エネルギーミックスの選択肢形成に向けた意見


意見書 2012年3月8日

WWFジャパン 気候変動・エネルギーグループ

WWFジャパンでは、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故以降、日本のエネルギー政策に向けた提言を行うための作業として、2050年までに日本全体を自然エネルギー100%でまかなうとしたらどうなるかというエネルギーシナリオの作成を研究者の助力を得て行ってきました。

その検討結果は、『脱炭素社会に向けてエネルギーシナリオ提案』(以下「WWFシナリオ」として、昨年7月に中間報告、11月に最終報告という形で発表いたしました。

この度、基本問題委員会にて、3月9日を締切として各委員にエネルギーミックスの選択肢提示へ向けた意見の照会が行われていることに合わせ、WWFシナリオの内容をパブリックコメントとして提出させて頂きます。便宜上、委員向けの書式に合わせる形で提出致します。

以下の内容は、一部、報告書発表後の検討も含みますが、ほとんどは報告書からの引用もしくは整理・換算を行ったものです。報告書本体は、以下からダウンロードして頂けます。

1.需要サイド:省エネ割合とその根拠について

WWFジャパンのシナリオでは、日本エネルギー経済研究所の『エネルギー・経済統計要覧』(以下EDMC)における各部門毎の最終エネルギー消費を基礎データとして使用しています。各部門について、2050年までに活動量がどのように変化するのか、そして、どのような省エネ対策・技術を想定しえるのかを検討しました。

それぞれの部門内での最終用途(「家庭部門」の中の「暖房」等)について、次のような計算式で将来のエネルギー消費量を計算しています。

各最終用途エネルギー需要
=2008年の各最終用途エネルギー需要×各部門の活動量の変化×省エネルギーによる効率向上度合い

その結果として各部門について得られた省エネ効果をまとめたのが、表 1です 。

表 1:各部門の最終エネルギー消費量と削減割合
単位:
億kl
原油換算
現行エネルギー
基本計画における
2030年の最終エネルギー
消費(省エネ量差し引き前
と差し引き後)と省エネ割合
WWF
シナリオ
2030年
「差し引き前」
からの
削減率(%)
現行計画
からの
追加的な
省エネ割合(%)
WWF
シナリオ
2050年
割合
全体 4.24 3.36 -21% 2.38 -44% -23% 1.73
家庭部門 0.66 0.45 -32%  0.33 -49% -17% 0.26
業務部門 0.87 0.55 -37% 0.30  -66%  -29%  0.24
産業部門 1.37 1.32 -4%  1.28  -7%  -3% 0.95
運輸部門 0.9 0.62 -31% 0.47 -47% -16% 0.28

この時の、それぞれの部門において想定されている対策・技術をまとめたのが表 2~表 5です。より詳しい内容については、WWFシナリオの中間報告のp.7-11を、各部門における活動量や省エネ削減量の計算上の対応については、p.23の表をご覧下さい。

 

表 2:家庭部門の技術・対策
分野 技術・対策 モデル内での効果
照明 LED電球の高性能化(80ルーメンから2020年には200ルーメン)と大量普及 照明用電力消費が現在の4分の1になる
冷暖房 住宅の断熱性能を2050年までに全ての住宅が次世代省エネ基準相当に 住宅の冷暖房需要は2010年の36%に低下
  ヒートポンプの性能向上と普及(現在の平均がCOP3~4→2050年時点で7~8) 上記の断熱性能向上と合わせて、電力消費を半分(18%)まで低下
給湯 高効率給湯器の更なる高効率化(現在平均COP3→2050年平均6〜8)と普及 給湯分野での効率が倍に
動力他 テレビ等の電気製品の性能向上。しかし、大型化等で全体としての消費量は変わらない。半導体関連の回路電力の消費量は、2050年には半減する 左記全てを合わせることで、家庭における照明以外の電力用途の効率が50%向上する
  HEMSとスマートメーターの普及
(電力消費の10%程度削減の効果)
 
