氷点下20度!雪山調査に「レッツゴー!」


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

中国吉林省の国立汪清自然保護区より、自然保護室の川江です。

先日、草食動物の個体密度調査に同行してきました。

これは、シカなどを主食とする、シベリアトラやアムールヒョウを保護する上で欠かせない、大事な生息環境の調査活動の一環です。

実は前日、初めての調査現場にワクワクしていたら、WWF中国の女性スタッフの方からこんなことを言われ、心配されてしまいました。

調査のスタートポイントに行く道中、凍結した川を車で渡る。

「昨日までに私たちが調査した3つの区画は、明日の場所に比べたらマシだったけれど、それでも調査員が4人も体調を崩したのよ。明日の現場は、今回の調査でも一番大変な区画で、動けなくなったら死んじゃうこともあるから、無理しちゃダメよ」

内心びびってしまいましたが、ここまで来たら、と参加することにしました。

当日の起床は朝6時半。ご飯を食べ、山道を車で揺られること1時間半で着いた現場は、マイナス20度の山中でした。道路の両側にそびえ立つ斜面が、その調査地です。

今回の調査では、14人が5グループに分かれ、それぞれ500mの間隔を空けて5kmの直線を同じ方向に歩きながら、斜面に残された草食動物の足跡や糞などの痕跡を記録していきました。

5kmといっても地図上での話なので、実際は歩く距離は10km近くになり、もちろん道はありません。

調査開始時の1つ目の山登り

調査リーダーの「レッツゴー」の言葉で、いよいよ調査スタート。ルートはまず南斜面で日当たりが良く、ほとんど雪はありませんでした。

しかし、両手を使わないと登れないほど斜面が急で、ロッククライミングじゃないのかと思うほど。それでも、ノロジカやイノシシの糞が残されており、草食動物が生息していることが確認できました。

そして、稜線に着くと、次は雪の積もった北斜面を下ります。こちらは、雪が解けずに結晶のまま積もっていて、サラサラとした砂の中を歩いているような感覚です。

雪原に残されたユキウサギの足跡。他にもニホンジカやノロジカ、イノシシなどの足跡が確認できました。

そんな登り下りを繰り返しながら、動物たちの痕跡を記録し、夕暮れには何とか調査を終えて、宿に戻ることが出来ました。

今回、私は1日しか調査に同行することができませんでしたが、現地のスタッフはこの困難な調査を5日間にわたり実施しました。

野生のトラやヒョウを守るためには、実にさまざまな、また地道な取り組みが必要とされます。

そんな活動を現場で支え、尽力する彼らに、あらためて頭が下がる思いでした。

イノシシの通った跡。今回の調査で一番困ったのはカメラが動かなくなることでした。-20度の中では、バッテリーが冷えて電源がすぐに落ちてしまいます。なので、予備バッテリーをポケットで温め、カメラも必要な時にだけサッと出して、すぐにしまう方法で写真を撮りました。

この記事をシェアする

自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP