【WWFジャパン声明】南極条約は加速する気候変動に対応できず
2026/05/21
- 5月21日、広島で南極条約協議国会議が閉幕。気候危機が生物多様性に及ぼす脅威が浮き彫りに
- 海氷の生息地が激減していることを踏まえ、参加国代表者はコウテイペンギンの保護の必要性について合意
- しかし、コウテイペンギンを「特別保護種」に指定することについては、合意に至らず
日本・広島で開催された南極条約協議国会議は、気候危機が南極の生物多様性に及ぼす脅威の高まりや、南極の変化が引き起こす地球規模の影響を浮き彫りにし、閉幕した。しかし、コウテイペンギンの「特別保護種」指定については、全会一致に到らなかった。
南極は地球の気候システムにおいて、気温の調節や海面水位を維持する重要な役割を担っている。しかし、気温上昇はすでに南極の環境の安定を損ねており、その影響は南極海全域に広がっている。
氷床の消失が続けば、海面上昇が加速する恐れがあり、世界中の沿岸地域社会や生態系に甚大な影響を及ぼす。また、気候変動は、南極の環境に依存する種の存続にも重大な影響を与えている。その一例が、2026年4月、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧種」に指定されたコウテイペンギンである。
コウテイペンギンは、交尾、抱卵、ヒナの育成、そして年1回の換羽を行うための拠点として、少なくとも1年のうち9ヶ月間は、安定した定着氷に依存している。この生息地の損失は、すでに一部のコロニーで繁殖成功率に影響を及ぼしており、問題の深刻さを浮き彫りにしている。
会議では、44カ国の代表団に加え、科学機関、政府間組織、非政府組織が参加し、海氷生息地の急速な減少を踏まえ、コウテイペンギンの保護の必要性を確認した。
しかし、協議国は、科学者がコウテイペンギンの長期的な存続を確保するために必要だとする「特別保護種」の指定について、合意に至らなかった。
WWF極地・海洋担当主席顧問 ロッド・ダウニー(Rod Downie)のコメント:
南極条約における意思決定は、加速する気候変動に追いつけていない。絶滅危惧種に指定されたコウテイペンギンは、気候と自然の危機がいかに密接に絡み合っているかを痛感させる存在だ。ホスト国である日本の卓越した外交的リーダーシップや、大多数の政府からの強力な支持があったにもかかわらず、わずか少数の締約国がこの極めて重要な「特別保護種」指定に関する合意を妨げたことは、深く憂慮すべき事態である。南極条約の代表者たちは、この氷に覆われた大陸の守り手である。来年韓国で開催される会合において、この象徴的な種の保護に向けた実効的な行動が示されることを期待する。
WWFジャパン気候・エネルギーグループ グループ長 児玉綾子のコメント:
南極の生態系の保護には、パリ協定に掲げる1.5度目標を国際社会全体で実現することも不可欠である。日本は南極条約協議国会議で見せたようなリーダーシップを気候変動対策でも発揮し、1.5度目標の達成に十分に貢献する必要がある。日本の温室効果ガスの削減目標は、IPCCの科学的知見と整合する形で、少なくとも2035年までに2013年比66%以上に引き上げるべきである。また、その実現のために、さらなる省エネの深掘りのほか、屋根置き太陽光発電の義務化はじめ、自然や地域社会と共生した再エネの最大限の活用、そしてキャップ設定や炭素価格上限の引き上げといったGX-ETSの実効性の強化など、対策のいっそうの加速が求められる。