  待機電力の削減により、各家庭の電力消費の1%以下まで  
  • ※需要サイドについては、WWFシナリオの「中間報告」の内容を使用していますが、一部、数字が異なります。これは、「中間報告」発表以降のフィードバックによって、一部改善を行った結果、最終エネルギー消費の数値にも若干の変更があり、その数字を「最終報告」では使用しているためです。以下の説明では、需要サイドについても「最終報告」で使用した数字を使用しています。

 

表 3:業務部門の技術・対策
分野 技術・対策 モデル内での効果
冷暖房 断熱基準強化により全ての建物が次世代省エネ基準相当に 現状に比較してエネルギー消費が75%になる
  ヒートポンプの高効率化(平均3〜4→平均7〜8) 上記の断熱化合わせて、必要なエネルギーは37.5%に低下
  遮熱・断熱フイルムの利用 データがなく、効果を見込んでいない
  空調機器の効率向上(現在の平均3→2050年に平均6程度) 効率が2倍になる
  都市の緑化 2割程度の建物に25%の冷房減
  クールビズ、ウォームビズ 冷暖房用需要を8%低減
照明 照明のLED化により、4倍の効率化
他に、人感センサーの導入、タスクライティング、自然光の利用等
証明用電力(全体の10%)は4分の1に
動力他 BEMS導入の促進による10%程度の省エネルギー 10%程度の省エネ効果
  OA機器の効率化 エネルギー消費量が50%に低下

 

表 4:産業部門の技術・対策
分野 技術・対策 モデル内での効果
共通 インバータ制御モータの普及 たとえば、非鉄金属分野では効率20%向上、金属機械分野で効率30%向上
鉄鋼 電炉化・鉄鋼リサイクル率の向上。また、コークス炉の更新、廃棄プラスチックの高炉への投入、製鉄プロセスの高度化 リサイクル率70%
→エネルギー消費量は現状の半分程度
窯業・土石 セメント産業が、廃棄物の徹底的な処理産業となる。廃棄物の処理熱による生産中心に。 30%の効率向上
紙・パルプ 紙の再資源化率(現状60%超)をさらに引き上げ。黒液以外で現状使用している石炭をすべてバイオマスに代替。 30%の効率向上
化学 ゼロエミッション化によりエネルギー損失を低下/ガスタービンを利用したコプロダクション(熱と電力の発生)を推進 30%の効率向上
全製造業共通 工業炉に、循環型バーナーにより排気ガス中の熱をリサイクルさせる方式等の採用(高性能工業炉) 30%の効率向上

 

表 5:運輸部門の技術・対策
分野 技術・対策 モデル内での効果
自家用・
営業用自動車
カーシェアリングの普及によって、1台当たりの利用度を増やしつつも、全体の交通需要を減らす 全体としての効率70%向上に寄与
  エコドライブの普及:自家用・営業用自動車全体の5%に15%の燃費改善効果/貨物自動車全体の40%に6%の燃費改善効果 全体としての効率70%向上に寄与
  FRP(繊維強化プラスチック)や高張力鋼板の利用による軽量化/全ての自動車のEV/FCV化 エネルギー消費は現状の30%に
鉄道 照明のLED化/車体の軽量化/回生ブレーキ/ハイブリッド化 効率20%向上
自家用・
営業用自動車
内燃機関を利用した従来型自動車の燃費改善20% 2050年までの途中において効率向上を加速
貨物自動車 モーダル・シフト:トラック輸送の15%が鉄道・船舶輸送への移行 貨物自動車の15%減少及び鉄道・船舶の増加
航空機 機体の軽量化、ジェットエンジンの効率改善、省エネルギー飛行航路の選択 効率30%向上
  ITの利用、TV会議 航空機の10%を代替
業務部門の負荷は増大

2.供給サイド

(1)電源構成について(発電電力量)

