© Richard Barrett WWF-UK

2019年12月発表 最新のIUCNレッドリストが伝える地球温暖化の影響

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2019年12月10日、IUCN(国際自然保護連合)は絶滅の危機にある世界の野生生物のリスト「レッドリスト」の最新版を公開しました。2019年は7月に続く更新となりました。 この最新のリストで絶滅危機種とされた種の数は30,178種。更新のたびに増えていた数は、とうとう3万種を超えてしまいました。地球温暖化の防止策を議論するCOP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)が開催されている中、公表された今回は、気候変動の脅威を強調する内容となっています。

3万種を超えた「絶滅危機種」

絶滅の危機が特に深刻な3つのカテゴリー「CR:近絶滅種」「EN:絶滅危惧種「VU:危急種」を合計すると、今回、絶滅危機種の総数は30,178種にもなりました。

2000年には絶滅の危機にある野生生物は2万種以下でしたので、およそ20年で、1万種以上も増えたことになります。

今回調べられたのは11万2,432種。
IUCNでは、2020年までに16万種にまで調査対象を拡げて、野生生物の危機の実態をさらに明らかにしようとしています。

地球上には3,000万種、あるいはそれ以上の種数の生物が生息していると考えられていますので、調査を続ければ、果たして、どれくらいの野生生物が現実に危機に瀕していることがわかるのか? 
レッドリストで検証作業にあたる科学者たちは危機感を強めています。

ユーカリの木やアナウサギなどの生息状況が悪化

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主にオーストラリアに自生するユーカリの木は既知の826種すべてが調べられ、およそ25%に絶滅の危機が迫っていることがわかりました。

スノーガム
© Jemma Cripps

スノーガム

これは人間がユーカリの生育する土地を切り開いて、農業用の土地に変えたり、街を作ったりしてきたためです。

ユーカリの木が失われると、これを食べるコアラにも影響が出ますが、実際に、コアラは近年、大きく生息数を減少させています。

ユーカリ・パウキフローラ・ニフォフィラ
© Jemma Cripps

ユーカリ・パウキフローラ・ニフォフィラ

アナウサギはスペイン、ポルトガル、フランス南部などを原産地としますが、「近危急種」(Near Threatened)から状況が悪化して、絶滅危惧種(EN)のランクになりました。

主因と考えられるのは、ウサギの感染症の流行。最大70%も個体数が減少したと考えられています。

アナウサギ
© Hanna Knutsson (CC BY-NC-ND 2.0)

アナウサギ

また、アナウサギは、イベリアオオヤマネコ、スペインカタシロワシといった同地で絶滅の危機にある肉食の野生動物が主食としているため、さらに影響が広がる心配があります。

気候変動の影響がますます顕在化

2019年12月、地球温暖化の防止策を議論するCOP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)が開催され、その最中に、公表された今回のレッドリストでは、気候変動の影響が強調されています。

温暖化の進行による生息地の植生の変化や、異常気象の激しさと頻度が、野生生物の生息に深刻な影響を及ぼしているためです。
特に、淡水魚や一部のサメにそうした傾向が強く見られます。

オーストラリアの37%の淡水魚が絶滅の危機にありますが、そのうち少なくとも58%が、気候変動の影響を直接的に受けているとされました。

オーストラリアハイギョ 
@Kenneth Lu (CC BY 2.0)

オーストラリアハイギョ

この背景にあるのは、オーストラリアで多発している、降雨量の減少や、気温の上昇を伴った異常気象の干ばつです。
この干ばつは、川の水温や流れを変化させてしまうのみならず、そうした環境に適応する外来生物による影響も拡大させます。

生息環境を失うことに加え、外来生物の影響を受けることは、絶滅危機種の野生生物にとって致命的な脅威となります。

激しさを増す異常気象の影響

大西洋でも温暖化の影響が野生生物に及んでいます。
今回、注目されたのは、大西洋西部、カリブ海の島に生息するミカドボウシインコ。
カリブ海ではハリケーンの強度と発生する頻度が増し、生息する自然環境を破壊。被害は人間だけでなく、こうした鳥類にも及んでいます。

