動物たちは訴える 気候の「ノアの方舟」


国連の気候変動会議(COP21)が開かれているフランスのパリより、温暖化担当の小西です。

こちらCOP21会場の各所には、カラフルな動物のオブジェが展示されています。

残念ながらパンダはありませんが、これはフランスの造形作家ガッド・ウェイルが再生プラスチックで製作した「気候のノアの方舟」と題する作品たち。

今回、フランスのセレゴーヌ・ロワイヤル生態系・持続開発・エネルギー大臣の提案によって、自然界のメッセージとしてCOP会場を彩ることになりました。

この作品は、よく知られた聖書の創世記に登場する「ノアの方舟」に由来します。

人間の堕落に怒った神が大洪水を起こした時、ノアは方舟を建設して、家族とあらゆる動物をひとつがいずつ乗せ、洪水を乗り切りました。これにより、人間と動物は絶滅を免れた、というお話です。

会議の行方を見守る「方舟」の動物たち。各国の交渉官や大臣たちが、その間を通ってゆきます。

しかし、現代の地球上で起きようとしているのは、全世界を覆う大洪水ではありません。

その原因は、人間活動が引き起こされているさまざまな環境破壊。とりわけ甚大な被害をもたらすと懸念されている大規模な気候変動です。

IUCN(国際自然保護連合)は、すでに鳥類の35%、両生類の52%、サンゴの71%が、特に気候変動の影響に脆弱であると指摘。

また、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書でも、地球温暖化が生態系や野生生物に深刻な打撃を与え、地球史上「6度目の大絶滅」が起きる危険性を指摘しました。

地球温暖化の進行があまりにも速く、植物や動物が変化に適応しきれないことが、その原因です。

そして今、COP21では、気候変動の脅威のない未来に向け、地球上の生きものたちを乗せて漕ぎだすための方舟「パリ合意」をつくる交渉が、日に夜を継いで進められています。

私たちも追い求めてきた、合意文書の草案(ドラフト)は、もうすぐ発表の予定です。

WWFが7日に開催した、気候変動と生物多様性をテーマにした「自然はどうCOPと共存(COPE)できるのか?」というサイドイベント。自然環境や野生生物を保全する上でも、気候変動は解決しなくてはならない大きな課題です。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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