WWFシナリオでは、各自然エネルギー源について、環境省のポテンシャル調査等を参考にしてそのポテンシャルを調べ、その後、風力や地熱等については自然保護の観点から一定の制約を設けた上で、その使用可能量を想定しています。また、原子力発電所については、現時点ですでに危険性が高いものについては即時に廃炉にするものとし、その他のものについては原則30年で廃炉にしていくと仮定しています。これらの想定については、WWFシナリオ・最終報告のpp. 33-39をご覧下さい。

さらに、2050年(自然エネルギー100%になる年)については、自然エネルギーが通年で(24時間365日)電力供給が可能であるかどうかを確認するシミュレーションも行っています。具体的には、全国842地点の気象データを元に太陽光発電や風力発電の発電量を計算し、それらと地熱、バイオマス、水力などの他の自然エネルギーの組み合わせが、365日の1時間ごとの需要を満たすことができるかどうかをシミュレートしています(「ダイナミック・シュミレーション」)。この検討の結果として、自然エネルギー100%でも、全国的に連系のある電力システムを前提とすれば、日本の電力需要は十分まかなえることが分りました。

同時に、通常であれば必要と言われるバックアップ電源は、バッテリーを300GWh分確保することができれば、それ以上は必要なくなることも分かりました。

また、WWFシナリオでは、「自然エネルギー100%」を全てのエネルギー源において達成するため、一部の燃料・熱需要を電力に転換したり、自然エネルギー由来の水素で供給したりすることを想定しています。このため、発電電力量の合計値には、純粋に電力需要をまかなうための「純粋電力」発電量と、燃料用途の電力需要を含めた「燃料用を含む電力」発電量の2種類が存在します。
以上をまとめたのが、表 6です。

*数字に誤りがありましたため、提出後、下記の表を一部修正をしております(2012.3.23)

表 6:WWFシナリオにおける各電源からの発電電力量割合
      WWFシナリオ
  現状
(2010年)
現行計画
2030
 2030年
(純粋電力)
2030年(*)
(含燃料用電力)
2050年
(純粋電力)
2050年
(含燃料用電力) 
再生可能エネルギー等 10% 21% 53.9%  63.4%  100.0%  100.0%
 太陽光 0.2% 5.6% 20.4%  29.9%  40.4%  50.7%
風力 0.4% 1.7% 10.2%  14.9%  20.2%  25.4%
地熱 0.3% 1.0% 6.1%  4.8%  13.9%  8.4%
水力 8.5% 10.5% 13.0% 10.4% 17.7% 10.7%
廃棄物・バイオマス 0.3% 2.1% 4.3% 3.4% 7.8% 4.7%
原子力 29% 53% 3.1% 2.5% 0.0% 0.0%
石炭 25% 11% 18.8% 14.9% 0.0% 0.0%
LNG 29% 13% 14.8% 11.7% 0.0% 0.0%
石油等 7% 2% 9.4%  7.5%  0.0%  0.0%
合計 100% 100% 100%  100%  100%  100%

(2)一次エネルギー供給について

WWFシナリオでは、そもそもの前提として2050年に自然エネルギーで、100%のエネルギー需要を賄うことを前提として検討を開始しています。このため、計算に基礎として使用しているのは「エネルギー最終消費」であり、一次エネルギー量はシナリオの中では計算していません。 このため、2030年の断面において、再生可能エネルギー部分においてのみ、現行のエネルギー基本計画との比較を、一次電力換算値を行った値にて比較しました。これにより、電力と熱両方について、再生可能エネルギーの可能性について比較ができます。

