「ヒョウの森」国立公園設立へ 大きな一歩


極東ロシアの森でWWFが長年力を入れてきた「ヒョウの森」国立公園の設立。2008年に、周辺の複数の保護区を統合し、一つの国立公園を設立する合意が交わされて以降、管理や資金の調達のため続いてきた調整が、2011年5月16日に開かれた会合でようやく新たな展開を見せました。より効果的な保護区となるための課題が決着し、難航していた広大な新しい国立公園の設立へ向け、大きく前進することになりました。

求められる新たな「国立公園」

針葉樹と広葉樹の混在する豊かな森が広がる極東ロシア。ここは、その数、約40頭と推定される野生のアムールヒョウが生息する世界唯一の場所です。WWFは、この絶滅寸前のアムールヒョウの保護と生息地である森を守るため、さまざまな活動を行なってきました。その一つに、「ヒョウの森」国立公園の設立があります。

WWFが国立公園化に力を入れてきた理由は、アムールヒョウの生息域を、出来る限り広く、良い状態で保全する必要があると考えるからです。現状では、ヒョウの生きる森は複数の保護区にまたがり、意思決定や規則がそれぞれの管轄により異なり、十分な管理が行なわれているとは言えない状態です。また、生息地である森林の質も、伐採や火災などの影響により劣化が進んでいることも問題となってきました。

そのため、複数の保護区を一つに統合して管理するとともに、面積も拡大し、森がかつてのような多様で豊かな質の高い状態へと回復されるよう、「国立公園」を設立するべきと主張してきました。

乗り越えた高い壁

2008年にこの新しい国立公園の設置に向けて、複数の保護区を統合管理することが合意されて以来、管理面や資金面に関するより具体的な議論が継続されてきました。

しかし会議は難航し、3年近い月日を経てようやく、新たに設立される国立公園の概要が決定されました。

以下の内容を含めたこの決定事項は、「ヒョウの森」国立公園が単なる書面上のものではなく、適正に管理され、保護区としての役割を十分に発揮できるようにするためのものです。


20110714map01.gif
20110714map02.gif

拡大される保護区の予定地図。緑点=ヒョウ足跡、赤点=トラ足跡、緑=追加される保護区、青=ケドロバヤパジ保護区、桃=レオパルドロビ保護区、黄=国境

  • 面積の拡大と管理体制の一元化
    保護区の総面積を、現存する保護区の約2倍の面積(38万ヘクタール=埼玉県とほぼ同じ広さ)に拡大。ケドロバヤ・パジ国立自然保護区とレオパルドヴィ野生生物保護区を統合するほか、中国との国境近くの警備地帯、周辺の複数の狩猟区や、その他の土地所有者の区画も新たに追加。さらに、これらの複数の異なる管理組織や所有者のもとにある土地を、ケドロバヤ・パジ国立自然保護区が主導する形で、統合管理する。
  • 資金の確保
    38万ヘクタールの保護区を管理するための資金を、ロシア政府が支出する。この資金は、国立公園を、適正に管理するための、パトロールや森林火災対策などに充てられる。
  • レンジャーの増員
    これまでの3倍に増員。トラやヒョウを狙った密猟が後を絶たないこの地域で、密猟や違法伐採などの取り締まり活動を強化し、保護区の効果的な運営を行なう。
  • 中国との国境をまたがる保護区の設立を検討
    アムールヒョウやシベリアトラ(アムールトラ)の生息地は、ロシアと中国との国境地帯に広がるため、ロシアで十分に保護管理がなされても、中国側で保護がなされなければ、生息域全体を守ることにはならない。そこでロシアは、国境を越えた保護区の設立を、中国に対し求めてゆく。

これから本番!ヒョウの森の保全

ついに大きな前進を見せた「ヒョウの森」国立公園の設立に向けた歩み。この他にも極東ロシアでは、政府主導によるトラやヒョウの保護や生息地の森林保全に関する動きが活発になっています。特に2010年後半からは、7月に森の生態系を支える上で重要なチョウセンゴヨウがワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)」の付属書3に掲載され、違法伐採の取り締まりが強化されました。

また、9月にはプーチン首相が、ヒョウ保護のための施策をとるよう関係機関に要請。11月には、世界初のトラ保護を目的とした「世界トラ保護会議」が開催され、インドや中国などトラの生息する13カ国の代表が集まり、「トラ回復プログラム」が合意されました。さらに同11月には、チョウセンゴヨウの伐採が、全面的に禁止されました。

いよいよ歩調を速めてきたと言えるアムールヒョウとその生息地保全に向けた取り組み。今回のロシア政府による決定を受けて、WWFロシア代表のイゴールチェスティンは、「WWFは10年にわたり、この決定が下されるよう努めてきました。この物語を終えるため、残されている課題は、アムールヒョウの個体数を回復させ、持続可能な自然の利用を保証する「ヒョウの森国立公園」を設立することです」と述べています。

WWFでは今後も、「ヒョウの森」国立公園化が確実に前進するよう、ロシア政府や地域社会への働きかけを行なっていきます。

 

記者発表資料 2010年5月16日

アムールヒョウ

WWFも、これまでの雪上の足跡を用いたアムールヒョウの生息調査に加え、2011年からはカメラトラップを導入。5月から6月にかけては、約820人のボランティアにより約60万本のチョウセンゴヨウを植えるキャンペーンも行ないました。また、日本で募った寄付を基に、森林火災を防ぐための防火帯の設置などにも取り組んできました。

関連記事

関連サイト


 

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは世界約100か国で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP