【REDD+ 先進事例】先住民テリトリーの包括的管理


アマゾン地域先住民族REDD+提案の策定

概要

アマゾン地域先住民族REDD+提案はREDD+に対する革新的なアプローチであり、アマゾン川流域先住民族と主要な支援団体が共同で作成し、アマゾン流域先住民族調整組織(COICA)の地域組織コーディネーターが取りまとめました。環境に関する権利と人権に焦点を置くこの提案は、地球規模でREDD+に多大な貢献を果たしています。

ここで取り上げるREDD+ 先進事例は、先住民族のニーズと価値観を盛り込んだ方法でREDD+を計画、実行する重要さを明確に示しています。提案作成の工程で、WWFをはじめとする主要パートナーからのキャパシティビルディングと技術支援により、先住民族コミュニティの包括的ビジョンの充実が図られました。その結果、土地の権利、自由で事前の情報に基づく合意、先住民族の積極的な参加という要素の導入に重点をおいたREDD+提案が生まれました。

© Forest and Climate Initiative / Living Amazon Iniitiative

期待された変革点

  • 先住民族のニーズ、権利、ビジョンを尊重し保証するREDD+の国際的な仕組みの構築
  • 先住民族によるテリトリーの包括的管理と、森林生態系サービスの完全性の保持を、現在のREDD+交渉に組み込むことへの支援
  • 温暖化ガス排出削減に貢献する全地球的な環境と社会の変化を支持し、積極的に関与する 資金提供者の獲得

アマゾン川流域先住民族と主要な支援団体が共同で作成した革新的なREDD+提案

参加者

  • 銀行情報センター(BIC)
  • アマゾン流域先住民族調整組織(COICA)
  • 法・環境資源NGO(DAR)
  • WWF

プロジェクト内容

  • 伝統的なプロセスに従ってさまざまな決定を行い、長い年月をかけて蓄積された知識を統合して森林を管理している先住民族の人々への権限付与
  • 環境・社会セーフガードの実施、先住民族の土地の線引きと所有権の付与、持続可能な資源管理

背景

REDD+には、コミュニティが有するテリトリーに関する権利、政策決定への参加の拡大、持続可能な森林管理による具体的利益といった先住民族に関する課題に対し、国際的な支援を作り出す可能性があります。一方で、REDD+が先住民族のコミュニティの権利や人々の生活に悪影響を与えるのではないかという懸念を生じさせたことも事実です。

アマゾン地域先住民族REDD+提案は、先住民族の土地と森林の生態系サービスの完全性に価値を置くことを求めており、炭素固定にとどまらず、総体的なビジョンと、森林が提供する炭素固定以外の財やサービスをも組み込んだ広範囲なアプローチを推奨しています。

アマゾン地域先住民族REDD+提案には、人権、土地所有権、協議、同意、参加といった課題が取り入れられています。特に、アマゾン川流域の先住民族が彼らの森林の保全と管理に尽力していることを強調しつつ、森林の評価や対価に関するいかなるメカニズムも、先住民族の権利を尊重する枠組みの中で、森林が提供する多様な生態系的サービスや文化的サービスを認識すべきだと提案しています。

利害関係者

直接的利害関係者

  • プロジェクトの設計やさまざまな決定に関与するとともに、受益者となります。
    アマゾン川流域の9カ国からの先住民族組織(COICA)-アマゾン流域先住民族調整組織(COICA)を通して調整、組織。

戦略的利害関係者

  • 物的、人的その他の資源を提供します。
    ・銀行情報センター(BIC)
    ・法・環境資源NGO(DAR)
    ・WWF

間接的利害関係者

  • 直接的には関与しないものの、取り組みに影響を与えます。
    アマゾン地域の100万人以上の先住民を代表する、300以上の先住民族グループ

プロジェクト進展の流れ

2009年

アマゾン地域先住民族の気候変動に対するビジョンの表明:COICAの運営委員会と技術委員会が「REDD+と気候変動:方針と基準」についての文書を作成しました。この文書により、アマゾン地域の先住民族によるREDD+の包括的なビジョンが明確に示されました。この文書は、デンマークのコペンハーゲンで開かれた気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC COP15)の関連イベントの中で初めて発表されました。