表 7:一次エネルギー換算をした値での再生可能エネルギー量の比較
単位:原油換算万kl 現状 2030年 WWF2030 WWF2050
太陽光発電 88 1,300 6,367  11,914
 風力発電 99 400 3,184  5,957
 地熱発電 59 234 1,026  1,979
 廃棄物・バイオマス発電 327 494 723  1,116
水力発電 1,834 2,432 2,206  2,524
黒液 492 503 0  0
 廃棄エネルギー 673 641 0  0
 廃棄物熱・バイオマス熱 312 530 4,246  5,579
 その他の熱(含む太陽熱) 49 117 1,601  1,997
再生可能エネルギー等 3,933 6,651 19,352  31,066

3.エネルギーミックスの数字の性格等について

(1)省エネ割合、電源構成、一次エネルギー供給構成の数字の性格

需要側の目標と政策強化

WWFシナリオでは、上述の通り、各部門について技術の普及や対策の進展を想定しています。これらは、それを後押しする強力な政策があってこそ実現されるものです。 まず、これらを目指すことを明記する「目標」が必要です。通常、省エネルギー目標は、「GDP当たりの最終エネルギー消費」のような形で表記されます。こうした原単位指標は一定の役割を果たし得ますが、今後の省エネルギーについては、消費量の総量そのものを減らすことも目標とするべきです。WWFシナリオの最終エネルギー消費量を、2008年比を基準として見ると、表 8のようになります。  

表 8:WWFシナリオにおける最終エネルギー消費量(2008年比)
  2020年 2030年 2040年 2050年
2008年比 -21.0% -33.9% -42.8%  -51.8%

このWWFシナリオをベースとして、最終エネルギー消費を2008年比で、2020年/2030年/2040年/2050年までに、それぞれ20%/30%/40%/50%削減する目標を提案します。このような野心的な省エネルギー目標を達成するためには、各部門について、少なくとも以下のような政策が必要です。

表 9:実施されるべき最低限の政策
家庭・業務部門
  • 白熱灯からの切り替え奨励→義務化
  • 新規建築時および改修時における省エネ基準等の達成義務化
  • 高効率冷暖房機器/給湯器の初期導入費用支援
  • 家庭内待機電力を1%まで落とすキャンペーン
  • 電気機器のHEMS/BEMS対応義務化とスマートグリッドの導入
産業部門
  • インバータ制御モータなど、効果はあっても投資回収期間が長い機器への導入支援
  • 工場の省エネルギー・トップランナー制度導入
  • 炭素制約の導入(炭素税・排出量取引制度)
運輸部門
  • 燃費規制強化の継続
  • モーダルシフトのために必要な異業種間連携の強化
  • 地域レベルでのカーシェアリング普及奨励
  • エコドライブに関する普及啓発
  • 航空機の軽量化・省エネ化の支援→義務化
  • 船舶の高効率化支援→義務化
  • 航路の省エネルギー化奨励

供給側の目標と政策強化

供給側についても、電力とその他の燃料・熱両方についての目標を掲げることが必要です。表 10は、WWFシナリオにおける自然エネルギーの割合の推移です。前述の通り、WWFシナリオでは、燃料・熱需要の一部を電力でまかなうことを想定しているため、純粋に電力需要を満たすための「純粋電力」と「燃料用電力を含む電力」の2つがあり、それぞれにおける割合を示しています。

表10:WWFシナリオにおける自然エネルギー電源の割合の推移
項目 2008 2020 2030 2040 2050
純粋電力割合 11% 29% 54% 81% 100%
燃料用電力含む割合 11% 32% 63% 87% 100%
目標数値 - 30% 50% 80% 100%

WWFシナリオをベースとし、少なくとも純粋電力の割合では、自然エネルギーが電力に占める割合は、2020年/2030年/2040年/2050年それぞれにおいて、30%、50%、80%、100%を目標とすべきです。
さらに、WWFシナリオの想定にしたがって、燃料用電力も含めた割合で考えるならば、自然エネルギーが電力に占める割合は、2020年/2030年/2040年/2050年それぞれにおいて、30%、60%、90%、100%を目指すべきであると言えます。

