止まらない密輸 高級木材レッドサンダーの現状
2010/02/18
日本でも、家具や彫刻などの木材として用いられている「レッドサンダー」。レッドサンダルウッドという名でも知られるこの木材が今、過剰な利用と密輸の危機にさらされています。野生生物の取引を監視するトラフィック・ネットワークでは、巧妙化する密輸の現状を報告。日本など消費国のかかわりが重要であることを指摘しています。
狙われる高級木材「レッドサンダー」
レッドサンダーは、コウキシタン(紅木、学名:Pterocarpus santalinus)という樹種で、世界でインド南東部のアンドラプラデシュ州を中心とした、東ガーツ山脈南部の森だけに生育しています。
しかし、生育地が非常に限られている一方で、高級木材としての需要が高く、野生生物の取引を監視するトラフィックの調査でも、家具などへの利用がレッドサンダーの密輸を後押ししていることが指摘されました。
絶滅のおそれのある野生生物の国際取引を規制する「ワシントン条約」では現在、レッドサンダーを附属書2に掲載し、商業目的の国際取引を規制しているほか、インド国内でも、対外貿易政策に則り、特別な場合を除きレッドサンダーの輸出を禁止。
さらに、1967年に制定された、アンドラプラデシュ州の森林法でも、レッドサンダーは保護されています。
それにもかかわらず、密輸の事例は跡を絶ちません。
それどころか、密輸業者がインド国外へ、この高級木材を搬送する方法は、ますます巧妙になっていると見られています。
明らかにされる密輸の現状
インドの歳入情報局によれば、2005年から2007年まで、レッドサンダーの密輸が摘発された例は、年間平均20件を上回り、2008年から2009年の間にも15件、密輸されようとしたレッドサンダーの押収が行なわれたといいます。
これらの摘発された事例を見てみると、多くの場合、積荷中に木材を隠したり、偽って、麻袋や酸化亜鉛、固形のマスタードオイル、塩といった、さまざまな品として申告されるケースが目立ちます。
また、丸太の状態で密輸が見つかる例は、インドからネパールを経由して中国へ持ち込まれる陸路で、しばしば確認されており、2006年以降、およそ1,000tものレッドサンダーが、この国境地帯の税関や検問所で回収されました。
さらに、船を使ったインド国外への木材の持ち出しも行なわれています。
2009年11月には、チェンナイ港で摘発された密輸事件では、2人の通関職員が32tものレッドサンダーの丸太の密輸に関与し、逮捕されました。
この職員らは何も知らない出入りの輸出業者の名を使い、船積みに必要な書類やスタンプなどを偽造。税関のチェックなしで密輸品を通関させるなど、その手口は巧妙を極めていました。
トラフィック・インドの事務局長サミール・シンハは、近年続いている一連のレッドサンダー密輸について、その規模が非常に大きいことを指摘。「高度に組織化された国際的な密輸が行なわれている証拠である」と述べています。
密輸ルートが変化している?
また、最近は、レッドサンダーをめぐる密輸の傾向に、変化も見られているといいます。
たとえば、インド歳入情報局では、2008年から2009年にかけて、中近東のドバイとアラブ首長国連邦、そしてマレーシアに向けたレッドサンダーの密輸を、計7件、摘発しました。
これらの国々が、実際にレッドサンダーを国内で消費しているのかどうか、今の段階では定かでありません。しかし、中国や日本など、高い需要を持つ国への密輸ルートの中継地になっている可能性は、十分に考えられます。
インド政府の環境・森林省のニューデリーにある野生生物犯罪管理局では、「レッドサンダーに関する法執行担当者マニュアル(Enforcer's manual on Red Sanders)」を作成するなど、インド国外への違法なレッドサンダーの持ち出しを、厳しく取り締まる姿勢を見せています。
しかし、この密輸問題は、レッドサンダーに対する高い需要があり続ける限り、解決するのは困難です。
シンハ事務局長は、インド政府が国内で取り組んできた、密輸ルートの解明や、調査の努力を高く評価しつつ、レッドサンダーの大きな消費国である、中国や日本といった地域で需要をコントロールすることの必要性を訴えています。
関連情報
レッドサンダーの密輸事例などに関する、より詳しい記事はこちら
トラフィック イーストアジア ジャパンのサイト
2009年12月23日 トラフィックネットワークNEWS
レッドサンダー、厳戒態勢へ