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スマトラ島のパーム油生産農園、RSPO認証の本審査を実施

この記事のポイント
2018年10月、WWFジャパンがWWFインドネシアと共に支援を実施してきたアブラヤシ農園を対象に、RSPOの本審査が実施されました。RSPO認証は、森林環境や地域社会に配慮して栽培されたアブラヤシ農園や、そこで生産された持続可能な認証油を取り扱う加工・流通企業に与えられる認証です。今回、審査対象となるのは、合計152.60ヘクタールの農園を経営する82名の小規模農家からなる生産組合です。4日間に渡って実施された本審査の結果、早ければ2019年上旬には、認証の取得が実現する見込みです。

小さなアブラヤシ農家の挑戦

インドネシアの最西端に位置するスマトラ島は、日本よりも約1.25倍大きな島です。
かつては島全体が熱帯林に覆われていましたが、過去30年間で、その半分以上が失われ、大規模なアブラヤシの農園(プランテーション)などに、その姿を変えてきました。

©Mauri Rautkari / WWF

熱帯林の様子。

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©WWF Indonesia

スマトラ島の森林減少

このアブラヤシは日本をはじめ世界中で最も利用されている植物油「パーム油」の原料となる作物です。

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パーム油は食品、日用品、化粧品などに含まれている。

特に、島の中央に位置するリアウ州は、現在アブラヤシの作付け面積、生産量、小規模農家の農園面積と世帯数、共に世界一の州。

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アブラヤシ農園。

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アブラヤシ農園の拡大により、トラなどの希少な野生動物はすみかを追われてきた。

地球上のどこよりもアブラヤシ生産が盛んであるからこそ、この地域で、持続可能な形でアブラヤシを生産する先駆となる取り組みが必要とされてきました。
そこでWWFジャパンはWWFインドネシアと協力し、2014年からパーム油の生産を手掛ける小規模農家への支援を継続してきました。
小規模農家とは、主に家族経営で約2ヘクタールほどの大きさの農園を運営しているアブラヤシの専業農家を指します。現在世界中で消費されているパーム油の約40%がこうした小規模農家により生産されています。

支援対象となったのは、2ヘクタール前後の作付面積でアブラヤシ農園を運営する、小規模農家の人々です。
この取り組みの目標は、周囲の自然環境を破壊せずにパーム油の生産ができるよう生産効率を向上させ、最終的には持続可能なパーム油の証明である「RSPO認証」を取得すること。
RSPOを取得する上では、適切な知識や技術、またノウハウも必要ですが、こうした小規模農家の人々は、企業や搾油工場とも契約を結んでおらず、独立して運営されているため、認証取得までの運用や経理、また農法に関してもトレーニングなどの支援が必要とされてきました。
また認証の取得には、審査に必要なコストもかかります。
このため小規模な農家は、各世帯では認証を取得することができず、組合などのグループで認証を申請する必要があります。
そこで、WWFの支援により地域の小規模農家が生産組合を設立。RSPOが推奨する、環境や労働環境に配慮した農法や、農園の運営に必要な技術について、さまざまなトレーニングが組合のメンバーに行なわれてきました。

グループ名 マンデリ・アソシエーション生産組合
(マンデリとは、インドネシア語で独立という意味)
メンバー人数 82名
認証審査対象面積 152.60ヘクタール
RSPO会員 2016年12月19日~(No. 1-0224-16-000-00)
https://www.rspo.org/members/4783/Asosiasi-petani-Kelapa-Sawit-Swadaya-Mandiri

4日間に渡る審査スケジュール

4年に渡るトレーニングの後、組合のメンバーのスキルが十分に向上したことを受け、グループ認証の取得を申請。
今回、本審査を受けることになりました。
実際の審査は以下のスケジュールで実施されました。

1日目 公聴会(パブリックコンサルテーション)
2日目 書類審査
3日目 現場審査
4日目 書類・現場審査(2~3日目の続き)
閉会式(審査員による改善要請項目の発表)

審査を担当するのは、RSPOに認定された、独立した第三者認証機関です。生産組合の農園が、持続可能な形で適切に管理されているかどうか、認証機関の4人の審査員がチェックをしました。

1日目:公聴会

審査の公聴会には、農家をはじめ、村のさまざまな関係者が訪れました。
この場で審査員はRSPOの原則と基準に関するランダムな項目を参加者に質問。
例えば、組合のメンバーが土地紛争の問題を起こしていないか、労働基準法は遵守されているか、貴重な野生生物のいる地域を農園にしていないか、といった質問を、組合のメンバーを知る村民や家族、政府関係者に対し投げかけてゆきます。

さらに、政府関係者には、環境面、労働面に関する質問が行なわれ、回答者はそれぞれの持参した管轄下にある地図や裁判履歴などの書類を示し、その場で照らし合わせながら、審査員に答えます。
これを通じて、認証を取得しようとしている組合の農園での運営が、環境的・社会的・経済的に、継続して成り立つのか、RSPOの基準に抵触するような問題が起きていないか、公開された場で審査するのです。

2日目:書類審査の実施

書類審査では、組合内の運営で使用されるすべての書類が審査対象となります。例えば組合の組織図や、メンバー構成、各メンバーの責任の所在、農家が組合へ参加する承認システムなどもチェックされます。ここでは、組合の運営に関わる全ての関係者(例:銀行、政府、肥料や除草剤の卸元、すべての搾油工場、警察など)の連絡先リストを提出する必要があります。