また、電力以外の燃料・熱需要についても、WWFシナリオでは同様の計算を行っています。表 11は、最終エネルギー消費における自然エネルギー由来の燃料・熱の割合です。「100%自然エネルギー」のシナリオであるのに、2050年においても、100%になっていないのは、残りの部分を自然エネルギー由来の電力化もしくは水素による供給を想定しているためです。

表 11:WWFシナリオにおける自然エネルギー燃料・熱の割合の推移(電力・水素以外)
  2008 2020 2030 2040 2050
自然エネ燃料割合 1% 15% 38% 56% 73%

WWFシナリオをベースとするならば、電力以外の燃料・熱需要に対して、2020年/2030年/2030年/2040年/2050年において、それぞれ、15%、40%、55%、70%といった目標数値を掲げるべきであるといえます。
こうした供給側の目標を達成するためには、少なくとも、以下の政策が必要です。 

  • 1.自然エネルギーのポテンシャルを充分に活かすような推進政策
    このシナリオで想定されているような急速な自然エネルギーの普及のためには、強力な自然エネルギー推進政策が必要です。その代表的なものとして、2011年8月に日本でも設立が決まった固定価格買取制度があります。しかし、同制度の詳細(特に買取価格・期間など)はこれから議論がされることとなっており、その詳細によって、WWFシナリオが示しているような将来が達成可能かが決まってしまいます。明確な普及目標と共に、それと整合的な制度設計が必要です。
  • 2.電力システム改革
    ダイナミック・シュミレーションの中で置かれた重要な仮定として、全国の送配電網が繋がっていることがあります。これは、逆に言えば、本シナリオの実現のためには、全国的な連携を可能にする電力系統の確立が不可欠であることを意味します。
    さらに、自然エネルギーのポテンシャルを最大限に活かすために、自然エネルギーの優先接続を義務づけ、自然エネルギーのための給電指令体制を整えることが必要です。このためには、電気事業法の改正等、今までの議論よりもさらに一歩踏み込んだ政策議論が必要です。
  • 3.自然エネルギーの熱活用/水素の有効利用
    WWFシナリオ検討の中で課題として浮上してきたのは、大きな割合を占める燃料・熱需要をどのようにして満たしていくのか、という問題です。これまでは、どちらかといえば軽視されがちだった太陽熱やバイオマスの熱利用にもっと光を当てていくことが必要です。また、それだけでは全ての熱需要をまかなうことができない場合のために、水素の活用についても、そのインフラ整備も含めて真剣に検討がされなければなりません。
  • 4.原発の着実な段階的廃止方針の採択
    福島原発事故は、原子力の非持続可能性を端的に示しました。今後のエネルギー政策を考えるにあたっては、原子力を段階的に着実に廃止していくことを明確に決定し、それを前提として需給についても考えていくことが必要です。

(2)(1)以外でエネルギー基本計画に掲げるべき項目と数字

「エネルギー大量消費社会からの脱却を目指す総量目標設定」

 これまで経済の成長とエネルギー消費は連動するものと考えられ、社会はエネルギー大量消費を前提としてきました。大量消費を改めるためにも、経済成長とエネルギー消費を明確に分離することを、政策目標として掲げるべきです。そして、これからは本当に必要なエネルギー消費の水準はどれくらいなのかを見据えながらの総量目標の設定がまず重要です。省エネルギーに関する目標といえば「GDP当たりの最終消費エネルギー」などの形での目標が多くありましたが、これら「原単位目標」と合わせて、エネルギー大量消費社会そのものから脱していくための総量での目標(エネルギー消費量)も設定していくべきです。

「自然エネルギーを飛躍させる系統強化の工程表」

 現行の電力システムの地域独占体制では自然エネルギーの飛躍は望めません。各地域間の連携を強化していき、いずれは全国的な連携のできる系統を確立することを目標として掲げるべきです。また自然エネルギーの優先接続を可能とする中央給電司令塔の確立、発送電分離・電力自由化などを推し進め、需給のバランスをとれるスマートグリッドの推進とあわせて、エネルギー基本計画の中で、これらの目標年度を設定し、その道筋を示していくべきです。

