【COP17報告】「メカニズム」をめぐる議論:日本はクリーン開発メカニズム(CDM)を使い続けることができるのか?


日本が京都議定書の第2約束期間で目標を持つことを拒否していることに関連して、複数の途上国から、クリーン開発メカニズム(CDM)の継続使用について異議の声が挙がっています。「京都議定書の目標のために作られた仕組みを、目標を持たない国が使うべきではない」という主張です。

ベネズエラやブラジルなどの主張

ベネズエラやブラジルなどを筆頭に、「CDMは京都議定書の目標のために作られた仕組みなのだから、京都議定書の第2約束期間の目標を持たない国は、CDMを使う資格はないはずだ」と主張しています。

この主張は、今年に入ってからの交渉において一部の途上国が繰り返し主張しており、新しくはありませんが、ここに来てさらにそのトーンが強まっています。

この主張の背景には、言葉通りの原則論に加えて、京都議定書の第2約束期間に参加しない日本などの先進国にプレッシャーをかける意図もあると考えられます。

もともとCDMは京都議定書の下で作られた仕組みです。先進国が、途上国で行った排出量削減プロジェクトからの削減量を「クレジット」として、自国の目標達成に使えるというものです。

日本は、京都議定書の第2約束期間には参加しない(京都議定書の下では2013年以降は目標を持たない)立場を明確にしていますが、CDMについては、自主的な目標の中で使い続ける意志があることを表明しています。

原則論に添えば、ベネズエラやブラジルが主張していることはもっともであり、自国にとっては都合がよい部分だけは使おうとしているという意味において、議定書の「つまみ食い」と言われても仕方ありません。

CDMのクレジットは民間レベルで取引されるので、仮にCOPMOPの場でそういう決定が出てたとしても、どこまで実際に制限がされるかは分からない部分もありますが、象徴的な意味は大きいと考えられます。

今回の会議も終盤にさしかかってきました。この問題について、各国がどのような結論を出すのか、注目されるところです。

残る懸念

ただ、1つ注意をしなければならないのは、この結果として、何がおきるかということです。

日本は現在、二国間オフセット・クレジット制度というものを国連の仕組みの枠外で推進しています。この制度については、現行のCDMよりもさらにルールが緩く、また、二国間で行われるために市民社会の関与の度合いが減るのではという懸念があります。

現在のCDMにも色々な問題はありますが、制度設計如何によっては、多国間ではなく二国間で独自に決まるルールによって、CDMよりも問題の多いものとなりかねません。

CDMの使用を禁止されると、こちらにますます流れてしまう可能性もあります。これは、日本に限らず、他の先進国にも言えることです。

国連の下での基準作りを急ぐ必要が

このような流れを防ぐためには、国連の場でしっかりとした基準やルールを先に作っておくことが必要です。

各国がそれぞれの主権の範囲内で独自に目標を持ち、独自にメカニズムを(日本の二国間のオフセット・クレジット制度のように)自作するという場合は、国連自体がそれを禁止することはできません。

しかし、仮に国連気候変動枠組条約の場で、そうしたメカニズムを作るに際して、共通で採用されるべき基準やルールについては作りましょうという結論が出るとなれば、少し話は変わってきます。その基準やルールがどれくらいの厳しさになるかにもよりますが、もし、そのようなルールを完全に無視するものとなれば、様々な国々からの受け入れが減る可能性もあります。

このため、国連の場で、今後、各国が独自に作っていく可能性のある「メカニズム:について、ある程度のルールを作っていくことが大事です。

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