東日本大震災「つながり・ぬくもりプロジェクト」が目指す、復興への自然エネルギー活用
2011/09/08
東日本大震災の被災地で、自然エネルギーを使った支援に取り組んでいる、「つながり・ぬくもりプロジェクト」。2011年4月4日の発足後、現在までに、宮城県・岩手県を中心に、太陽光発電システムや太陽熱温水器を、避難所や被災した学校へ提供してきました。自然エネルギーを基盤とした持続可能な社会づくりを目指す複数の団体が展開している、このプロジェクトの現状を報告します。
その後の「つながり・ぬくもりプロジェクト」三つの新段階
2011年3月11日、東北、関東を襲った東日本大震災。この未曽有の大災害は多くの人命を奪い、沿岸の暮らしを破壊しました。
発生から半年を前にして、被災自治体では不明者の探索や瓦礫処理とともに、ようやく復興計画の検討が本格化しましたが、被災した人々の生活は、まだやっとライフラインが戻ったところ、という場合も少なくありません。
復興をめざし被災地の状況が刻々と変わっていくなかで、「自然エネルギー」を活用して、被災地のお役にたてることは何か?
2011年7月、WWFジャパンもその一員として参加している、「つながり・ぬくもりプロジェクト」協力団体では、被災された方々の避難所から仮設住宅への入居が始まるに当たり、自然エネルギーが最も必要とされる次の段階を検討しました。
その結果、それまで行なってきた、広範な被災地で生じているさまざまなニーズの聞き取りの中から、各地の状況を「緊急支援フェーズ」「復旧支援フェーズ」「復興支援フェーズ」の3つに分類し、対応していくことになりました。
今後も各フェーズで本当に必要とされる活動を、資金調達と現場の設置をうまく組み合わせて、展開していきたいと考えています。
緊急支援フェーズ【2011年4月~6月】
電気や水道が断たれた被災地の方々への支援
太陽光パネル・太陽熱温水器・薪ボイラー・薪かまどを避難所などに設置して、被災された方々が、電気(照明、携帯電話などの充電、洗濯機など)、お湯(炊事、シャワーなど)、お風呂を利用できるようにします。一人でも多くの方々が、電気や温水で安心していただけることを目指しています。
復旧支援フェーズ【2011年7月~12月】
電気やガスの復旧後の安全確保・生活支援・雇用創出
被災地では電気やガスは復旧のメドがたってきましたが、街灯がありません。ソーラー街灯を設置することで、通学路での子どもたちの安全を確保します。
また、防災無線基地や、避難所となる学校や集会所に設置し、緊急時にも、情報の発受信や非常用の明かりの確保をします。
仮設住宅への設置もすすめて、被災された方々の光熱費の負担を軽く、安定した暮らしをお手伝いします。
さらに、保育園や幼稚園など設置して、園の運営を支援します。ご両親への生活支援とともに、自然エネルギーに接する体験も子どもたちに提供します。
復興支援フェーズ【2012年1月~9月】
自然エネルギーを復興の柱に
被災地の復興計画の中に、「自然エネルギーの活用」を織り込んでいくことを進めていきます。
地方自治体や協力企業と一緒にプランニングし、地域での自然エネルギー普及の核となる人材を育成して、被災地において自然エネルギー産業の形成を促していくことを目指します。
WWFジャパンが行なった支援
WWFジャパンは、8月までの緊急支援~復旧支援のフェーズの中で、津波被害でいっときは半数以上の町民が避難生活を送った宮城県南三陸町の、戸倉地区への太陽光発電の緊急支援、地盤沈下や水源喪失のため、避難生活が長引く同じ宮城県の石巻市湊町への支援などを、つながり・ぬくもりプロジェクトの現場支援団体とともに行なってきました。
また、さまざまなテーマを手がけるWWFの持ち味を発揮できたのが、岩手県気仙郡住田町の仮設住宅への、太陽熱温水器支援でした。
東日本大震災から間もない3月下旬、WWFジャパンが推進しているFSCの日本関係者から、FSC森林認証林を持つ住田町がいち早く、町独自に仮設住宅を建設し、隣接する陸前高田市、大船渡市の被災者の皆さんの支援に乗り出した、という情報が流れてきました。
全国の物流が混乱の極みにあったころ、FSC関係者とともに不足する部材の調達のつてを探しながら、「せっかくならエネルギーもエコに」と思ったのが、つながり・ぬくもりプロジェクトをご紹介するきっかけでした。
関連記事:スタッフブログより
今後の展開
WWFジャパンでは、今後も「暮らしと自然の復興プロジェクト」を通じて、「つながり・ぬくもりプロジェクト」との協働を進めていきます。
中でも、「暮らしと自然の復興」の柱となる「被災地の水産業の復興と、それを生み出す沿岸域の生物多様性の回復」に向けて、モデル地区の基盤整備に少しでもお役に立てる自然エネルギー・インフラの導入を目指したいと考えています。
また、そういった自然と向き合う第一次産業の現場で自然エネルギーの活用が進めば、持続可能で自立的な社会インフラを備えた、先進的なコミュニティーの再興にも結びつくのではないでしょうか。