パリ協定を前進させる地球温暖化対策計画案を!
2016/03/04
2016年3月4日、環境省・経済産業省の審議会の合同会合で、「地球温暖化対策計画案」が示されました。この「計画案」は、2015年12月の国連の温暖化防止会議「COP21」での「パリ協定」採択をうけ、はじめて日本全体として世界の温暖化防止に対する貢献のあり方を示した、重要なものです。しかし、その中身についての合同会合では、これまでの議論を後退させるような意見が相次ぎました。中には、積極的に対策を進めるべきという議論もありましたが、「パリ協定」採択直後にもかかわらず、日本の対策を後退させる意見が多くでるという事実は、大きな問題です。
日本の「地球温暖化対策計画案」の採択に向けて
今回提示された「地球温暖化対策計画案」について、2016年3月4日、WWFジャパンは、計画案の採択に向けた準備が進められていることを歓迎するとともに、不十分かつ懸念される下記の点について指摘した声明を発表しました。
- パリ協定の「2℃/1.5℃」目標への貢献を明記すること
- 長期目標(2050年80%削減)を明記すること
- 2050年に向けた「低炭素発展戦略」策定に向けた準備開始を明記すること
- 2018年の目標見直しを予定すること
- 低炭素社会実行計画の透明性・実効性を改善すること
- 排出量取引制度の導入に向けた検討を行うこと
WWFは、主に上記の内容が「地球温暖化対策計画案」に追加もしくは堅持されるべきであると考えます。
詳しくは下記の声明をご覧ください。
声明 2016年3月4日
パリ協定を前進させる地球温暖化対策計画案を!
本日(2016年3月4日)の環境省・経済産業省の審議会の合同会合で、「地球温暖化対策計画案」(以下「計画案」)が示された。2015年12月のCOP21でのパリ協定採択をうけ、はじめて日本全体としての貢献のあり方を示す内容であり、重要な計画案である。
しかし、その中身についての合同会合での議論では、「長期目標を削除するべき」「排出量取引制度に対する言及を削除するべき」など、これまでの議論を後退させるような意見が相次いだ。逆に、これらを支持し、積極的に対策を進めるべきという議論もあったが、パリ協定採択直後にもかかわらず、日本の対策を後退させるような意見が多くでるという事実に、WWFジャパンは深い懸念を覚える。
WWFジャパンは、計画案の採択に向けて準備がされていることを歓迎する。その上で、主に以下の内容が追加もしくは堅持されるべきであると考える。
- パリ協定の「2℃/1.5℃」目標への貢献を明記すること:
パリ協定は、その目的として、世界全体の平均気温上昇を、2℃より充分低く、かつできれば1.5℃に抑えることを掲げている。日本の計画案も、これに貢献するものであることを明確にするべきである。 - 長期目標(2050年80%削減)を堅持すること:
パリ協定は、排出量削減に関する長期目標として、今世紀後半に世界全体の排出量を実質的に"ゼロ"にすることを掲げている。日本がその中で先頭をきって取組むためには、2050年80%削減は最低限のラインであり、計画案の記述は残すべきである。 - 2050年に向けた「低炭素発展戦略」策定に向けた準備開始を明記すること:
パリ協定は、各国に対して、中期の目標だけでなく、2050年の長期に向けた戦略を2020年までに策定することを要請している。日本もその策定に向けた準備を開始することを明記するべきである。 - 2018年に2030年目標見直しを予定すること:
日本の2030年26%削減目標は、国際的には「不十分」との評価を受けている。パリ協定の大きな特徴の一つは、目標を徐々に改善していく仕組みを取り入れたことであり、2018年に最初の国際的な進捗確認があり、2019〜20年に目標の再提出が必要である。これを受け、日本もその機会に目標を改善することを予定するべきである。 - 低炭素社会実行計画の透明性・実効性を改善すること:
現状の低炭素社会実行計画は、業界全体としての取り組みの中で個別企業の取り組みには不透明さがあるため、個別企業ベースの取り組みも第3者が確認する仕組みを設けるべきである。また、目標そのものの妥当性が、真の意味で第3者によって客観的に確認できるようにするべきである。 - 排出量取引制度の導入に向けた検討を行うこと:
2030年26%削減には、大規模排出源からの着実な排出量削減が不可欠であり、それを確実に進めるための政策として、排出量取引制度の導入の検討に関する記述は堅持するべきである。
最後に、地球温暖化対策計画案が採択された暁には、速やかに、パリ協定批准の手続きを開始することを要請する。
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