国の存亡を賭けて「自然エネルギー100%の未来」をめざす国々


フランス・パリのCOP21会場より、温暖化担当の山岸です。
COP21は2日目を迎え、合意に向けた交渉が始まりました。

各国の交渉官は、合意文書について1行ずつ真剣に議論を交わし、草案を練り上げる作業が行なわれています。

夕方には、恒例の「化石賞」の授賞式も始まりました。
化石賞は、世界の950以上のNGOがつくるCAN(気候行動ネットワーク)インターナショナルが、その日の交渉に後ろ向きな言動を見せた国に与える不名誉な賞。

その授賞式はいつも、メディアと大勢の参加者に注目されますが、12月1日は、化石賞ではなく、交渉に光をもたらした国を表彰する「宝石賞」の受賞式となりました。

受賞したのは「気候脆弱フォーラム」。

海面上昇による水没の危機に瀕した島国や、台風やサイクロンなどの災害を受けやすい43の国が結成したグループです。

これらの国々では、温暖化に起因する災害で、毎年約3万人もの犠牲者が出ています。

今後、温暖化が深刻化すれば、被害はさらに拡大するでしょう。

水没の危機にある南太平洋の島々

「宝石賞」を受賞した「気候脆弱フォーラム」のメンバー

つまり「フォーラム」にとって、気候変動をめぐる国際交渉は、国民の生死を分かち、国の存亡を賭けた闘いなのです。

フォーラムの参加国はかねてから、世界の共通目標である、「2度未満(産業革命前と比べ)」より、さらに低い「1.5度未満」に、平均気温の上昇を抑えるよう求めてきました。

2度目標の達成は、現実的でないとする声もあります。でも、彼らにとって「1.5度」以外の目標はありえません。

その実現のためには、2050年までに二酸化炭素の排出をゼロにする必要があります。

そこでフォーラムの参加国は自ら、「世界をリードし、2050年までに再生可能エネルギー100%を実現する」と宣言。それにより、宝石賞を受賞したのです。

温暖化の影響はすべての国に及びます。つまり、現在すでに深刻な影響を受けている国々を守ることは、すべての国々の安全を高めることにつながります。

パリ合意には、こうした脆弱国を守ることが求められています。

温暖化で飢餓に瀕する人々の危機を訴えるグループが行なった断食アクション

COPではオブザーバーに非公開の会議もあります。この模様は、別の会議室で画像を見ながら議論の行方を追います。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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