2012年 国連気候変動ボン会議


2011年末に南アフリカ・ダーバンで開かれた、COP17・COP/MOP7以降、初めての公式な国連気候変動会議が2012年5月14日~25日にドイツ・ボンで開催されます。「新しい国際枠組みを2015年までに合意する」ことを決めたダーバン合意を受けて、いよいよ新しい交渉が開始されます。しかし、大事なのは「2015年の合意」だけではありません。新しい枠組みが動き始める2020年までに、可能な限りの温暖化防止の取り組みを、実施しておく必要があるからです。

ダーバンからドーハへ

2011年末の南アフリカ・ダーバンでのCOP17・COP/MOP7は劇的な会議でした。延長することが半ば慣習化している気候変動の会議としても異様な、延長2日目にも及ぶ交渉を行ない、ようやく会議は、一連の合意をまとめることに成功しました。
ダーバンでの合意の主なものには、以下の4つがあります。

  • ダーバン・プラットフォームの設立:
    2020年からの新しい枠組みを、2015年までに合意する
  • 京都議定書の第2約束期間の設立:
    目標値は決まってないが、第2約束期間を作ることには合意;2012年に目標値確定
  • グリーン気候基金(GCF)の設立・運用化:
    途上国への資金支援の要となる基金の運用について決定
  • カンクン合意の深化:
    COP16・COP/MOP6で合意された内容を深化。たとえば、各国の削減目標や削減行動計画のチェックのあり方など
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今回の会議は、その2011年末の会議以降、初の会議です。
2012年も11月末にCOP18・COP/MOP8が、カタールのドーハで開催される予定です。ボン会議の次に予定されている、次回のタイ・バンコクでの会議と合わせて、ドーハへの地ならしをしていくことになります。

会議では、正式には5つの会議が開催されます。中でも、今回注目が集まるのは、ダーバン・プラットフォームの作業部会(ADP)の第1回目の会合でしょう。この作業部会は、今回から新しく設置されるもので、2011年のダーバンの合意の目玉とも言える「2015年に新しい国際枠組みを合意する」ことへ向けての交渉の場となっていく予定です。

この他、2011年来続いている京都議定書の作業部会(AWG KP)、国連気候変動枠組条約の作業部会(AWG LCA)、そして、通常通りの補助機関会合(SBIおよびSBSTA)が開催されます。

主な議題は?

1.ADP(ダーバン・プラットフォーム作業部会)

議論の中心となるであろう、ADPでは、2つ大事な議論があります。
1つは、今後の、2015年への合意へ向けての作業計画を検討することです。本来であれば、この作業計画は今回の会議で合意するべきものですが、おそらく、難しいのではないのかと言われています。
その理由は、作業計画の中で、どのような問題がどのように扱われるのかが、後々の議論にも大きな影響を与え得るからです。特に、先進国と途上国の衡平性をどのように考えてこの議論を構成するかは対立を呼びそうです。

もう1つは、「野心のレベルを引き上げる」ための作業計画を作り、実施に移して行くことです。
「野心のレベル」(level of ambition)とは、ここでは、端的に言えば先進国の削減目標や途上国の削減行動の現状の水準のことを指します。

これが、現時点では、地球の平均気温上昇を「2度未満」に抑える水準に達していないことを受け、その削減水準の「ギャップ(乖離)」を埋めるための具体的なステップを議論することが期待されています。しかし、日本もそうですが、各国とも、削減目標や削減行動の水準の引き上げにはあまり積極的ではありません。

2.AWG KP(京都議定書の作業部会)

この他、AWG KPでは、いよいよ京都議定書の第2約束期間へ向けての詰めの作業に入っていきます。たとえば、2020年の時点での目標を掲げている国が多いですが、これを、5年間ないし8年間の約束期間(この「長さ」も論点の1つです)全体の目標にどう変換していくのか、などが話し合われます。
日本は2011年の時点で既に第2約束期間に参加しないことを明確にしていますが、議論の中には、日本のように第2約束期間に参加しない国にとっても影響がありうる議題も含まれます。

3.AWG LCA(枠組条約の作業部会)

さらに、AWG LCAでも、まだまだ積み残された議題がたくさんあります。
たとえば、前述の通り、ダーバンではGCFという基金の運用化を決めました。しかし、GCFというお財布を作ったものの、肝心のお金がどこから来るかはまだまだ議論を詰めることができていません。この議論は「長期資金(long-term finance)」問題と呼ばれ、今も大きな対立点の1つです。「共有ビジョン」と呼ばれる論点では、世界全体としての長期(2050年)での削減目標や、いつまでに世界の排出量をピークさせる(現状の排出増加傾向を転換し、削減に向かわせる)のかという問題も残っています。

4.AWG KPとLCAの作業は2012年中に?

