インド洋のマグロの未来を問う IOTC(インド洋まぐろ類委員会)会合報告


インド洋のマグロ類(カツオ、マグロ(ミナミマグロを除く)、カジキ類)の資源管理について話し合う、国際的な会合「インド洋まぐろ類委員会(IOTC)」。その第20回会合が、2016年5月23日~27日まで、インド洋に浮かぶフランス領レユニオン島で開催されました。この会議の開催にあたり、WWFは海洋保全の取り組みの一環として、過剰な漁獲が指摘されているマグロの一種キハダの漁獲量を2014年の水準から少なくとも20%減らすよう求めました。

危機にさらされるインド洋のマグロ資源

「インド洋まぐろ類委員会(IOTC)」の会合が、2016年5月23日~27日の日程で、インド洋のフランス領レユニオン島で開かれました。

IOTCは、中西部太平洋でマグロ資源の管理を行なうWCPFC(中西部太平洋マグロ類委員会)や、同じく東部太平洋のIATTC(全米熱帯マグロ類委員会)、大西洋のICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)と並ぶ国際機関で、32の国や地域が加盟。

これに4カ国の協力的非加盟国が加わり、年に一度、各国の政府代表による会合が行なわれています。

インド洋には、日本でも多く消費されているメバチをはじめ、キハダやミナミマグロといったマグロ類が広く生息。

いずれも、海の生態系の頂点に立つ重要な種です。また、沿岸の途上国では、これらマグロ資源は重要な経済基盤ともなっています。

しかし、近年その漁獲が増加。

2016年のIOTC会合の開始に先駆けて発表された、科学委員会の資源評価の結果でも、特にキハダが2013年以降、過剰漁獲となっていることが分かっています。

マグロ類の資源状況について調査と評価を行ない、それを各国政府に伝える役割を担うこの科学委員会では、現在のまま高水準の漁獲が続けば、数年以内にキハダの資源が枯渇する危険があるため、キハダの(2014年比)20%の漁獲削減が必要であると勧告しました。

マグロ資源管理にかかわる世界の国際機関。 海域や魚種によって管轄が異なる。くわしく見る

キハダの漁獲削減を求めて

この科学委員会の勧告に基づき、WWFは今回のIOTC会合の開始にあたり、マグロに関連したビジネスを手がける38の企業と共に、キハダの漁獲量を2014年比で20%削減するよう求めました。

このキハダは、マグロ類の中では世界で最も漁獲量が多く(カツオを除く)、主にツナ缶としてヨーロッパを中心に消費されています。

インド洋で生産されるキハダは世界全体のおよそ2~3割を占めており、その保全と利用は、国際的なマグロの資源管理にも影響を及ぼします。

世界のキハダの約11%を消費している日本にとっても、今後の資源管理と保全の行方は、深いかかわりのある課題といえるでしょう。

WWFでは太平洋のクロマグロやメバチなどと同じように、このキハダについても、持続可能な資源の利用と、そのために必要な漁業規制を強く訴えています。

キハダは、世界の熱帯・温帯域に広く分布するマグロの一種で、最大では体長200cm、体重200kgに成長し、寿命は約10年といわれています。

インド洋でのマグロ漁

IOTC会合での議論

そうした中で開催された今回のIOTC会合には、加盟している32のうち、26の国と地域が参加。

まず、IOTC科学委員会の勧告によるキハダ資源の危機が共有され、今後どのように資源を保全していくかについて活発な議論が交わされました。

結果として、科学委員会で勧告された20%削減には至らなかったものの、インド洋におけるキハダについて漁獲方法により5%から15%の漁獲削減について合意がなされました。

また、別途WWFが要求していた、将来的に資源の減少が懸念されるインド洋におけるカツオの漁獲管理ルールについても、合意が実現しました。

こうした世界の漁業資源の管理に携わる国際会合は、各国の利害がぶつかるため、積極的な漁獲制限を求める提案などについては、なかなか合意に至りませんが、今回の会合では、次につながるような合意が形成されたといえます。

WWFではこの点を評価しつつ、IOTCの加盟各国に対し、今後もインド洋のキハダのより厳格な漁獲削減や、今回合意に至らなかったサメの資源管理についても強く訴えていきます。

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