このままではネイチャーポジティブを達成できない ―WWFが生物多様性国家戦略の強化を訴え―


公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、本日2月26日(木)に、生物多様性条約の「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)」の国際目標実現に向けた日本の課題について、見解をまとめた資料『政策ブリーフ:ネイチャーポジティブ目標達成には日本の政策強化が不可欠』(全11ページ)を発表しました。
WWFジャパンは、国内外の生物多様性の損失が急速に進む中*、このままでは2030年までに「自然の損失を止め、回復軌道に乗せる(ネイチャーポジティブ)」という国際目標の達成は困難であること、社会変革を実現する政策が世界で求められている中、日本においても、野心的な国際目標の達成に向けた生物多様性戦略の強化が必要であることを訴えています。特に、企業活動や資金の流れなど、自然に負の影響を与えるセクターの変革を優先的に進める強力な政策が早急に必要です。
URL:https://www.wwf.or.jp/activities/data/20260226biodiv00.pdf

* 自然と生物多様性の豊かさは1970年から2020年の過去50年間で73%減少と報告されています。 https://www.wwf.or.jp/press/5765.html

発表の背景

日本を含む各国政府は、2月末に「生物多様性国家戦略」と昆明・モントリオール生物多様性枠組の進捗状況をまとめた「国別報告書」を条約事務局に提出予定で、日本政府も2月23日に提出しました。この報告書は、2026年10月にアルメニアで開催される生物多様性条約の第17回締約国会議(COP17)で、世界全体の進捗を評価する「グローバルレビュー」の基礎となる重要な文書です。WWFジャパンは、日本政府の国別報告書をふまえ、昆明・モントリオール生物多様性枠組の野心的な国際目標と現行の生物多様性国家戦略の間にあるギャップ、改善点や今後強化すべき点についての見解をまとめました。

図:昆明・モントリオール生物多様性枠組のレビューメカニズム(環境省資料をもとにWWFジャパン作成)

図:昆明・モントリオール生物多様性枠組のレビューメカニズム(環境省資料をもとにWWFジャパン作成)

本資料のポイント

  • このままでは2030年までにネイチャーポジティブを達成できない
  • 昆明・モントリオール生物多様性枠組のグローバルレビューが迫っている
  • 必要なのは、社会変革、特に自然に負の影響を与えるセクターの変革を導く国家戦略と実現のための政策
  • 日本は、2030年の野心的ターゲット達成に向けた戦略の見直しと取り組みの加速を
  • 以下の政策分野における抜本的強化が求められる
  1. 日本企業の活動や日本の消費が海外に与えるフットプリント(悪影響)削減に向けた政策の導入
  2. 気候変動対策と生物多様性保全の統合とトレードオフの最小化
  3. 農林水産業をネイチャーポジティブに
  4. 30by30*の質を高め、自然再生・地域の課題解決を目指す地方政策の推進を
  5. 野生生物と共生する社会の実現
*2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標のこと

グローバルレビューについて

2022年の生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)では、2030年までに「自然の損失を止め、回復軌道に乗せる(ネイチャーポジティブ)」という国際目標を含む昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、各締約国に対し、国家戦略の策定と実施が求められました。前回の愛知目標(2011ー2020年)では、各国の国内目標と世界目標の不整合が修正されず、結果としてどの目標も完全には達成されなかったという教訓があります。この反省を踏まえ、昆明・モントリオール生物多様性枠組では定期的なレビューによって、進捗を確認するための仕組みが導入されました。

WWFジャパン専門オフィサーのコメント

WWFジャパン 自然保護室 生物多様性政策グループ長 北出智美
2022年の「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)」の誕生以降、日本は世界に先駆けて生物多様性国家戦略を条約事務局に提出し、企業の自然に関する情報開示や、30by30に関する自然共生サイト登録への機運も高まっています。しかし、現行の取り組みは野心的な国際目標には十分に整合しておらず、政策強化が喫緊の課題です。特に海外資源に依存する日本は、森林破壊・土地転換などを通じて、海外の自然に負の影響を与えています。その影響を軽減するための具体的な目標や指標の導入、大企業や金融機関の取り組みを確実にするための情報開示の推進、サプライチェーン規制を含む義務的な施策等が求められます。生物多様性国家戦略は、今後の日本の環境政策の方向性を決める非常に重要な戦略です。何一つ目標を達成できなかった愛知目標の轍を踏まないように、各国が足並みを揃えて目標達成に取り組むべき局面です。日本政府の政策強化に期待します。

参考資料

  • 日本政府は、2025年10月に「生物多様性及び生態系サービスに関する総合評価2028」(JBO4)の中間提言を発表し、これをもとに「NBSAP中間評価」および「第7回国別報告書」案が作成され、パブリックコメントにかけられていました。
    https://www.wwf.or.jp/activities/activity/6141.html
  • ネイチャーポジティブに向けて生物多様性国家戦略と国内政策の強化を求めるWWFジャパン『政策ブリーフ』を公開  https://www.wwf.or.jp/activities/lib/6202.html
  • IPBESが『ビジネスと生物多様性評価報告書』要約を公開~社会変革に向けた企業と政府の役割
    https://www.wwf.or.jp/activities/news/6192.html

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