日本は一刻も早くパリ協定を批准するべき


Statement 2016年9月21日

9月21日にニューヨークで開催される国連サミットの気候変動に関するハイレベル・イベントでは、潘基文国連事務総長が、世界各国に「パリ協定」の批准(受諾、承認含む、以降同じ)を強く要請する予定だ。昨年末の国連会議で成立したこのパリ協定は、批准する国が55か国を超え、その国々の排出量が世界の排出量の55%を超えてから、30日後に発効する。すでに9月3日には、温室効果ガスを排出する世界の2大国であるアメリカと中国が「パリ協定」を批准し、批准した国は28か国、あわせた排出量は39.10%となり、発効に向けて大きな一歩を踏み出した(9月21日・日本時間12:00現在)(*1)。

世界全体が温暖化対策に取り組み、いずれ世界全体の温室効果ガスの排出をゼロにすることを目指す画期的な世界の約束「パリ協定」、奇跡的ともいえるこの世界全体での合意を前進させていくためには、なるべく早く発効させることが重要だ。

現時点では、2016年内に批准するとみられている国が31か国あるが(*2)、それらがすべて批准すれば、年内に発効することは確実だ。逆に言えば、年内に批准できない国は、パリ協定列車が発車するときに、乗り遅れることになってしまう。現時点では、ブラジルが国内手続きを終え、21日に批准文書を国連に寄託する予定だ。批准できていない国は、今回のハイレベル・イベントでその理由を問われるほか、年内批准を公表することが求められる。

日本は、世界の排出量全体の3.8%を占める、世界第5位の排出国。しかも、今年5月の伊勢志摩G7では、ホスト国として各国に「パリ協定の早期の批准」を呼びかける宣言をとりまとめた立場だ。その日本が、パリ協定の発効に乗り遅れることは、国際的信用を失う行為となる。「国内手続きにおいて他の優先事項があり、時間がかかるから」などの理由は通用しない。

もし今回のハイレベル・イベントで多くの国の批准が見込まれれば、「パリ協定」は早ければ、今年11月7日から開かれる国連の気候変動会議COP22(マラケシュ会議)で、発効する可能性すらある。それでなくとも2030年に26%(2013年比)という日本の削減目標は国際的な比較から見ても到底野心的とは評価されない中、批准まで遅れれば、日本はこれからのパリ協定のルール作りの重要な交渉での発言力もさらに失ってしまうだろう。

日本はパリ協定の批准のために必要な国内手続きを、26日から開催される臨時国会において速やかに進めて、年内批准は当然として、可能な限りCOP22に間に合うよう10月7日までに批准するべきである。

これまでの国際交渉において、常にアメリカ・中国の動向を言い訳にしてきた日本、両国が批准している今、他にどんな言い訳が残されようか?日本が世界の温暖化の取り組みの足を引っ張る存在になってはならない。日本の果たすべき責任は大きい。

  • *1 Climate Analytics (2016) Paris Agreement Ratification Tracker http://climateanalytics.org/hot-topics/ratification-tracker.html

  • *2 同上。

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〒105-0014 東京都港区芝3-1-14 日本生命赤羽橋ビル6F
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