鹿児島県と沖縄県が連携した生物多様性地域戦略の共同策定を鹿児島県知事へ提言


記者発表資料 / 提言 2010年4月23日

実現すれば、国内初となる行政区分を越えた生物多様性地域戦略が誕生

【東京発】2010年4月22日、WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、生物多様性基本法に基づいた「生物多様性地域戦略」を、鹿児島県と沖縄県が共同で策定することを促す提言書を伊藤祐一郎・鹿児島県知事に提出する。

WWFジャパンは、2006年10月から2010年3月にかけて「南西諸島における生物多様性評価プロジェクト」を複数の研究機関や地域の有識者と共に実施し、報告書をまとめた。これを踏まえ、生物多様性基本法に基づく生物多様性地域戦略を沖縄県と鹿児島県が共同して策定することを提言した文書(4月22日付)を伊藤祐一郎鹿児島県知事に提出する。

生物多様性地域戦略は既に千葉県や愛知県などで策定されている。沖縄県においては、沖縄振興計画が2011年に終了するにあたり、新たな基本構想として掲げた「沖縄21世紀ビジョン(案)」で生物多様性の重要性を指摘し、本年度から戦略策定に向けた情報収集を開始している。WWFジャパンでは、鹿児島県と沖縄県が世界に誇るべき南西諸島の生物多様性を最大限に活用した地域振興の新たな一歩を踏み出すことを期待して、このたび共同策定を提言する。行政区分を跨いだ形で、生物多様性基本法に基づいた地域戦略の策定が実現すれば、全国初となる。

共同策定を提言する理由としては、鹿児島県と沖縄県にまたがる南西諸島において、両県それぞれの領域は生物地理学的な観点から多くの共通点をもつことが第一に挙げられる。生物多様性基本法第13条で都道府県及び市町村の共同策定が可能であることを定めていること、両県が琉球諸島の世界自然遺産登録に向けて既に連携している実績があることも理由として挙げられる。共同策定により、戦略の実施のみならず計画段階から、専門的知見を有した人材の活用・情報共有の面で相乗効果が期待できる。また、WWFジャパンは、昨年末に、保全すべき南西諸島の重要な領域を生物多様性の観点から示した優先保全地域地図を、地理情報システムを用いて抽出しており、両県にまたがるその知見も活用することができる。

政府は、2010年10月に名古屋市で開催される生物多様性条約締約国会議の議長国として、今後2年間、世界の生物多様性の保全と持続利用を確実に進める責任を負う。こうした背景を踏まえて、鹿児島県と沖縄県が全国初の試みとして行政区域をまたいだ戦略策定を表明すれば、生物多様性を活かした地域づくりへの姿勢を国内外に強くアピールすることができるだろう。

(*)生物多様性地域戦略…2008年6月に施行された生物多様性基本法では、地方公共団体が生物多様性地域戦略を策定することが努力義務として規定されている。戦略には、対象とする区域、当該区域内の生物多様性保全及び持続可能な利用に関する目標、総合的かつ計画的に講ずべき施策を定める必要がある。

■問合せ先:WWFジャパン 自然保護室(安村 yasumura@wwf.or.jp)

  

南西諸島における生物多様性地域戦略の策定に関する提言

2010年4月22日

鹿児島県知事 伊藤祐一郎 様

財団法人 世界自然保護基金ジャパン 会長 德川恒孝

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。日頃から、自然保護行政への積極的な参画・推進をいただき、感謝申し上げます。

1980年にWWFネットワークがIUCN(国際自然保護連合)やUNEP(国連環境計画)と共に策定した「世界環境保全戦略」の中に、日本に残る貴重な自然環境として、南西諸島があげられました。以来、WWFジャパンは南西諸島プログラムを立ち上げ、1980年代、90年代と一環として、地域の自然環境の現状調査を行い、その科学的知見に基づく保全策の策定を国や自治体に提言して参りました。2006年10月から2010年3月にかけて、「南西諸島における生物多様性評価プロジェクト」を複数の研究機関や地域の有識者と共に実施し、報告書をまとめました。

これにともない、生物多様性基本法に基づく生物多様性地域戦略の策定について、十全な検討をお願い致したく、下記のことを提言いたします。鋭意ご検討の程お願い申し上げます。

敬具

提言「鹿児島県と沖縄県の連携による『南西諸島(尖閣諸島、大東諸島を含む琉球列島)生物多様性地域戦略』の策定」

 

鹿児島県と沖縄県の連携による「南西諸島生物多様性地域戦略」策定の提言理由

生物多様性条約の国内法として制定された生物多様性基本法(以下、「基本法」と省略)が2008年に施行されました。この基本法では、我々の暮らしや文化を支えている生物多様性を保全し、社会経済活動と自然環境が調和する地域づくりを進めていくため、地方公共団体が「生物多様性地域戦略」を策定することを努力義務として定めています。既に千葉県や愛知県などが戦略を策定・公表しています。沖縄県においては、沖縄振興計画が2011年に終了するにあたり、新たな基本構想として掲げた「沖縄21世紀ビジョン(案)」で生物多様性の重要性を指摘し、本年度から戦略策定に向けた情報収集を開始しています。一方、鹿児島県は、2003年に「奄美群島自然共生プラン」を策定し、各種取り組みを展開しているかと存じます。2009年10月に策定した奄美群島振興開発計画において、生物多様性基本法の基本原則に基づいた地域づくりを進めることを明記しています。以上のことからも、今後の振興開発の方向と振興方策を明らかにしたこれら中長期計画の、より具体的な行動計画として、「生物多様性地域戦略」の策定が必要です。

以上の状況や、基本法の第13条で都道府県及び市町村の共同策定が可能であることを定めていること、両県が奄美・琉球諸島の世界自然遺産登録に向けて連携している実績を踏まえ、「南西諸島における生物多様性地域戦略」を共同で策定することは、多くの意義と利点があると考えます。奄美地域と沖縄地域は、生物地理学的な観点から多くの共通点をもち、環境省那覇自然環境事務所の所管も奄美・沖縄地域に及んでいます。このようなことから、戦略の共同策定においては、その実施のみならず計画段階から、専門知見を有した人材の活用・情報共有の面で相乗効果が期待できます。また、WWFジャパンは、昨年末に、保全すべき南西諸島の重要な領域を生物多様性の観点から示した優先保全地域地図を、地理情報システムを用いて抽出しており、その知見も活用することができます。

政府は、2010年10月に名古屋市で開催される生物多様性条約締約国会議の議長国として、今後2年間、世界の生物多様性の保全と持続利用を確実に進める責任を負います。こうした背景を踏まえて、鹿児島県と沖縄県が全国初の試みとして行政区域をまたいだ戦略策定を表明すれば、生物多様性を活かした地域づくりへの姿勢を国内外に強くアピールできます。

世界に誇るべき南西諸島の生物多様性を最大限に活用した地域振興の新たな一歩を踏み出されることを期待して、ここに共同策定を提言する次第です。

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