密猟対策に新展開!南ア・ベトナム両政府が覚書に調印


2012年12月10日、南アフリカ共和国とベトナムの両政府は、違法な野生生物の取引への対策を含め、生物多様性の保全に関する2国間の協力を強固にするための覚書に調印しました。WWFと、野生生物の違法取引や密猟の調査・防止活動に取り組むトラフィックは、この調印が、近年急激に悪化しているサイの密猟に対抗する上で極めて重要な転機になると見ています。

続くサイの密猟をくい止めるために

現在、南アフリカでは毎年、何百頭ものサイが密猟され、角を切り取られ、需要が急増しているベトナムへ送られています。医学的に証明されていないにもかかわらず、ベトナムでサイ角が「奇跡の薬」としてもてはやされているためです。

南アフリカで密猟によって殺害されるサイの個体数は、2007年は13頭であったのに対し、2012年には600頭以上に急増しました。2012年だけでも更に246人が、サイの密猟や違法取引に関係した疑いで逮捕されています。

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出典:TRAFFIC Report "The South Africa - Viet Nam Rhino Horn Trade Nexus"

この事態に対する取り組みとして、2012年12月10日、南アフリカ共和国とベトナム社会主義共和国の両政府は、違法な野生生物の取引への対策を含め、生物多様性の保全に関する2国間の協力を強固にするための覚書に調印しました。

この覚書への調印は、南アフリカのエドナ・モレワ水環境管轄大臣がベトナムを訪問した折に、ベトナムのシャオ・ドゥクファト農業農村開発大臣と共に行なわれたものです。

覚書の骨子には、生物多様性の保護管理、法執行、ワシントン条約(CITES)およびその他の関連する国際条約や協定の遵守において、両国が協力するという内容が含まれています。覚書は、署名日より効力を発揮します。

調印式で、エドナ・モレワ水環境管轄大臣は次のように述べました。
「希少なサイの角が、南アフリカからベトナムへと違法に運ばれています。我が国は、この違法取引を止めるために、ベトナムの関係諸機関からの密接な協力が得られることを期待しています」。

ベトナムのシャオ・ドゥクファト農業農村開発大臣もまた、2国間の協力が重要であることに同意。
「野生生物、特に、サイをはじめとする絶滅のおそれのある貴重な野生生物と、角などの派生物に関連する犯罪と闘うことは、ベトナム政府にとって、常に重要な課題です」と述べるとともに、関係省庁および関係諸機関との協力のもと、角をはじめ、サイの関連物すべてについて、ベトナムへの輸入を禁止するよう、2012年のうちに総理大臣に提案する予定であることを強調しました。

国境を越えた密猟防止の取り組み強化をめざして

南アフリカとベトナムとの間で交わされた覚書は「違法な野生生物密輸に対処する」という全般的な表現となっていますが、2国が協力して取り組む新たな課題の最優先事項がサイの角の取引であることは明白です。

インドシナ半島で活動するWWFのメコン・プログラムの責任者スチュアード・チャップマンは、次のようにコメントしています。

「WWFとトラフィックは、アフリカのサイの保護活動にとって転換点となるであろう、この新しい協定を歓迎します。ここ数年のサイをめぐる危機的状況に終止符を打つために、両国が速やかに行動に移ることを期待します。南アフリカとベトナム両政府は、嵐のようなサイの密猟の背後に存在する犯罪組織を厳しく取り締まる意志を、公に示したのですから」。

アジアにはびこる犯罪組織は、アフリカからアジアへサイの角を密輸する業者と手を組んでかなりの犯罪に手を染めており、角は最終的に裕福なベトナム人の手に渡っているとみられます。
2012年8月に発表されたトラフィックの報告書でも、ベトナムが、違法なサイの角の主要な行先であることが確認されています。

トラフィックは2010年、サイの角をめぐる危機的状況への対策を強化するため、南アフリカとベトナム両国の法執行機関の当局者の会合を開催。この会合と、それに続いて実現したベトナムから南アフリカへの公式訪問は、今回の2カ国による合意の成立につながりました。

今回の調印について、トラフィック サウスイーストアジア及びメコン・プログラムのコーディネーターであるナオミ・ドークは次のようにコメントしています。

「サイの密猟は、非常に重要かつ差し迫った問題ですが、本日、この調印式に両政府が公式に参加されたことによって、両国が連携して取り組んでいくことが約束されました。現在の危機を脱するためには、両国は今すぐ、行動を起こす必要があるのです。世界のサイは、絶滅寸前にまで追い込まれています。今日、その危機的状態に、新たな命綱が投げ込まれたのです」。

2013年3月に予定されている、ワシントン条約締約国会議(COP16)に向け、国境を越えた、さらなる密猟防止のための取り組みの進展が期待されます。

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