「多自然川づくり」に見る里山・里地の未来


皆さんは「里山・里地」という言葉にどんな風景を思い浮かべますか?

里山や里地は、農業などを通じて「人が関与」することで形成される「二次的自然」です。

しかし、この二次的自然が今、日本の各地で消失。
同時に、農業を取り巻く状況も深刻になっています。農業人口が急減し、高齢化が進んでいるためです。

田んぼや畑、それをめぐる水路。そこで見られるトンボやカエル。里山、里地は、身近で豊かな日本の原風景の一つともいえます。

厳しい状況でも効率よく、負担なく農業を続けるには、水路を手入れの簡単なコンクリートで固める工事などが必要になります。

こうした変化が、本来農業によって育まれる水田や水路の自然を、消失させる一因になっているのです。

現場で見られたホトケドジョウとアブラハヤ。2018年の環境省レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)の掲載種も、およそ半数が二次的自然にすむ生きものです。

それでも、市民や行政が知恵を絞り、懸命に自然を守る取り組みをしている例もあります。

先日、神奈川県小田原市で「おだわら環境志民ネットワーク」が主催する「多自然川づくり見学会」に個人的に参加してきました。

観察会の様子

一般市民や学生、農業者、市職員などいろいろな立場の方と一緒に、魚などが多く利用する農業用水路でのさまざまな工夫を見学しました。

たとえば、「チドリ板型魚道」では、水路にジグザグに木板を挿し、流れを緩やかにすることで、小魚が水路と水田を行き来し易くしているそうです。

チドリ板型魚道

また、こんな水路も見学しました。
1本の水路が、人間の治水用と、生物の生息用に分けられ、並行して流れていたのです。「人間」と「野生生物」の生活を等しく扱う姿勢に、非常に感心しました。

治水(左側)と生物生息水路(右側)

「効率的な農業」と「生物多様性の保全」を「対立」ではなく「両輪」として行くことは容易ではありませんが、今回の見学会ではそのヒントを得た気がしました。

野生生物が生きる自然を未来に引き継いでいくために、出来る限りの活動を続けなければと、思いを新たにした一日でした。(IT担当 谷野)

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