014年1月1日)
    9. 検事総長室、調査委員会、内務省及び連邦保安庁は、ロシア連邦レッドデータリストに掲載されている動物の密猟や違法伐採と闘うための施策の改善に関する提案を提出する。(報告書期限は2014年2月1日)
    10. ロシア連邦内務省は、生物資源の違法伐採や違法採取の取り締まりに携わる特殊部隊の 増加、またその後方支援の改善方法を検討するための提案を提出する。(期限は2014年2月1日)
    11. ロシア連邦教育・科学省は、自然資源・環境省及び沿海地方、ハバロフスク地方行政当局、極東連邦大学とともに、極東ロシアの希少動物、絶滅危惧動物に関わる専門家の養成を行うための学位課程の導入に関する提案を提出する。(報告書期限は2014年5月1日)

 

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