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フロリダマナティーが大量死。命を奪ったものとは?


メキシコ南部のタバスコ州の川で、今年1月以降少なくとも90頭近くのアメリカマナティー(フロリダマナティー)が相次いで死んでいるという、非常にショッキングな報道を先日耳にしました。

マナティーは海や川に生息する草食の大型水棲哺乳類で、世界に3種が知られ、ジュゴンとも近縁の動物です。
マナティーはまた、とても穏やかな性格で、好奇心旺盛であることから “The Gentle Giant(優しい巨人)”とも呼ばれています。

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500㎏を超えるずんぐりむっくりとした体形は人魚というより、癒し系そのもの!

今回、大量死が確認されたアメリカマナティーは、メキシコ湾沿岸、カリブ海沿岸に広く生息し、IUCNのレッドリストでは危急種(VU)に指定されています。

特に、フロリダ沿岸に生息するマナティーは、モーターボートとの衝突による負傷や、骨や脂を狙った密猟により、1970年代にはわずか数百頭までに減少してしまいました。しかし、長年の保護活動の甲斐もあり、2016年にはおよそ6,500頭まで回復したという明るい知らせもあった中でのこの報道は大変残念でした。

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アメリカ、フロリダ州のクリスタルリバーでは、越冬のために集まってくる野生のマナティーと一緒に泳ぐことができます。こんなに近くに寄って来てくれるくらい警戒心が低く、好奇心旺盛な性格が仇となり個体数を減らしてしまいました。

報道によると、マナティーの死骸のほかにも魚やトカゲの死骸も見つかっており、河川沿いにある石油工場からの排水による水質汚染が原因ではないかと推測されています。一部の調査によると、川の水から基準値を大きく上回るカドミウムなどの重金属が検出されているとのことです。

この河川には、およそ500頭のマナティーが生息しているといわれています。
順次保護施設への移送が始まっているとのことですが、これ以上、息絶え水面に浮かぶマナティーを増やさないようにするためにも、原因の特定と解決が急がれています。

この穏やかで優しい動物が安心して暮らせる環境が、一刻も早く戻ってくることを願ってやみません。(広報 山本)

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マナティーがきっかけで環境保全の世界に入りたいと思った私にとっては、とても思い入れの大きな動物です。写真は大学時代に美ら海水族館でのマナティーに餌を与えている様子。

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WWFジャパン ブランド・コミュニケーション室 メディア グループ長
山本 亜沙美

大学時代の専攻していた海洋生物学をきっかけに、絶滅危惧種や環境保全活動に興味を持ち始める。2005年卒業後、米セントラルフロリダ大学院にて生物学を学び、2007年に卒業。卒業後、航空会社にて運行管理のオペレーション業務に携わった後、2010年にWWFジャパン自然保護室アシスタントとして入局。2013年より広報・プレス担当として、取材対応、記者発表などをはじめとしたメディアリレーション、イベント企画・運営などに携わる。2018年7月からメディアグループ長として、広報全般・WWFジャパンのブランドコミュニケーションを担当する。

海洋生物学が専門のリケジョな広報プレス担当です。人の心に響くものはいつの時代も変わらずですが、今は伝える手法が多様化しつつあります。情報のトレンドを追いかけ、常に一歩引いた視点で物事を見るように心がけています。休みがあればスクーバ&スキンダイビングをしにどこかの島に行っています♪

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