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2022年のアースオーバーシュートデーは7月28日

この記事のポイント
地球環境が生み出す1年分の資源を、人類が使い切ってしまった日を「アースオーバーシュートデー」といいます。毎年、1年を待たずに訪れるこの日から、人類はさまざまな恵みをもたら母体である、環境そのものを「債務超過」の状態で使い続けることになります。2022年のアースオーバーシュートデーは、7月28日。これまでで最も早い訪れとなりました。環境が回復できない水準まで損なわれてしまう前に、次の世代に生きている地球をのこせるよう、過剰な資源利用をおさえた、持続可能な未来を目指す取り組みが求められています。
目次

2022年は、史上最も早いアースオーバーシュートデー

海の恵みである水産資源や、森の恵みである木材や紙、そして生きる上で欠かせない健全な水。

人間は、こうした地球の資源を多く利用しながら、日常生活を送っています。

しかし、日常の生活や、企業活動の中で、地球の資源を使いすぎてしまったら、どうなるでしょうか。

地球の資源は有限であるため、資源の使い過ぎには十分に注意を払わなくてはいけません。

しかし現代社会では、この使いすぎが慢性化し、地球環境が著しく損なわれる事態が生じています。

この事態を表す指数に「エコロジカル・フットプリント」があります。

エコロジカル・フットプリントはある一定期間に消費する資源を生産したり、排出する二酸化炭素を吸収したりするのに必要な土地や水域を、面積に換算して表記します。

具体的には、以下の6つの利用タイプに分け、実質面積として換算しています。

  • 耕作地(食物、繊維物、油料、ゴムなどの生産に使用される土地)
  • 牧草地(食肉、乳製品、皮革、羊毛などの家畜を養うために使用される土地)
  • 森林(木材、薪、パルプなどの生産に使用される土地)
  • 漁場(水産物の生産に使用される海洋と淡水)
  • 二酸化炭素吸収地(二酸化炭素を吸収する森林の面積)
  • 生産阻害地(建物、道路、ダムなどに使用される土地)

人間が使用するさまざまな資源の量(エコロジカル・フットプリント)と、1年間に地球から供給される生物資源量(バイオキャパシティ)を比較すると、地球の「限界」を測ることができます。

限界とはすなわち、地球の生産量を、人の消費量が「上回って」しまうタイミングのことです。

地球の限界日、それをアースオーバーシュートデーと呼んでいます。

アースオーバーシュートデー=(バイオキャパシティ/エコロジカル・フットプリント)×365日

アースオーバーシュートデーは、国際環境シンクタンク「グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)」により毎年算定されています。

2022年のアースオーバーシュートデーは7月28日。これまでで最も早く、地球の限界に達してしまいました。

生物多様性の重要性が強調される昨今、このアースオーバーシュートデーをできるだけ12月31日に延ばすことが必要です。

そうすれば、人類は地球一個分で生活ができているということになるからです。

地球一個分の生活を目指して、ムーブ・ザ・デー(Move the Day)

GFNでは、この地球の危機を発信するために、2021年の秋から冬にかけて、ムーブ・ザ・デーをスローガンとして「100日間の可能性」キャンペーンを展開していました。

このキャンペーン期間中、地球の現状を打開するための100つの解決策を提案し、その解決策を適用することで、どれくらい地球の限界を広げ、アースオーバーシュートデーを12月31日に近づけることができるか、示しています。

そのいくつかをご紹介します。

管理放牧

放牧の時期や家畜の密集度などをきちんと管理することで、草原の状態を最適化することができます。またそのことで、土壌の改善だけでなく、二酸化炭素の吸収を最大化することができます。
管理放牧を徹底することで、2050年までにアースオーバーシュートデーを2.2日延長することが可能になります。

食料廃棄物の削減

食料廃棄物を半減させることで、アース・オーバー・シュート・デーを13日間延長することが可能になります。
例えば、フランスのLai Grant市においては、2025年までに500万トンの食料廃棄を削減することを目標として掲げています。これを実現するために、各家庭が廃棄の量を3分の1に削減することが求められています。日本でもできそうですね。