©WWF Japan

写真左:組合の組織図と各メンバーの役割について質問する審査員。写真右:通帳の残高を領収書と共に確認する審査員と、組合の経理担当者。

通帳や、領収書も細かに確認し、組合からメンバーに対してきちんと賃金が支払われているのかも審査されます。経済的に組合の運営が成り立っているのか、今後も成り立つのかをチェックするのは、審査の重要なポイントです。

森林破壊が起こしていないかは、農園の地図と、過去の衛星地図上での森林の位置を、刷り合わせながら審査が行なわれます。
各農園の面積や位置は、書面上だけでなく次の日の現場審査でもGPSを用いてチェックされます。

©WWF Japan

写真左:農園の分布や大きさを確認しながら、地図と森林の位置もチェックする審査員。写真右:実地でのGPS情報を取得し、書類の情報が正しいかどうかを現場で確認する審査員。

3日目:現場審査の実施

どの農園で現場審査を実施するかは、審査員が前日の夜に発表します。ランダムに選ばれた組合の複数の農家が、RSPOのルールや方針を理解しているか、ヒアリングも交えた審査が行なわれます。

審査員の質問「どうして、小川の近くで除草剤を散布してはいけないのですか?」
農業者の回答「小川はいろいろな生物が生きるために必要で、私たちに必要な水源になるからです」。
これまでのWWFのトレーニングより、農家の人々はこうした質問にも答えられるようになりました。

保全が必要な地域の近くでは、村の全ての人がそう認識できるよう、立て看板が立てられます。

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写真左:保護価値の高い地域の近くに設置される看板。その場所、情報内容、数もチェックされる。写真右:RSPOの原則と基準に関する質問をする審査員。

©WWF Japan

認証の対象農家とそうでない農家の大きな差の1つが、除草剤の使用状況。左側は過剰に使用されているため、下草が赤く枯れてしまっている。右側は適切に使用されている組合の農園。(除草する必要のある下草と、ない草の区別ができている。)

除草剤の利用については、最低限の利用が推奨され、使用する場合は、メーカー名と、その除草剤を使う理由、含まれる化学物質の知識も問われます。
世界保健機関(WHO)によって使用を禁止されている除草剤は、RSPOでも使用が禁止されています。
また農薬の使用時は、必要な防具を身に着けている必要がありますが、なぜ防具が必要なのかなど、その理由も問われます。
こうしたトレーニングが行なわれていない地域の農園などでは、適切な農薬の使用方法がきちんと理解されず、無駄に大量の薬を散布したり、失明などの健康被害が生じる例があります。
RSPOのルールに沿った農園の運営をすることで、こうしたリスクを軽減することにもつながるのです。

©RSPO

必要な防具を身に着けて除草剤を散布している様子。除草剤の不適切な散布により失明するなどの被害が報告されているため、RSPOの原則と基準では除草剤の利用方法についてもルールが設けられている。

4日目:閉会式

4日目は、書類審査と現場審査の予備日です。組合に雇われてアブラヤシの果房を採集する担当の人、採集後に搾油工場まで運ぶ人も聞き取りの対象になります。

©WWF Japan

写真左:農家によっては現地語(マレー語)しか話せない人もいるため、審査員は現地語も使い組合員に質問する。写真右:農園から搾油工場まで、組合のメンバーでない農園からの果房が混ざらないようにどのように工夫しているのかを質問する審査員。

すべての項目が終了すると、審査員はその日に結果を発表します。この時点で準拠しない項目がある場合は、1年以内に改善を証明する必要があります。必要書類を再提出する中で、項目によっては、審査員の実地訪問が再度必要になるケースもあります。

必要書類がすべて受託され、第三者認証機関の承認がおりれば、RSPO認証書が発行されます。
それと同時並行で、認証機関はRSPOへサマリーレポートを提出します。RSPOがそのレポートを承認すれば、マンデリ・アソシエーション生産組合はRSPOの認証パーム油の原料として、アブラヤシの果房を販売することが可能になるのです。

2014年からこの小規模農家のトレーニングに携わり、今回の認証にも立ち会った、WWFインドネシアの現場担当者レタは、次のようにコメントしています。

©WWF Japan

WWFインドネシアのレタ。手にしているのは、レタがゼロから作成した小規模農家による生産組合のための内部統制システム文書。

「本審査では、いくつかの改善事項も指摘されました。こうした課題の中には、今の生産組合だけでは解決できない問題もあります。
たとえば、除草剤を使用するメンバーは、定期的に健康診断を受ける必要があるのですが、この村の病院には診断ができる設備がありません。
こうした項目については、村役場の協力も得て改善をしていく必要があります。
それでも、大きな問題はなく、早ければ2019年の上旬にはマンデリ・アソシエーション生産組合が認証を取得できる見込みです」

日本でも毎日使用されるパーム油

インドネシアで生産されるパーム油は、日本にも年間約18万トン(2016年)という量で輸入され、消費されています。

WWFでは、生産地域と一体となる取り組みをインドネシアでも推進しながら、日本でパーム油を調達し、製品を生産している企業に対しても、このRSPO認証を受けた持続可能なパーム油の使用を働きかけています。

国境を越えた、RSPO認証をツールとした持続可能なパーム油の生産と利用の拡大を目指した取り組み。
それは今ものこる貴重なインドネシアの森と、その森との共存を目指す地域の人たちの暮らしを守る挑戦です。
WWFはこれからも、日本とインドネシア双方の国の事務局が協力して、この活動を推進してゆきます。

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