街なか水路ウォーク!佐賀で「プラごみ」イベントを実施
2019/12/24
総延長2,000㎞。水の街・佐賀と環境保全
佐賀市内で活動する、さがクリークネットとWWFジャパンは共同で、2019年11月16日に、佐賀市内のオランダハウス(旧佐賀銀行呉服町支店)にて、「海洋プラスチックを知ろう!街なか水路ウォーク!!」と題したイベントを行ないました。地域の方々に海洋プラスチック問題について知っていただくと同時に、実際に街に出て水路を歩きながら清掃作業を行い、地元の水路に慣れ親しんでもらおうという試みです。このイベントは、H&Mジャパン(エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社 https://www2.hm.com/ja_jp/index.html)のご支援のもと実施しました。
佐賀市の街は城下町、水の都です。平野の広がる佐賀地方では、江戸時代に水路の整備が盛んに行われました。佐賀城を中心に街の中心部に網の目のように張り巡らされた水路は、城を守る役割だけでなく、有明海へと注ぐ川から引いた水を水田にいきわたらせる利水の設備として、物資の運搬路として、或いは大雨時の貯水池として、さまざまな用途で長年活用されてきました。
しかし現代では、水路が使われる機会はほとんどなくなってしまったそうです。
地元活動団体の方々とWWFの取り組み
そこで、佐賀市の中心街の活性化をめざす市民の方々が中心となり、2015年に立ち上がったのが「さがクリークネット」でした。メンバーの皆さんは、カヤックを活用したイベントを実施したり、水辺でマルシェを開いたりと、市内の水路(クリーク)を活かした町おこしに積極的に取り組んでいます。
WWFジャパンは、2017から九州大学・鬼倉徳雄先生のご協力のもと、佐賀・福岡・熊本の3県にわたる水田地帯で淡水魚の調査を実施。その結果をもとに重要な生息地を明らかにし、地図に落とし込む共同研究を行ってきました。この地図は佐賀県庁に採用され、公共事業に際して十分な生物多様性の保全が行なわれるよう、役立ててもらうことになりました。

さがクリークネット代表、川崎さんからのお話し。地元の水路(クリーク)について詳しくご説明いただきました。
しかし一方で、水路が張り巡らされ、生物多様性の豊かな環境を支える水田地帯を守るためには、地域の方々のご理解と関与も大切になります。
加えて、いま世界的に大きな議論となっている海洋プラスチックごみ問題も、街なかの水路と無縁ではありません。陸上で発生しているごみも少なからず水路や河川を通じて海に注ぎ込んでいると考えられているからです。実際に、佐賀市内では年に数回、水路の清掃が行われていますが、プラスチックごみを含めた多くのごみが、毎回、回収されているそうです。
今回のイベントは、地元に密着した水路を守り活用しながら次世代に伝えていきたい、というさがクリークネットの皆さんと、九州北部地域に残された自然を守りたいと活動しているWWFジャパンの想いが一致して行われることになりました。
先人から引き継いだ水路(クリーク)を守りたい
本イベントでは、まず始めに主催者である、さがクリークネット代表の川崎康広さんからお話しをいただきました。
一説によると、佐賀市街地の水路(クリーク)の総延長は2,000㎞、貯水量は2,100万㎥とも言われているそうです。しかし、前述のように、さまざまな用途で昔は活用していた水路も今はほとんど使われていません。そこで川崎さんは、町の活性化のひとつとして、水路をレジャーの用途も含めて活かしていこうと考えたそうです。
街なかのクリークを魅力的にしたい、水と寄り添う暮らしを楽しみたい。そんな思いを一つにする仲間たちとともに、マルシェ、ワークショップ、清掃、カヤック観光などを行っているとのこと。
水路をみんなで使いながら、みんなで保全する、維持する。かつてこの街で行われていたサイクルをまた取り戻すべく、熱意をもって活動されている様子がお話しの端々から伝わってきました。
世界の視点からー海洋プラスチック問題
次いで、WWFジャパンプラスチック政策マネージャーの三沢より、少し視点を変えて海洋プラスチック問題全般についてお話しをしました。
いま、世界の海洋に存在するプラスチックごみの量は推定で1億5,000万トンともいわれています。世界で毎年800万トン、日本からは多くて6万トンが新たに海に流入していると推定されます。これは1分間あたりごみ収集車1台分のプラごみが海洋に入っている計算です。
これらの最大の流入経路は河川で、恐らく9割方は陸地から何らかの形で入っているとみられています。2018年の調査によると、国内の河川には約4,000万本のペットボトルが存在するとみられるとのこと。
日本は途上国に比べるとプラスチックごみの回収体制は整っているものの、その多くが焼却処理されたり、リサイクル用途で海外に輸出されてきました。実際に国内でリサイクルされるのはプラスチックごみ全体の10%強に過ぎません。
水路に出て、ごみを探してみよう!
市民の立場からできることは、まずは使い捨てのプラスチック製品をなるべく使用せずに、ごみを削減すること。次いで、リユースやリサイクルなど、できるだけ自然界にごみを出さない努力をしなくてはなりません。
そのうえで、既に出てしまったプラスチックごみを回収するのも重要です。クリーンアップ活動は、ごみとなったプラスチックがマイクロプラスチックとなってしまうのを防いだり、自分たちのライフスタイルを見直すきっかけにもなります。
今回、クリーンアップ活動を行ったのは、30年ほど前に整備されたという松原川と、昔ながらの佇まいが残る裏十間川の二カ所です。WWFからのお話しが終わるとすぐ、参加者の皆さんは胴長を着用して、イベント会場の裏手にある川へと移動していただきました。

