パンダが「危急種」に レッドリストの最新版が公開


アメリカのハワイで開催されているIUCN(国際自然保護連合)の総会において、「レッドリスト(絶滅のおそれのある世界の野生生物のリスト)」の最新版が公開されました。今回の更新では、ヒガシゴリラやハワイ固有の植物群の絶滅危機が、さらに高まっていることが明らかにされる一方、ジャイアントパンダなど一部の種については、従来よりも危機のレベルが下がったことが指摘されました。

乱獲や密猟による脅威が増加

新しく発表されたレッドリストに「絶滅危機種(Threatened species)」として掲載された世界の野生生物は、2万3,928種。

2015年の更新時の2万3,250種から600種以上が増えた結果となりました。

今回、注目された点の一つは、アフリカ東部に生息する、ヒガシゴリラ(Gorilla beringei)の危機レベルが「EN(絶滅危惧種)」から「CR(近絶滅種)」にランクアップされたことです。

ヒガシゴリラは、ヒガシローランドゴリラ(G.b.graueri)とマウンテンゴリラ(G.b.beringei)の2亜種に分けられますが、今回の評価は特に、ヒガシローランドゴリラの危機を反映したものとなりました。

危機の主因は密猟。最新の総個体数は、5,000頭未満と報告されています。

マウンテンゴリラについては、保護活動によって880頭まで増えていることが確認されていますが、種全体では過去20年間で個体数が70%減少したとみられています。

今回の評価によって、世界に生息する大型類人猿6種のうち4種が、絶滅危機の最も高い「CR」にランクされることになりました。

また、同じくアフリカに生息するソウゲンシマウマ(Equus quagga)やダイカー類(Cephalophus sp.)などの大型草食獣も、絶滅の危機がほぼ無いとされてきた「LC(低危険種)」から「NT(近危急種)」に、それぞれランクが一つ上がりました。

生息環境の劣化、そしてブッシュミート(食肉)などを目的とした密猟が、その主因です。

特に、ソウゲンシマウマは渡り鳥のように季節に応じ大距離を移動しますが、保護区の外で狩られる例が跡を絶たず、過去14年間で66万頭いた個体数は50万頭に減少。

今のところはまだ、深刻な危機が指摘されるレベルではありませんが、野生動物の密猟がいまだに大きな脅威となっていることが、明らかになりました。

大幅な減少が懸念されているヒガシローランドゴリラ

同じくヒガシゴリラの亜種マウンテンゴリラ。ルワンダの内戦などで危機が深刻化しましたが、懸命の保護活動によって回復しつつあります

ソウゲンシマウマは季節によって、水と草を求め群で「渡り」をする。この旅の途中を狙われることが多い

外来生物の脅威

今回のレッドリストの更新では、ハワイの固有植物の危機も注目されました。

ハワイはガラパゴス諸島などと同様に、大洋に浮かぶ島嶼として、多くの固有種(世界でその場所にしか生息していない野生生物)をはぐくむ独特な生態系が形作られてきました。

しかし、人が島々に持ち込んだ、イヌやネコ、ネズミ、カ、など、外来生物の侵入によって、これらの固有種は深刻な打撃を受け、少なからぬ野生動物が減少、絶滅してきた歴史があります。

植物についてもこの危機は同様で、発表された最新版のレッドリストでは、調査対象となった415種のハワイ固有の植物のうち、87%が絶滅の危機にあり、すでに38種が絶滅したことが明らかになりました。

危機の原因は、やはり人が持ち込んだ、ブタ、ヤギ、ナメクジ、また他の植物による食害や生息域の減少です。

外来生物による影響は、特にハワイのように狭く限られた地域では大きく顕れ、固有種の絶滅を引き起こすことから、IUCNもこうした生物の他地域への持ち込み、移動の禁止を強化する必要を指摘しています。

ハワイミツスイ類の一種ムネフサミツスイ(Moho nobilis)。ハワイにしか生息していなかったが、1930年代に絶滅した。ハワイでは固有の植物と動物たちが独特な生態系を織りなしているが、いずれも外来生物によって脅かされている

ジャイアントパンダの危機レベルが減少

一方、ジャイアントパンダやチルー(チベットアンテロープ:Pantholops hodgsonii)については、絶滅危機のレベルが、それぞれ下がったことも発表されました。

チベット高原に生息するチルーは、以前、極寒によく耐えるその毛が、シャトゥーシュと呼ばれる上質の毛織物の原料となるため、乱獲され激減。

1980年代から90年代にかけて、最大でも7万2,500頭まで減少しましたが、その後の密猟対策の強化により、10万~15万頭まで回復したことが明らかになりました。

チルーはこれによって「EN(絶滅危惧種)」から「NT(近危急種)」に2つレベルが下がり、「絶滅危機種」と称される、CR、EN、VUのいずれからも、外れることになりました。

ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)についても、総個体数は1,864頭といまだ少ないながらも、生息地の保全活動により、2014年までの10年間で個体数が17%増加。

今では、生息域の3分の2が保護区に指定されるまでになり、危機ランクが「EN(絶滅危惧種)」から「危急種(VU)」に、一つ下がりました。

しかし、限られた山地の森にすみ、タケという特定の食物に頼って生きるジャイアントパンダについては、地球温暖化による今後の影響が懸念されています。

IUCNでは、今後80年間に、ジャイアントパンダの生息地の35%以上が失われ、その段階に合わせて個体数も減少すると予測。

森林の保全はもちろんのこと、それだけではこうした野生生物の未来を守れないことを、あらためて指摘しました。

チルー(チベットアンテロープ)。上質の毛を狙われ、一群がすべて密猟される例もあった

ジャイアントパンダ。WWFはも保護区の設立や、それをつなぐ緑の回廊(コリドー)の設置を支援する一方、地域社会と協力した持続可能な開発を目指すことで、森林への影響を最小限に抑える取り組みを続けている。

パンダの生息地をパトロールするレンジャーたち。これからの生息環境の保全には、温暖化への対策も求められる

今回のIUCNのレッドリストの発表は、より進んだ研究に基づき、今まで知られていなかった脅威を多く明らかにするものとなりました。

地球環境が今、どのような状況にあるのか。その指標となり、象徴ともいえる野生生物の未来は、人類自身の未来を示すものでもあります。

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