「原子力発電所を全廃するための工程表」

原子力発電所の全廃方針を明確化し、運転停止をした原子力発電所の使用済核燃料の取り出し、中間貯蔵などの方針を明確にし、核廃棄物となる建屋や部品の放射線レベル低減のために時間をかけ、作業者の被曝を減らし、安全に廃炉へと持っていく工程表を準備するべきです。また既に破綻している核燃料サイクル政策は廃止し、六ヶ所村の再処理施設への使用済み核燃料持ち込みは中止すべきです。今後は原発の運転を停止し、核廃棄物を発生させないことが重要である一方、既存の原発から発生してしまった核廃棄物については、適切な管理の下に処理を行う方法を決定していかねばなりません。

「化石燃料依存から脱却する工程表」

化石燃料依存からの脱却を明確化し、各分野での脱炭素化を進めるとともに、今後の化石燃料の調達方針にあたっても、脱却を前提とするべきです。非在来型化石燃料として台頭してきているタールサンド、メタンハイドレート、シェールガス等には依存するべきではありません。

「産業としてのクリーンエネルギー技術を育成・輸出し、同時に雇用を創出する」

原子力偏重である研究開発予算等を、自然エネルギー重視に変えていくべきです。自然エネルギーおよび省エネルギー技術の海外普及へ向けての体制を整備し、海外での技術ニーズを把握し、ハード面だけでなく、ソフト面も含めた総合的なパッケージを提供できるような体制を整えるべきです。またこれからの自然エネルギー普及や省エネルギーの社会的な実施に備え、人材の育成に国内外で取り組むべきです。

「地域主体のエネルギー社会構築」

 地域が、地域の自然資源を有効に活用し、その地域の特性に合ったエネルギー源の開発・利用をできるような体制(権限・財源・人材等)を整備することが必要です。自然エネルギーからの「熱」を有効に活用できる体制・街作りも検討されなければなりません。

「政策決定プロセスに市民がより参画できるようにする」

政策決定に関する情報を、その根拠も含め、前もって一般に公開し、人々が参画しやすい環境を確保するべきです。政策決定に使われる政府が有する情報・データ等、及び、事業者が保有する情報・データ等ついては市民に対して、アクセスしやすい形で公開がされるべきです。

野心的なCO2排出量削減目標

エネルギー政策の決定は、事実上、気候変動政策の決定になります。現在の25%温室効果ガス排出量削減目標を維持するような、CO2排出量削減を選択肢に含めるべきです。表 12は、WWFシナリオにおけるCO2排出量の推移です。

表 12:WWF試案リオにおけるCO2排出量の推移
単位:百万トンCO2換算 1990 2008 2020 2030 2040 2050
BAUシナリオ 1,059 1,168 1,067 946 829 712
WWFシナリオ 1,059 1,168 797 447 179 0
90年比削減率 0% 10% -25% -58% -83% -100%

 

4.選択肢の評価軸について(これまで委員から御指摘等のあった評価軸については参考7を御参照下さい)

WWFジャパンも参加するeシフト・市民委員会は、2011年12月に、「脱原発・エネルギーシフトの基本方針」を発表しています。同「基本方針」では以下の「10の原則」を掲げており、今後の選択肢の評価は、これらに合致するかどうかが大事なポイントとなると考えています。

1)安全・安心の確保

エネルギーの供給や消費によって、人々の生活や健康が損なわれることがないようにしなければなりません。また、危険の存在によって、人々に不安を与え続けることがないようにしなければなりません。これからのエネルギー・システムは、自然災害への耐性も強く、大規模な災害が起きた際にも、人々が生活を営む上で最低限のニーズを満たすことが必要です。 

