民主党「地球温暖化対策の主要3施策への提言」を受けて、政府に対する声明


声明 2010年12月21日

政府は主要3施策の実効性ある導入を!民主党マニフェストからの大幅な「後退」を憂う

昨年夏に政権交代をした現政権は、新しい中期目標として「2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する」という目標を国際社会に発表し、それを達成するための法案の作成に着手してきた。世界の注目が集まり、WWFも含めた多くの環境NGO・市民社会は、この1年間、その取り組みに期待を持ちながら見守ってきた。

しかし、ここ数週間での民主党の「後退」ぶりには、深い失望の念を禁じえない。当初は大規模企業を中心とする産業界とは距離をおいていた民主党が、急速に産業界に接近し、政権交代を果たした選挙で公約されたマニフェストに書かれた温暖化対策のほとんどが、今、骨抜きにされようとしている。特に、17日に発表された民主党の「地球温暖化対策の主要3施策に関する提言」に見られる、以下で述べる3つの主要施策の形骸化や導入延期は、マニフェストに期待を寄せた国民に対する裏切りと言っても過言ではない。政府は、産業界におもねることなく、当初の約束通り、主要3施策の実効ある導入をするべきである。

 

地球温暖化対策税

税制改正大綱の中で来年10月に導入が決定された地球温暖化対策税は、税率も低く、環境に関する税本来の役割である「課税自体による化石燃料消費の抑制」はほとんど見込めない。ガソリンの値段にして、1リットル当たり1円にも満たない税率では、消費の抑制は期待できないからである。

また、民主党の「提言」では、この対策税の文脈においてエネルギー基本計画にある2030年までに30%削減という目標のみが言及され、上記の2020年までに25%削減という目標が恣意的に無視されている。そして、それを裏付けるかのような発言も一部の民主党議員からは聞かれている。これでは、日本が国際社会に向けて発表した25%削減目標を形骸化させ、かつ、エネルギー基本計画に税収を紐付けすることで、本来推進するべき再生可能エネルギーよりも、リスクの高い原子力発電に偏った投資が助長される危険性が高い。

固定価格買取制度

固定価格買取制度の「平成24年度からの」制度導入はあくまで「目途」とされ、更なる延期の可能性すら示唆されている。また、それまでの「検討」過程における過度の配慮によって、再生可能エネルギーの実質的な普及効果が望めないものになってしまう可能性が高まっている。

排出量取引制度

排出量取引制度の導入については、これまでも反対の声が産業界から強く、その結果として「原単位」での目標設定など、実質的な削減に繋がらない制度になってしまう懸念があった。

しかし、ここにきて、今度はその制度導入自体が「検討」対象となってしまい、議論がさらに後退している。排出量取引制度に関する負の影響が色々と挙げられているが、そのほとんどは、他の手段で同じ削減目標を達成しようとすれば直面する課題であり、制度設計の中で解決すべき問題である。その努力を惜しむのは、そもそも削減目標を達成する意志がないと映る。
期限を切らない「検討」は、絶対に避けなければならない。

以上の「主要3施策」は、日本を脱炭素社会へと方向づける、重要な役割を果たすことが期待されている。これらが形骸化・導入延期されることは、すなわち民主党の低炭素社会確立へ向けた意志の後退の表れである。ここまでの後退は、地球温暖化対策基本法案の成立すら反故にしようとしているのではという懸念も抱かせる。

このような後退は、日本社会の脱炭素化を遅らせ、日本が地球温暖化対策の分野で競争力をつけていくことを妨げる。問題はそれだけに留まらない。この後退は、国際的にも日本の信用を失墜させ、日本が温暖化問題について行う発言の説得力を大幅に下げてしまうだろう。

メキシコ・カンクンで開催されたCOP16・COP/MOP6は、当初期待された以上の成果を生んだ会議であった。たしかに「新たな国際枠組みの構築に関しては道半ばの状況にある」が、カンクン合意によって、コペンハーゲン合意に登録された先進国の削減目標や途上国の削減行動が国連プロセスの中に取り込まれたことは貴重な一歩である。カンクン会議の成果は、日本が25%削減を着実に達成していく上で不可欠な、主要3施策を早期に導入する理由にこそなれ、後退させる理由にはなりえない。

政府は、今一度、日本が温暖化対策について世界で先導的な役割を果たすという基本に立ち返り、主要3施策の意義ある形での早期導入を決定するべきである。

■本声明に関する問合せ先:

WWFジャパン 気候変動プログラム
Tel: 03-3769-3509 Email: climatechange@wwf.or.jp

■参考資料

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