共同要請文:G8における新しいエネルギー構想の発表につきまして


2011年5月23日 気候変動・エネルギーに取り組むNGOによる要請文

内閣総理大臣 菅直人 様

拝啓
新緑の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。私たちは、気候変動・エネルギー問題に取り組むNGOです。

報道によれば、2011年5月26~27日にフランス・ドービルにて開催されるG8(主要国首脳)会議におきまして、菅総理は、エネルギー政策の新しい構想を発表されるとうかがっております。

東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、日本のエネルギー政策は極めて重要な分水嶺にあります。そのような中、総理からG8の場にて発表されるエネルギー構想は、日本および世界の気候変動・エネルギー問題にとって、これまで以上に重要な意味を持つと私たちは考えています。

菅総理がG8で提示されるエネルギー戦略の中身については、「従来の原子力と化石燃料に再生可能エネルギーと省エネルギーを加えた『4本柱の育成』」に挑戦する内容」と報道されています。しかし、私たちは、今、真に求められているのは、「4つ」ではなく、再生可能エネルギーと省エネルギーの「2つ」の柱であると考えています。

G8での新構想の発表に際して、以下の諸点につきまして、考慮して頂くことを御願い申し上げます。

1.再生可能な自然エネルギー100%の未来を目指すこと

今こそ、再生可能な自然エネルギー100%を目指し、エネルギー政策の大きな舵を切ることを宣言すべき時です。

再生可能エネルギーは、CO2排出量削減に貢献するだけでなく、新しい成長産業として雇用を創出し、真の意味でのエネルギー自給に寄与することが期待できます。

菅総理は、5月10日の記者会見におきまして、既に、今後のエネルギー政策議論において再生可能エネルギーの導入をこれまで以上に重視することを発表されました。また、G8の場において、太陽光発電の普及に力を入れた「サンライズ計画」を発表される予定であると報道がされています。

再生可能エネルギーをこれまで以上に重視する姿勢そのものは、私たちは強く支持します。しかし、世界的な流れの中で言えば、日本の現状の取り組みはむしろ遅れており、単なる「重視」では、リーダーシップは発揮できません。また、太陽光以外の再生可能エネルギーについて、報道にあるように2020年代での本格的導入を予定するのでは、本来2015年までに排出量のピークを迎えなければならない気候変動問題に到底対応できません。

したがって、G8では、さらに一歩踏み込んで、再生可能な自然エネルギーで、全てのエネルギーをまかなうことができるような社会の実現を目指すことをビジョンとして掲げるべきです。
また、そのビジョン達成に必要不可欠な要素として、現行の電力体制を改革し、電力の自由化を進め、発送電の分離実現に取り組むことを宣言するべきです。

2.原子力依存からの明確な決別

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、今ある原子力発電所について、安全策をより一層強化することは必須であり、当然の取組みです。しかし、それだけでは、人々や自然にとって「安全な」未来を確保することはできません。

私たち気候変動・エネルギー問題に取り組むNGOは、従来から、原子力が気候変動問題にとっての望ましい解決策ではないことを主張してきました。安全性や放射性廃棄物の面から見ても、そうしたことに必要な膨大なコストの面からも、原子力は解決策とはなりえません。

福島県を中心とする各地で起きている悲劇を二度と繰り返さぬよう、原子力発電所の新規建設をしない、既存施設はすみやかに段階的に廃止していく方向性を明確にするべきです。

3.かつてない水準での省エネルギー社会の実現を目指すこと

オイルショック以降、日本は省エネ努力を続けて、世界有数の省エネルギー社会を実現したといわれています。しかし、この度の震災後の計画停電の経験で分かってきたのは、私たち日本人の生活や産業の中には、まだまだエネルギーの無駄遣いがあるということです。

また、GDP当たりのエネルギー消費量などを見ても、日本は各国に急速に追いつかれています。
今まで日本は、自国を省エネ先進国と見なし、省エネやエネルギー効率改善に関する取り組みは「既に十分にやっている」という驕りがありました。

G8では、新たな決意の下で取り組みを進め、これからのエネルギー政策の議論の中では目標を掲げ、かつてない水準での省エネルギー社会の実現を目指すことを宣言すべきです。それが低炭素社会を築く基礎となります。

4.温室効果ガス削減目標や気候変動に関する国際的な支援を堅持する

国際社会では、日本が、温暖化対策について今後どのような姿勢をとるのか、各国が注目しています。
震災後、気候変動の影響に脆弱な国々も含め、多くの国々が支援の手を差し伸べてくれました。日本が、その支援に応える1つの方法は、引き続き、世界に脅威を与える気候変動問題について、積極的に取り組んでいく姿勢を明確に示すことです。

そのためにも、また、このような状況だからこそ、今掲げている温室効果ガス排出量削減目標(2020年に90年比25%削減)を堅持し、国内の低炭素化を大胆に進めるべきです。そして、気候変動問題に対する国際的な支援を今後も継続していく姿勢を、G8のような国際的な場で打ち出すべきです。

日本の復興は、被災地を元気な姿に戻すというだけではなく、それと同時に世界の問題解決にも貢献するような形でなされてこそ、日本の再生を世界に対してアピールできるはずです。今、日本が直面しているのは、小手先の対症療法ではなく、日本のエネルギー構造を将来へ向けてどのように再構築してくのかという問題です。

G8での総理のリーダーシップの発揮を期待申し上げます。

敬具

 

気候変動・エネルギーに取り組むNGO一同
気候ネットワーク
WWFジャパン
一般社団法人 OfficeEcologist
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)

 

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