2010年

ビジョンへの同意と有効化:ボリビアのサンタクルスでの会議に、COICAの委員会メンバーとアマゾン川流域9カ国の先住民族の代表者が集い、この文書の方針と基準について議論、確認し、正式に承認しました。「REDD+と気候変動のハンドブック」が作成され、コミュニティの能力形成のためのツールとして配布されました。

2011年

アマゾン地域先住民族REDD+概念提案の作成:COICAはブラジルのマナウスで第1回アマゾン地域サミットを開催し、アマゾン流域および中南米の森林の保全と持続可能な利用のための現実的な方策の確立を目指しました。サミットでは、アマゾン流域9ヵ国からの先住民コミュニティの代表者と協働関係にある機関がREDD+に関する懸案事項や課題、そして次のステップについて議論しました。技術チームが組織され、「アマゾン地域先住民族REDD+概念提案」の骨子を作成しました。この概念提案は、COICA、アマゾン流域9ヵ国先住民族の代表者と市民組織のメンバーにより、南アフリカ、ダーバンで開催された気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC COP17)で発表されました。

2012年

アマゾン地域先住民族REDD+の拡散:COICAのリーダーたちとその国のパートナーは、国際イベントに参加し、アマゾン地域先住民REDD+提案を国際コミュニティに広めました。また、ドイツのボンで開催された科学および技術の助言に関する補助機関(SBSTA 36)や、カタールのドーハでの締約国会議(UNFCCC COP18)をはじめとする気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の会議にも参加しました。一方で、ヨーロッパの自治体と熱帯雨林の現地住民との気候同盟1は、アマゾン地域先住民族REDD+提案への支持を表明し、アマゾンを有する5カ国の少なくとも400万ヘクタールにわたって提案が実施されることを求めました。国際社会での認識の拡大と一対一の対話を通して、この提案の重要性はさらに高まりました。そして提案の実行に向けた作業計画が策定されました。

成果

  • REDD+プロセスに、土地利用、所有権、独立系炭素ディーラーの監視、初期段階でのセーフガード、自然資源の包括的管理などの重要な戦略的課題が含まれるようになりました。
  • アマゾン川流域9ヵ国の先住民族がもつ様々な視点が統合され、統一性のあるビジョンが得られました。
  • 具体的で先住民族のニーズを満たす提案を通して、アマゾン川流域先住民族と国際コミュニティの間での対話が増加しました。このことが、REDD+活動への資金提供者との新たな提携に結実しています。
  • 他の組織や政府との協力や交渉、パートナーシップの構築を通して、COICA、ならびに同組織が代表する先住民族の技術的、政治的能力が強化されました。

課題

  • アマゾン地域先住民族REDD+提案の成功には政府と自然保護団体の間での対話が不可欠でしたが、両者が常に共通の見解を持っているとは限らず、不一致がある場合にはすべての団体が同意に至るまで交渉が滞りました。
  • 提案の実施は、様々な団体からの多くの技術的、金銭的支援に依存しています。この取り組みの効果を高めるためには、さらなる支援が必要とされています。

得られた教訓

  • 提案を合理的かつ持続可能なかたちで発展させていくためには、文化の差異を考慮し、段階的に進めることが重要です。異文化にまたがるアマゾン地域先住民族REDD+提案は、科学的・技術的なアプローチと伝統的知識とを革新的に組み合わせたものです。提案を作成する過程で利害関係者は互いの発言を共有する多くの機会を得ており、結果として、個々人がより主体的に提案の成功に関わることにつながりました。
  • 先住民族の包括的な視点は、これまでのREDD+のアプローチに新たな価値を加えました。今回の提案は、土地管理のより統一的で戦略的なビジョンの採用を促進する一方、先住民族の文化的な側面を組み入れています。このことは持続可能な成果をもたらし、環境、社会、文化、そして政治の各レベルに確実に影響を与えるでしょう。
  • 単なる議論から具体的な提案に進んだことにより、REDD+に関する対話に変化がもたらされました。現実的、技術的、積極的な提案を策定したことで、REDD+の国際会議でのアマゾン川流域先住民族の代表者たちに対する信頼性と注目度が高まりました。 また、提案は対話の機会の増加をもたらし、資金提供者との新たな提携にもつながっています。

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