松原川のクリーンアップ

二カ所目の裏十間川では、歩きにくいため杖をつきながらの作業となりました。

ご協賛のH&Mご担当者も参加してくださいました
松原川と裏十間川は、ともに住宅地の中を通る水路ですが、一見するときれいで、特に目立ってごみなどなさそうにも思われました。しかし、いざ、参加者の方々が川底に手を入れたり、道路から見えにくい死角の部分なども丁寧に探してみると、あっという間にさまざまなごみが見つかりました。
空き缶、ビニール傘、スプレー缶にペットボトルはもちろん、ビニール紐や養生テープ、植木鉢、お菓子の袋やホース、更には、壊れたトタン板まで。二カ所あわせて正味一時間ほどの活動時間で、ごみ袋5袋分+αのごみを回収することができました。
クリーンアップ活動には大学生から社会人まで、約20名の方々が参加してくださいましたが、「けっこう深い場所がある」「意外とごみがあるね」などと、皆さんにこやかにごみを探しつつ、水路ウォークも楽しんでいらっしゃいました。いつもの歩道からほんの数メートル下がった水路におりるだけでも、街の風景が少し違って見えたことを新鮮に感じた方もいらしたようです。
クリーンアップ活動後は、会場に戻ってお茶をしながら小休憩していただきました。その際、参加者の方々が自然に輪になり、プラスチックごみ問題について誰からともなくディスカッションが始まったことがとても印象的でした。

作業後のティータイム、参加者の皆さんの会話がはずみます
ひとりひとりの暮らしの中でできることだけではなく、プラスチックを使用している企業にどうしてもらうと良いのか。或いは、社会としてどんな仕組みがあるべきか。
簡単に答えが出ない問題ではありますが、このような形で気軽に市民の対話を深めていくことも、問題の解決に近づく一歩になり得るのではないでしょうか。
イベントの最後には、改めて、さがクリークネットから、発見したごみの種類や量、および事前に参加者の方々が行った簡易水質チェックの結果などが共有されました。
松原川、裏十間川ともに同じような生き物が生息していましたが、今回水質チェックに使用した計測キットによると、裏十間川で採取した水からは、酸素不足で富栄養を示す結果が出たことが分かりました。通りを挟んだごく近所の水路同士にも関わらず、川の水質は異なる場合があること。
一方で、プラスチックごみは同じような内容や量が見つかっていることなどを示し、いかにごみを出さないようにし、そして出てしまったごみをどうやって取り除くのかを考えていかなくてはならない、と総括してイベント終了となりました。

まとめの会でも皆さん真剣に聞き入ってくださいました

たった一時間弱でこの量のごみが
本イベントを主催したさがクリークネット、および、ご協賛いただいたH&Mジャパン(エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社)、そして、参加者の皆さまに心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

作業を終えた皆さん、良い笑顔です。お疲れさまでした!