ビキン川とシベリアトラの思い出


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

夕暮れのビキン川

自然保護室の川江です。
先日、極東ロシアから、ビキン川流域の森が国立公園に指定された、というニュースが届きました。

実は、このニュース、私個人にとっても嬉しいニュースでした。

私が2013年8月にWWFに入局して、その1か月後、最初に訪問した海外の現場が極東ロシアのビキン川流域だったのです。

先住民の人々が暮らす村にホームステイをさせてもらい、翌朝、森の中に入るために、そこから川をボートで遡りました。

その途中では、晩ご飯用の魚釣りにも挑戦。先住民の方のアドバイスで、釣り初心者の私でも数匹を釣ることができました。

自然を知り尽くした先住民の方の智恵に触れるとともに、ビキンの恵みを実感することができた瞬間でした。

そして、ボートで中流域にあるキャンプ場に着いた後は、歩いて山を登ります。

山頂にたどり着き、そこから見下ろした景色は、息をのむ美しさで、「この自然を守る仕事に携われてよかった!」と思った瞬間でした。

今回、ビキン国立公園が設立され、しかもロシアで初めて先住民の権利が正式に認められた国立公園となったのは、WWFロシアの仲間たちが10年以上にわたり、先住民の人々と信頼関係を築き、政府への提言の中で彼らの権利保障を求め続けてきた結果です。

彼らの健闘と、それを支援してくださったロシアと日本のサポーターの皆さんに、心からのお祝いと、お礼を言いたいと思います。

川を遡るボート

山から見下ろしたビキン川と森の眺め

ところで、この時の訪問中、私はとんでもない体験をしました。

なんとシベリアトラの親子が、乗っていた車の前を横切ったのです!

同行していた長年現地にいるスタッフさえ、トラを見たのは初めてだった、とのこと。

一瞬の出来事で、残念ながら写真に収めることはできませんでしたが、あの親子の姿は今でもまぶたの裏に焼き付いています。

トラたちがこれからも、長く安心して暮らせるように。ビキンの森を見守ってゆきたいと思います。

WWFロシアの仲間たち。おめでとう!

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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