以上で紹介したのは、今回および今後議論していくべき論点のほんの一部です。この他にも、SBSTAやSBIには、技術的・専門的な論点の検討が託されています。その中には、二酸化炭素の回収・地中貯留をクリーン開発メカニズム(CDM)で行う際のルールなどもあります。

2011年の合意は、AWG KPとLCAの作業を、2012年中に終わらせることにも合意していますが、議論が遅れる可能性もあります。その場合、KPやLCAを継続していくのか、それとも、ADPに統合していくのか。そうしたことも含めて議論になっていくと考えられます。

「2015年」へ向けての議論はもちろん重要ですが、新しい枠組みが動き始めるまでの2020年までに既に開始しておくべきこと、やってしまっておくべきことなども当然あります。

もっと言えば、2020年まで、気候変動の対策を何もやらなくて良いなどということは、本気で対策を考えるのであればありえません。そこまで「待って」しまったら、気候変動の影響を耐えられる範囲に抑え込むのは、もう間に合わないかもしれないからです。

その意味では、2015年合意の議論はもちろん重要ですが、実は、KPやLCAで積み残されている論点の議論を進め、早々に各国での対策を展開していくことも大変な重要性を持つと言えます。

日本国内で続くエネルギー政策の見直しとの関係

こうした国際的な交渉の一方で、日本では東日本大震災と福島第一原発の事故を受けて、エネルギー政策の見直しが行なわれています。
エネルギー政策の見直しは、気候変動政策の見直しにも直結するので、日本が掲げている「25%削減目標」も必然的に見直しがされる流れとなっています。

予定では、2012年の「春」に、国民に対して「選択肢」が提示され、「国民的議論」を経て、「夏」に結論が出る(「エネルギー基本計画」が改定され、気候変動の目標も決定する)ことになっています。

しかし、今の流れですと、この国連気候変動会議の会期中に「選択肢」は提示されそうにはありません。京都議定書の第2約束期間には参加せず、「野心のレベル」を引き上げる議論をするタイミングでは特段の貢献ができないことになるので、気候変動政策において、日本はマイナスの印象を持たれる要因が多数出てきています。

国際社会の中で、気候変動政策に関する貢献をしていく意志をきちんと理解してもらうためには、どんなに遅くともドーハまでには、決定した目標を、新たな「野心」(ambition)と一緒に持って、会議に臨む必要があります。

WWFが期待すること

WWFは今回の会議に先立ち、「WWFが国連気候変動ボン会議に期待すること」という文書を発表しています。
原文は全て英語ですが、以下は主なポイントの抜粋です。これらのポイントの達成を目指して、各国から集まったWWFの気候変動担当者が、政府代表団に働きかけを行っていきます。

1.緩和(排出量削減)の野心を、科学と衡平性(原則)に沿った形で引き上げること

  • 世界の炭素予算(長期での累積排出量)が、気温上昇1.5℃未満と整合的になるように
  • 具体的な手段を検討すること(例:余剰排出枠の持ち越しを制限する等)
  • 世界の排出量のピークのタイミング、2020年中期目標、2050年の長期目標に合意する
  • (長期的に排出量を減らすことの国別計画としての)「低炭素発展戦略」を先進国・途上国各国が作っていくための作業を進めること
  • REDD+に対する対策を強化すること

2.途上国の緩和及び適応対策を支援するための資金を確保すること

  • 長期資金を確保するための作業計画に合意すること
  • 国際航空・船舶に対する課税など、資金「源」の議論を深めること
  • REDD+への資金支援を拡大すること
  • 適応に関するダーバンでの合意を実行に移すこと
  • 途上国支援に向けて、GCFに関して積み残された部分を詰めること

参考資料

 

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