九州で黄海エコリージョンの日韓干潟交流ツアーを実施


WWFジャパンは、パナソニック株式会社の支援を受け、東アジアを代表する海洋生態系の保全を目指した取り組みとして、「黄海エコリージョン支援プロジェクト」を実施しています。2011年7月、このプロジェクトのモデル地区の一つである韓国・全羅南道のムアン干潟の関係者を招いて、九州の有明海、八代海の干潟を舞台とした「第1回日韓干潟交流ワークショップ」を開催しました。

日本の干潟関係者との交流

2011年7月12日から16日にかけて行なわれたこのワークショップは、地域活性化を視野に入れた干潟の保全と資源の持続的な利用の優良事例を学ぶことを目的とし、佐賀県鹿島市、熊本県八代市、福岡県博多市の各地で開催されました。

ワークショップに参加するために韓国から日本を訪れたのは、全羅南道ムアン郡ヨンサン村の住民、ムアン郡政府の担当官、NGO「生態地平研究所」のスタッフ、雑誌「サイエンス・トンア」の記者などの計11名の方々です。

ムアン郡は、2010年に「黄海エコリージョン支援プロジェクト」のモデル地区として選ばれた地域です。
普段は農業や漁業に従事している住民が、KORDI(韓国海洋研究院)や生態地平研究所の協力を得ながら、地域振興と干潟保全の両立をめざして主体的に活動しています。

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干潟での生物調査実習の様子
(C)WWF Japan

干潟の恵みを守り、活かす現場を視察

韓国からの一行は、最初に佐賀県鹿島市を訪れました。迎えてくださったのは、鹿島市観光協会、地域NPO「水の会」、道の駅鹿島の関係者の皆さんです。

鹿島では、地域が自然の中で育んできた文化や産業を、観光客や子供たちに体験を通じて、理解を深めてもらう事業に地域ぐるみで取り組んでいます。参加者らは、町並み景観の再生や農業体験といった取り組みの現場を丁寧に紹介してもらいました。「ガタリンピック」で有名な干潟では、文字通り、全身泥まみれになる体験を楽しみました。

次に訪れたのは熊本県八代市です。ここでは、市民でも出来る干潟の生き物調査の手法やその有効性、八代海の干潟を利用する生き物の保全活動について、それぞれ熊本大学沿岸域センターの逸見泰久先生、八代野鳥愛好会会長の高野茂樹さんから講義を受けました。

市民によるモニタリングの仕組みを確立することは、ムアン干潟の保全をすすめる上での重要な課題の一つです。

講義の後には、環境カウンセラーとして地元で活動しているつる詳子さんの指導・解説のもと、球磨川河口で干潟調査を実践しました。さらに、川の上流部にあるダムに移動し、川と干潟のつながりの変化が生き物に与える影響について、話を伺いました。

最後の訪問地である福岡県博多市では、これまでの訪問先と異なり、都市化がかなり進んだ地域にある和白干潟と多々良川河口を視察しました。

博多湾は、黄海にも渡来するクロツラヘラサギの重要な中継地でもあります。「ふくおか湿地保全研究会」の皆さんの講義と現場の案内を通じて、行政機関との対話や連携による干潟の保全と再生の取り組みについて理解を深めることができました。

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有明海の漁具のひとつ、潟スキーの体験。
もう誰が誰やら
(C)WWF Japan

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有明海の伝統漁法「ムツかけ」の見学
(C)WWF Japan

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球磨川河口干潟を歩く
(C)WWF Japan

黄海エコリージョンでの取り組みへの還元を目指して

今回のワークショップでは、各地を視察した後に毎晩、それぞれが学んだ内容の意義や自らの課題などについて意見交換が盛んに話し合われました。

農業や漁業に携わる地域住民として、行政担当官として、彼らをサポートするNGOとして、それぞれ立場が異なるものの、ムアン干潟の持続可能な利用と保全のために必要な対策の実施と、地元の水産物を活かした地域振興を目指すという目標を共有しています。

今回の参加者の間からは、
「公務員、地域が活性化のため、一体となり、悩みながら、模索しながら取り組まれていることがよく伝わってきた。これから発展する可能性を感じた(全南開発研究院 キム・ジュンさん)」
「韓国でいろいろな会議をしているが、今回は、韓国ではいえないことがお互いに語り合えたことが良かった。韓国での問題を複雑に感じながら(悩みながら)こちらに来たが、解決の糸口も見つけることができた。また、逆に課題を感じた部分もあった(生態地平研究所 チャン・チヨンさん)」
といった感想も聞かれ、地域の農業や水産資源を活かした観光のヒントや配慮すべき事柄、干潟の生き物を市民が科学的に調査する上での課題など、多くの成果を持ち帰っていただくことが出来ました。

韓国・全羅南道のムアン干潟は、1998年に住民が大規模な干拓事業を撤回させたことをきっかけとして、2001年に韓国で初めてとなる湿地保護地域に指定された場所です。WWFジャパンも、ムアン干潟がラムサール条約湿地として登録された2008年から、KORDI、NGO「生態地平研究所」と共に、保全活動に取り組んできました。

今回のワークショップを契機に、地域が主体となる地域振興型沿岸管理モデルの確立の後押しをし、黄海エコリージョンでの国境を越えた生物多様性保全の取り組みが、世界に誇れる一つの事例になるように、活動を継続してゆきます。

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干潟の市民調査のやり方についての講習会
(C)WWF Japan

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福岡・和白干潟ちかくの名島にて
(C)WWF Japan

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