「種の保存法」改正と世界の生物多様性保全を求めて


WWFジャパンの野生生物の取引を調査・監視部門であるトラフィック イーストアジア ジャパンは、2012年2月21日、「種(しゅ)の保存法」による野生生物の国内取引の管理に対する要望書を、環境省に提出しました。これは2011年12月にWWFが提出した「種の保存法」の抜本的な改訂を求める要望に関連したもので、日本が世界の生物多様性の保全に積極的に貢献することを、強く求めたものです。

求められる「種の保存法」の改訂

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(「種の保存法」)は、日本と世界の野生生物の保護を通じて、生物多様性の保全をはかる、日本の国内法です。

この法律は、「環境基本法」の下、生物の多様性を「人類共通の財産」と位置づけた「生物多様性基本法」(2008年に制定)の理念を実現し、さらに「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」で求められる取引の規制や監視を国内で実施する役割を担っています。

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日本は世界屈指のリクガメの輸入大国。

つまり、「種の保存法」は、これらの国際条約や基本法の目的を具体化させる、重要な法律なのです。

しかし、同法は1992年に制定されて以降、大きな改正が行なわれてきませんでした。
これでは、インターネットを介した社会の情報化や、中国やインドをはじめとする、アジアの国々の台頭がもたらしている、野生生物の取引市場の急激な変化にも、対応できなくなるおそれがあります。

現状の課題と改善提案

こうした対応すべき問題は、日本国内にもいくつも存在します。
IUCN(国際自然保護連合)とWWFの共同プログラムであり、WWFジャパンの野生生物の取引を調査・監視部門であるトラフィック イーストアジア ジャパンでも、これまでくり返し、次のような問題を指摘してきました。

  • 販売されている野生生物の合法性を判断するのが困難
    販売されているその野生生物の個体が、「種の保存法」で売買が禁止されているか許可されているか、消費者が判断するのが非常に難しい
     
  • 違反に対する罰則が軽い
    違法な取引を行なった業者が違反を繰り返している
     
  • 一部の違法に密輸された動植物の販売が、国内で規制できていない
    希少な野生生物の国際取引を規制する「ワシントン条約」に違反し、日本に密輸された生きもの(附属書IIやIII掲載種など)の販売が規制できていない
    これらの点は、いずれもトラフィックの要望に則して「種の保存法」が改正されれば、改善が期待できる課題です。

そして、これらの問題に対し、今回トラフィックは環境省に対し、主に下の3点を大きな目的とした要望を行ないました。

  • 国内で合法的に販売できる野生動植物種と、そうでない違法なものを、判別できるようにすること
  • 違法な行為を未然に防ぐことと、責任ある対処を実現すること
  • 各国から多種多様な野生生物を輸入している輸入大国として、国内だけでなく、世界の生物多様性の保全に向けて、日本が責任ある役割を果たすこと

世界の生物多様性の保全に向けて

現在、国内ではこの「種の保存法」の改正に向けた動きが出始めています。
もちろん、一つの法律を改正するだけで、生物多様性の保全を実現できるわけではありません。

関連する法律だけを挙げてみても、環境基本法や、生物多様性基本法、鳥獣保護法、自然公園法など、数多くの法律が出てきます、

そしてこれらの見直しや改善は、2010年に名古屋で開かれた、生物多様性条約の第10回締約国会議(CBD・COP10)で採択された、「愛知目標(愛知ターゲット)」が掲げている、野生生物の保護(目標12)や、保護区の設置(目標11)といった、国としての目標の達成に貢献するものです。

「愛知目標」をいかに実現してゆくか。そのためのロードマップ(道のり)を描くことが今、日本に求められている、生物多様性保全の上の最大の課題といえます。

2011年3月の東日本大震災により、その取り組みは1年止まりましたが、2012年にインドで次の生物多様性条約会議(COP11)が開かれるまでは、日本は生物多様性条約の議長国であり、世界の生物多様性の保全をリードしつつ、自身も今後どのように貢献していくべきなのか、考えることが求められています。

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