炭素市場の導入

二酸化炭素の排出削減による効果は絶大です。二酸化炭素排出削減の取組の一つに炭素市場の導入があります。例えばもし1トン当たりの炭素に100ドルという炭素価格を付けることができれば、なんと約2か月(63日)もアース・オーバー・シュート・デーを延長できることになります。日本でも炭素市場の議論は始まっています。

日本でできる取り組みは、この5つ

アースオーバーシュートデーは、国別に設定して見ることも可能です。

世界の国々は経済的、技術的な豊かさに応じて、それぞれ消費している資源の量や、排出している二酸化炭素の量が異なります。

消費の多い国の水準に、全世界を合わせれば、アースオーバーシュートデーは当然早くなり、消費が少なく環境負荷の少ない国に水準を合わせれば、その訪れは遅くなります。

例えば、世界の人が日本の人々と同じような生活をした場合、アースオーバーシュートデーはどうなるでしょうか。

これは、世界の国を平均したアースオーバーシュートデーよりも2か月半以上も早まり、5月6日になってしまいます。いかに日本人が地球に負荷をかけているかが、理解できます。

そんな暮らしをしている日本人が、エコロジカル・フットプリントを削減するためにできることは何でしょうか。

特別非営利法人エコロジカル・フットプリント・ジャパンでは、以下の5つの方法を提案しています。

1. 省エネと再生可能エネルギーへの転換を進める

日本のエコロジカル・フットプリントを土地別で比べると、二酸化炭素吸収に必要な土地が全体の74.3%を占めています。また、その消費項目別でみると、住居および交通カテゴリーでは二酸化炭素による負荷が大きいことがわかりました。省エネと再生可能エネルギーを促進し、二酸化炭素の排出を抑えることが重要です。

2. 都市集中ではなく分散型の居住と経済を推進する

自治体の規模別にみると、大都市ほどエコロジカル・フットプリントが大きい傾向があります。1人当たりのエコロジカル・フットプリントは、大都市(人口100万人以上)では、小都市(人口5万人未満の町村)の約1.2倍。人口が都市に集中するのではなく各地に分散して、経済と資源を循環させる街づくりを進める必要があります。

3. 輸入製品の環境負荷を減らす

日本の暮らしは、中国、米国、オーストラリアなど海外から輸入する自然資源に支えられおり、依存割合は80%を超えるという試算が示されています。国内だけでなく、海外から輸入する製品のエコロジカル・フットプリントにも注意する必要があります。

4. 食生活を見直し、加工食品の利用を抑え、季節の地元産の利用を増やす

日本の家計消費エコロジカル・フットプリントで示す割合は、食27%が最も高い値となっています。また食カテゴリーのうち、約50%は、魚・穀物・野菜などの加工食品です。一般的に、加工食品は、製造、加工、流通など生産地から食卓までの工程が多いため環境への負荷が高くなる傾向があります。

5. 食料廃棄を減らす

食カテゴリーを異なる分類方法で調べたところ、そのうち20%は食料廃棄による負荷であることがわかりました。食料は、生産、加工、流通の各過程で環境への負荷が生じており、廃棄せずに利用することで、新たなエコロジカル・フットプリントを抑えることができます。

© Elizabeth Dalziel / WWF-UK

自然資源の赤字を黒字に転換へ

2022年のアースオーバーシュートデーの発表にあたり、エコロジカル・フットプリント・ジャパンの和田喜彦会長は以下のように述べています。

「人間の存続の基盤である環境には限りがあり、生態系が提供する財やサービスにも限界があります。地球環境の均衡を保つには、生態系が提供する財やサービスの範囲内で人間が生活することが求められます。しかし、過去50年、地球が供給する資源の範囲を人間の利用が超えている状態(オーバーシュート)が続いており、地球温暖化や生物多様性の減少が進んでいます」

エコロジカル・フットプリントを減らすことは、WWFが奨めるネイチャー・ポジティブの世界を実現することにもつながります。さらに和田会長からは以下のように強調しています。

「私たちは、人間も経済も自然の一部として存在しているという世界観に立脚し、日本が自然の価値を組み込む新しい経済と社会を構築できるよう、支援します。また、行政、企業など、さまざまな団体と協調して、「持続可能な生産と消費」を推し進めていきます」

2023年のアース・オーバー・シュート・デーが一日でも延長できることを目指し、できることから少しずつ。

地球一個分の暮らしを目指していきましょう。

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