ミカドボウシインコ 
© Michael Hanselmann (CC BY-SA 4.0)

ミカドボウシインコ

過去最強の勢力を持つと言われた、2017年のハリケーン「マリア」は、ミカドボウシインコを絶滅危惧種(EN)から、絶滅寸前の危機ランクである近絶滅種(CR)へと追い込みました。
現在、野生下には50羽未満が生息するだけと推定されています。

また、サメの仲間で、インド洋西部の浅い海に生息するタンビコモリザメの一種(Shorttail Nurse Shark;Pseudoginglymostoma brevicaudatum)も気候変動の影響により、絶滅が心配されています。

海水温の上昇により、生息環境のサンゴ礁が劣化。生息できる海域が狭まっているためです。

また同時に、浅い海域では違法な漁獲も容易であることから、ルールを守らず、適切に行なわれていない漁業の影響も受けていると考えられています。

認められた自然保護活動の成果

一方、保護活動が実りつつある例も報告されました。

WWFやIUCNなどの環境保全団体や、世界各地の科学者、研究者、各国政府は、生息環境の保全や外来種対策、また、土地利用計画に環境の視点を盛り込むといった、さまざまな保全対策を展開。

時には、大幅に個体数が減った生物を、人の管理下で飼育・繁殖させる試みが効果を上げることもあります。

そうした事例として今回、8種の鳥類と2種の淡水魚について、絶滅の危機の度合いが改善されましました。

たとえば、グアムクイナは太平洋のグアム島にのみ生息する、飛ぶ力を失った鳥の一種ですが、二次世界大戦中、島に放たれたヘビに捕食されて絶滅寸前にまで減少。

グアムクイナ 
© Greg Hume (CC BY-SA 3.0)

グアムクイナ

一時は、レッドリストでも野生の個体が存在しない「野生絶滅(EW)」とされましたが、飼育繁殖させた個体を隣りのココス島に放し、定着させることで、種としての絶滅の危機を回避することに成功。
今回のレッドリストでは、近絶滅種(CR)に選定されました。

モーリシャス諸島のモーリシャスホンセイインコも飼育下での繁殖が成功し、2007年に近絶滅種(CR)から絶滅危惧種(EN)に危機レベルが改善。
今では750羽まで回復し、今回のレッドリストではさらに危機のレベルを下げ、危急種(VU)とされました。依然として絶滅の危機にあることに変わりはありませんが、保全の取り組みが奏功した例といえるでしょう。

トラウトコッド
© Gunther Schmida (CC BY Attribution-N…al-ShareAlike)

トラウトコッド

また、干ばつや外来生物の影響を受けていたオーストラリア固有の淡水魚トラウトコッド(Maccullochella macquariensis)についても、新しい生息環境の確保などの取り組みの結果、危機レベルが絶滅危惧種(EN)から危急種(VU)に改善しています。

地球温暖化対策と多角的な保全の強化を

このように、一部には保全活動の成果が見られるものの、3万種を超える野生生物が絶滅の危機にある現状の重さは変わりません。

最近、「気候変動」という言葉に代えて、「気候危機」という言葉が用いられることが多くなっていますが、その影響は今後さらに深刻さを増し、将来さらに危機的な状況が生じることも予想されています。

石炭火力発電所(ドイツ)
© Andrew Kerr / WWF

石炭火力発電所(ドイツ)

気候危機という言葉には、そのことに強く警鐘を鳴らし、認識を改めることを求める意味があります。
地球温暖化の進行は、人間にとってはもちろんのこと、野生生物の生存にとっても、きわめて重要な「危機」にほかなりません。

さらに、こうした気候危機による影響に、開発や乱獲などによる脅威が「追い打ち」となって加わわれば、危機はより深刻なものとなります。

レッドリストに絶滅危機種として掲載される生物が今後、さらに大きく増えていくとしたら、それは「気候危機」という脅威がより拡大し、他のさまざまな環境破壊と複合した結果といえるでしょう。
スペインで開催の国連の温暖化防止会議COP25の議論の結果、そして各国政府の姿勢には、この野生生物の保全という観点からも、注目してゆかねばなりません。

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