鹿児島県瀬戸内町西古見集落での大型クルーズ客船の寄港地開発に対する緊急声明


国土交通大臣 石井啓一 殿
鹿児島県知事 三反園訓 殿
瀬戸内町長  鎌田愛人 殿
ロイヤル・カリビアンクルーズ・リミティッドCEO リチャード・D・フェイン 殿

(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
 会 長  末吉 竹二郎 
 

 鹿児島県瀬戸内町西古見集落での大型クルーズ客船の寄港地開発(以下、本開発計画)を受け、WWFジャパンは、本開発計画に反対の緊急声明を発表する。

 南西諸島はWWFジャパンが設立当初より、世界的にも希少な動植物が残る重要保全地域として活動を展開している。一方近年では、観光利用の増加や外来生物の影響など、地域の自然環境が抱える問題が継続する中、国による世界自然遺産登録の手続きが進められている。

 2019年2月2日に瀬戸内町役場において開催された第3回「クルーズ船寄港地に関する検討協議会」で、奄美大島でも特に生物多様性の豊かな一方で、人口が40名に満たない西古見集落周辺での客船の寄港地開発がロイヤル・カリビアンクルーズ社より説明された。
 WWFジャパンは、奄美大島の陸域及び海域の希少かつ固有な野生生物及びその生息地における本開発計画に対して、管理計画の十分な検討措置がないまま、開発が進められようとしていることに強く異議を表明する。

□本開発計画予定地は、国内の生物多様性上最も保全価値が高いエリアである
・WWFジャパンが2009年に50名を超える研究者らと選定・策定し、公開した南西諸島の生物多様性重要地域(BPAマップ)において、本開発計画予定地の陸域及び海域は、絶滅のおそれが高いアマミノクロウサギやオットンガエル、ウミガメ類などの野生生物が生息する、最も保全価値が高いランクと評価・認識している。
・ほかにも環境省の国内の生物多様性上、特に重要な地点とされている奄美大島のサンゴ礁生態系のモニタリングサイトのうち、本開発計画予定地に最も近い地点(実久)ではサンゴの被度80%以上で「優良」と判定されている。また同省が指定した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」においてもこの海域は、重要度の高い海域に指定されている。

□本開発計画は、国が進める世界自然遺産登録推薦の方向性に反するものである
・2019年2月1日に、国が再推薦した世界自然遺産の推薦書の内容にある保護担保措置として、国立公園の第2種特別地域に、本開発計画予定地である瀬戸内町西古見集落周辺の一部が該当している。
・一方で、推薦書の「世界遺産地域への責任ある訪問」によると、主な観光利用場所と利用者数の集計対象に、瀬戸内町西古見集落周辺は含まれていない。本開発計画は、遺産登録の再推薦の根幹となる自然環境の十分な管理計画を策定する趣旨に反する計画である。

□本開発計画による影響について強い懸念がある
・WWFジャパンは、必要な環境影響の管理計画が検討も地元との合意もされていない中での本開発計画に対して、下記の通り強い懸念がある。
【自然環境への影響に対する懸念】
・下記に対する科学的な知見に基づいた保全への配慮や厳格な管理計画などが必要であるが、示されていない。
  〇この海域のみで確認されているアマミホシゾラフグなどの魚類、甲殻類のほか、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ等のウミガメ類の生息域として重要な生息地となっている
  〇奄美群島サンゴ礁保全対策協議会の調査によると、本開発計画予定地に最も近い実久集落東は、被度が高い造礁サンゴ類が確認されている
  〇西古見を含む大島海峡周辺の陸域はアマミクロウサギのほか、奄美固有の爬虫類・両生類の高密度地域であり最も保全価値の高い地域となっている
・本開発計画は、海上停泊および一時上陸型の定期就航計画であっても、この地域への物資の搬出入、観光に関わる労働者や税関など公務役務者の移動または滞在施設開発が予想される。この結果、土地や道路の利用量や利用人数の増大による、周辺の自然環境に影響を及ぼす可能性が高い。

【国内及び国際的な動きに対する懸念】
・国が再申請を行った世界自然遺産登録手続きによる今後のIUCNの現地調査評価において、管理計画が不備な状態で瀬戸内町西古見集落での開発と利用が進められようとしている点について、重大な指摘事項となりうる。
UNWTO(United Nation World Tourism Organization)が推奨する持続可能な観光の趣旨及び、ロイヤル・カリビアンクルーズ社が推奨する国際認証のGSTC(Global Sustainable Tourism Council)の理念基準に反する計画である。
・今後、地元奄美大島及び瀬戸内町の住民や自然保護団体のみならず、全国からの抗議や反対運動(現時点で本件に反対する電子署名は32000件超)及び学会や専門家からも問題指摘が拡大・継続すると予想される。

以上のような背景を踏まえ、次の懸念と要望を表明します。
1)WWFジャパンは、本開発計画に対し、自然保護上高い価値を持つ地域であり、自然への影響懸念をクリアするための管理計画がないまま、開発が進められようとしていることに強く異議を表明する。
2)以下の項目が、寄港地開発の実施前に、十分に検討がなされるよう強く要望する。
  〇多様な自然科学の研究者らによるキャリング・キャパシティの評価を行うこと
  〇特に就航地点や客船規模および就航回数など、持続可能な事業規模を前提とした寄港地開発の管理計画を策定すること
  〇自治体住民のみならず島内の市民や環境団体の意見を取り入れる機会とそれらの総意合意を得ること


WWFジャパンは、関係各所が生物多様性および持続可能な観光に対する真摯な対応を取るよう、以上の内容を提出します。



本件に関する問合せ先:世界自然保護基金ジャパン自然保護室国内グループ

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