2)持続可能性の達成 

地球規模および世界各地での環境、貧困・開発問題は、多くの地域・分野で悪化しています。有限な資源および環境の中で、現在世代および将来世代にとっての公平性を維持しつつ、多様な価値を尊重した社会経済活動を営むことが必要です。新しいエネルギー社会のあり方は、それらの問題を悪化させず、解決へと向かわせるものでなければなりません。  

3)真の自給の追求 

日本の国土は自然エネルギー源となる自然資源に恵まれています。途上国が急速に発展をしており、エネルギーの安全保障は重要な課題です。国内の自然資源を有効に活かし、日本に必要なエネルギーの大部分を国内で自給できる体制をつくることが必要です。  

4)気候変動の抑制 

ますます深刻化している気候変動問題に対処することは緊急かつ重要な課題です。電気や熱等のエネルギーの供給側だけでなく、消費側のシステムも温室効果ガスの排出量を最小にするものでなければなりません。  

5)地域資源を活かした地域社会の活性化 

災害対策や地域活性化のためには、一ヶ所に集中して依存する従来のエネルギー・システムを改め、分散型で、地域の自然資源等を活かしたエネルギー・システムを構築することが必要です。また、その活用を通じて、地域社会の活性化がはかられるべきです。  

6)世界のエネルギー貧困解決への貢献 

世界には、未だに14億人もの人々が、電気にアクセスできていないという「エネルギー貧困」が存在しています。日本におけるエネルギー技術や産業の発展は、こうした問題の解決につながるものでなければなりません。  

7)経済成長の再考 

これまでの日本のエネルギー供給計画は、従来型の経済成長を前提に考えられていました。これからは、持続可能な豊かさを追求する中で、経済発展とエネルギー供給の関係を見直す必要があります。成長ではない「満足度」の指標が求められています。  

8)核不拡散 

日本の原子力政策は、再処理や高速増殖炉など世界の核不拡散戦略に抜け道をつくりかねないプルトニウム利用政策です。大量の核兵器保有にも通じるようなプルトニウム保有を前提とした原子力政策は改められなければなりません。被爆国であり非核三原則を有する立場からも、核の拡散につながるような政策は断じて避けなければなりません。  

9)国際平和 

エネルギー資源をめぐる権益の争いは、しばしば国際紛争の直接的・間接的原因となってきました。地下資源ではなく、地表の太陽光や風、水、森林等を活用することで、技術協力や人材交流を進め、むしろ、国際平和の希求に役立つエネルギー利用とならねばなりません。  

10)情報および政策決定へのアクセス 

これからのエネルギー政策は、市民・国民が全員で議論し立案して行くようなものとなるべきです。市民・国民が積極的にエネルギーに関係する意思決定に参画するためには、まず広くエネルギー関係情報が公開され、誰でも政策決定プロセスへのアクセスができるよう、保障されなければなりません。  

 

5.その他留意事項等について

真の「国民的議論」の確実な担保

新しいエネルギー基本計画の策定は、全ての日本国民の将来に関わる極めて重要な事項であり、誰もが参加できるものでなくてはなりません。つまり、春頃に提示される選択肢の中身については、一般の国民が理解できるようなかたちで示されることが前提となるべきです。
上記項目1,2で掲げたようなエネルギー構成の「割合」や省エネの「対策」は、新たなエネルギーの姿を議論していく上で重要な要素ですが、日常的に一般には馴染みの薄い用語や内容が多く含まれており、専門家以外にとって容易に理解できるとは言えません。したがって、提示に当たっては、理解を容易にするような工夫が不可欠です。たとえば、どのようなエネルギー社会を選択したいのかがイメージし易いよう、①「原発温存」型社会や②「省エネ少々+原発温存+自然エネルギー少々」型社会、③「省エネ徹底+自然エネルギー大幅推進」型社会、といった名称をつけるなどすべきです。

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