やんばるの森、オキナワトゲネズミ調査レポート


2011年2月23日から3月3日にかけて、沖縄本島の北部「やんばるの森」で、絶滅危機種オキナワトゲネズミ(Tokudaia muenninki)の生息調査が行なわれました。調査は2007年に南西諸島生物多様性評価プロジェクトの一環として、森林総合研究所に委託する形で始められたもので、2010年と2011年の調査は、700名以上のWWFサポーターの皆さまからの寄付を得て、実施されました。

2010年に続くさらなる調査

2011年の調査の目的は、2009年以降のこれまでの継続調査や地元の関係者の知見から推定された生息域の周縁を、重点的に探索することです。 また、絶滅の危機に瀕しているオキナワトゲネズミの遺伝的多様性を調べる研究に協力するため、トゲネズミを捕獲し、尻尾の先の皮膚細胞を採取することも重要な任務です。

調査は、森林総合研究所の山田文雄さんの指揮のもと、トゲネズミ研究の専門家(遺伝学、飼育繁殖学など)が、地元のアージ研究会や環境省やんばる野生生物保護センターの協力を得て、トゲネズミ調査隊を結成して行ないました。

探索には、赤外線カメラとカゴワナを用いました。赤外線カメラは、シイの木の根元など、トゲネズミが好みそうな場所を見下ろす形で設置していきます。写真データは定期的にパソコンにダウンロードし、一枚一枚確認をし、根気のいる作業です。

それが終わると、感度や撮影間隔の設定を再調整し、必要に応じて設置場所を変更します。今回のカメラ調査では8台のカメラを用い、延べ8カ所に設置しました。撮影した数千枚の写真の中の数枚でオキナワトゲネズミと思われる個体を確認することもできました。
なお、赤外線カメラ調査は他の場所で、今も継続しています。

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赤外線カメラの写真をチェックするトゲネズミ調査隊メンバー

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赤外線カメラが捉えたトゲネズミらしきもの(木の根元)(左上は拡大

捕獲に成功!

カゴワナ探索では、トゲネズミがカゴの中で風雨にさらされないよう設置場所と方法に細心の注意をはらいました。

ワナの設置場所は全部で12カ所ほどになりましたが、1カ所に10-20個のワナを設置し、翌日にすべて見回りをし、反応のないワナは新たな場所に設置をすることを繰り返しました。ハブなどの危険生物に遭遇する可能性もある中での、体力的にも大変な作業です。

調査期間中に延べ500個ほどの設置をしました。このような調査から、推定生息域の周縁部では1カ所生息を確認することができました。

さらに、遺伝的分析用の試料を採取する必要があるため、これまでの調査でも生息が確認されている推定分布域の中心にワナを設置した結果、合計7個体を捕獲することができました。

捕獲したトゲネズミは、体重などを計測し、尻尾の先の皮膚細胞を採取した後、その日の夕方に森に帰しました。

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指導を受けながら、
ワナをセットする調査メンバー

オキナワトゲネズミ 動画

外来種や生息地の減少が依然として大きな脅威

今回のカゴワナ調査では、推定分布域の周縁部だけでなく、中心域でも捕獲状況が芳しくありませんでした。

トゲネズミが好んで食べるドングリのシイの実が2011年は豊作で、地面にたくさん落ちており、カゴワナの餌の魅力が少なかったり、ネズミの数の少ない年だったせいかも知れません。

しかし、それにつけても、外来生物の存在がオキナワトゲネズミに脅威を与えていていることを強く実感できました。
それは、今回の調査中や地元の方々の情報から、推定生息域の中心にまで野生化したネコやイヌ(ノネコ、ノイヌ)が入り込んでいることがわかったからです。

現在も捕獲対策が行なわれていますが、まだまだ解決していないので心配です。オキナワトゲネズミの残されたわずかの生息地に、ノネコやノイヌが入り込めば,無防備なオキナワトゲネズミはひとたまりもなく、絶滅してしまいます。

オキナワトゲネズミの生息が確認された周辺の森は、もともと木材生産の拠点地区として、伐採対象地となっていました。

しかし、WWFジャパンからの2009年の要望に回答する形で、沖縄県はトゲネズミの生育環境保全を積極的に図るため、生息地域及びその周辺での森林伐採について、対象地から除外するよう関係機関に迅速に働きかけを行ないました。

今回の調査から,オキナワトゲネズミの分布域は、2009年の知見よりもやや広い範囲で生息していることが明らかになりました。

得られた知見や外来生物の脅威に関して、沖縄県や環境省、研究者などの関係者と共有し、オキナワトゲネズミの保全を進めて行きたいと思います。

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捕獲したオキナワトゲネズミ
(夕方には捕獲した場所から森に帰しました)

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尻尾の先の皮膚細胞を採取し、
その遺伝的多様性を調べることが出来ます

トゲネズミ調査隊メンバー

森林総合研究所 山田文雄さん*
岡山理科大学理学部 城ヶ原貴通さん
北海道大学黒岩研究室 村田知慧さん* 木戸文香さん*
宮崎大学 越本知大さん
近畿大学 三谷匡さん

調査協力

アージ研究会 村山望さん 河内紀浩さん 小高信彦さん ほか
環境省那覇自然環境事務所 阿部愼太郎さん*
環境省やんばる野生生物保護センター 
加藤麻理子さん 福田真さん 中田勝士さん*

調査同行・取材
WWFジャパン 安村茂樹

*アージ研究会(オキナワトゲネズミ保全研究会)のメンバー 

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トゲネズミ調査隊メンバーの皆さん

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